2021.03.25

企業防災担当者への調査:オフィスにおける「フェーズフリー」の可能性

相次ぐ自然災害や新型コロナウィルスなどの感染症によって、社会全体が非常事態を身近なものとして捉えるようになりました。人々の防災への意識が高まる中、企業や公共団体においても、改めて危機管理対策が大きな関心事となっています。そうした状況を受けて、コクヨはオフィス空間提案を通じて社会の防災力を高めていく必要性を感じ、一般社団法人 フェーズフリー協会が推進する「フェーズフリー」の趣旨に賛同。同法人が認定する「フェーズフリー アクションパートナー」に登録をしました。本コラムでは、2021年1月に実施した企業の防災担当者向けウェブアンケート調査を通じて、オフィスにおける「フェーズフリー」の可能性やその理由についてご説明します。

調査概要

  • 実施時期:2021年01月29日・30日
  • 実施方法:企業の防災業務担当者に向けて、防災に関する調査をウェブアンケートで実施
  • 回答者数:518名 ※首都圏(一都三県)の従業員数100名以上の民間企業勤務者に限定

目次

調査で分かった、企業防災担当者の「フェーズフリー」期待度

今回の調査では、企業の防災担当者における「フェーズフリー」の認知度と取り組み状況について調べました。まず認知度に関しては、回答者の26%が「フェーズフリー」を“知っている”という結果に。“聞いたことがある”という回答者と合わせると58%に上りました。

次に取り組み状況です。「フェーズフリー」を“知っている”と回答した人のうち、“既に自社において「フェーズフリー」の取り組みを開始している”と答えた割合は48%となりました。“今後自社での取り組みを検討したい”と答えた割合も42%と高く、併せて90%の人が「フェーズフリー」の取り組みに対して非常に意欲的であり、ポジティブな反応を示していることが分かりました。

「フェーズフリー」を知ったオフィスの防災担当者の多くが、自社の取り組みを開始しているという事実。それは「フェーズフリー」が防災の役割だけでなく、日常時のオフィスでの働き方・過ごし方を含めた、これからのオフィス空間を検討するうえで、とても有用な考え方だからです。以降の段落では、フェーズフリーの特徴と、オフィスにフェーズフリーを導入すべき理由についてご説明します。

フェーズフリーとは

一般社団法人フェーズフリー協会が提唱する「フェーズフリー」とは、社会や暮らし等で活用されるモノやサービスを、日常時はもちろん非常時にも役立てていく考え方です。この考え方を採用した商品・サービス等は、日常時も非常時も役立つことができるため、生活のあらゆる場面を快適にしながら、社会や暮らしの質を高めていくことができると言われています。

オフィスにフェーズフリーを導入すべき理由①日常時にも価値があること

「フェーズフリー」の前提は“日常時にも価値があること”であり、防災用品と大きく異なる点です。日常的に使うものなので、わざわざ倉庫等に広いスペースを確保して保管しておく必要がありません。身近な場所に置いておくことで、非常時の際にもすぐに使うことができ、探しに行く・持ってくるといったプロセスを省くことができます。「フェーズフリー」はオフィス面積と準備時間を最小限に抑えることができる考え方なのです。

また、「フェーズフリー」の考え方はリモートワークの推進で生じる課題解決にもつながります。新型コロナウィルスの感染対策として多くの企業でリモートワークが進んでおり、もはやオフィスの防災担当者であってもリモートワークは避けられない状況です。しかし、ワーカーが「フェーズフリー」なモノやサービスに日常的に触れていることによって、たとえ非常時に防災担当者がオフィスに不在だったとしても、ワーカーは使い慣れたモノやサービスを活用して状況の変化にすぐさま対応できるのです。

オフィスにフェーズフリーを導入すべき理由②すぐにでも始められる手軽さ

「フェーズフリー」を認知している人の多くが実際に取り組んでいる理由の一つに、手軽さがあると考えられます。「フェーズフリー」の考え方はさまざまな商品・サービス・アイディアに展開されており、課題やニーズに応じて多様な切り口から取り組めます。消耗品や備品をフェーズフリー発想の商品に置き換えるといったことはすぐにでも始められますし、従来品に比べ日常時の使い勝手が向上するものも多くあるため、導入したその日から効果を感じることができるでしょう。また、維持管理のしやすさも大きな魅力です。

「フェーズフリー」発想のオフィスが、企業の防災力を底上げさせる

フェーズフリー発想のオフィス空間とは、いったいどのような形でしょうか。それは例えば、「可変性を持ち状況の変化に対応しつつ、効率性・快適性を高める」ことができるオフィスなのではないでしょうか。重要なのは、まず「日常時」の働き方を進化させる場であること。そしてその場を「非常時」にどう活用できるかという視点で考えることによって、新たな価値が生まれるのです。スペースの共有化・集約化・多機能化などは非常に効果的と言えますし、オフィス家具選びに「フェーズフリー」の視点を付加することも、1つの手段でしょう。言い換えれば、「非常時のためだけに、わざわざスペースを確保したり家具を用意したりする必要はない」ということです。

オフィスにおいて、最も面積を占めるのはオフィス家具であり、働く空間です。フェーズフリー視点を持つワークプレイスの構築は、日常時は知的生産活動の価値向上を実現し、同時に企業のBCP(事業継続計画)強化やワーカーの安心・安全を守ることにつながります。企業の「防災力」を、総合的に底上げさせることができるでしょう。

予測不可能なこれからの時代にこそ目指すべきである、「フェーズフリー」なオフィス

今後、世の中は“*VUCA(予測不可能な状況)”な社会へと突き進んでいくと言われています。これからの日常である“VUCA(予測不可能な状況)”は、これまでのあり方が通用しないという意味では、非常時とも言えるでしょう。つまり、「状況の変化に対応できる」といったフェーズフリー発想でオフィスを設計することは、“VUCA”な時代に生き残る組織づくりにも非常に有効な手段なのです。

切れ目なく変化が訪れる現代の社会にとって、「フェーズフリー」という考え方でオフィスを見つめ直すことは、大きな可能性を秘めています。企業は、自然災害を含めたこれからの不確実な世の中に適応していくことが、今何よりも求められているのです。

*VUCA(ブーカ)とは、4つの単語「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」から頭文字をとって作られた単語であり、現代のカオス化した経済環境を指す言葉であり、「予測不能な状態」を意味する。

(作成/コクヨ)

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