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yuimoriの故郷へ

yuimoriの家具に使われる木材は、美しい清流が取り囲む
高知県四万十町の深い森林で育まれたもの。
日々森づくりに携わる四万十町森林組合のキーパーソンと
コクヨの担当者の4人に話を聞きました。

下刈りから間伐まで、森づくりは経験がものをいいます

四万十町森林組合 大正支所 造林課長 山本京司

森林組合で、主に苗木を植えてから木を切るまでの間の、木を育てる部分を一括して管理する業務に携わっています。四万十町で生まれ育ち、木はすごく身近なものだったので以前は特に意識したこともなかったんですが、この仕事をするようになって、木材として世に出す大変さを実感しました。例えば、まず作業は土壌を整える地ごしらえという作業から始めて苗木の植え付けをするんですが、植えた後は5年間くらい下刈り(※1)という草刈りの作業が必要になる。まだ成長していない木に囲まれて、真夏の炎天下の中、日陰がない中で行わないといけないのでかなりの重労働になります。また、木々を育てる過程で、山の状態を良くするために行うのが間伐(※2)。大体30~40%の間伐率になるように切り進めていくんですが、木々の中から優劣を見定めて、商品になりにくい方の木を切ったり、立ち並ぶ間隔や枝の張り具合を見たりして、ちょうどいいバランスになるように進めていく、経験がものをいう仕事なんです。大変な面も多いですが、こうして地元で育った木がコクヨさんの手できちんと活用されていくのは、目に見える成果があって励みになりますね。私たちにはない発信力で、これからも国産材の需要を高めていってもらえたら嬉しいです。

  1. 苗木の生育環境を整えるために、下層部に生える雑草や雑木を取り除く作業のこと。結の森では7月〜8月の真夏に行われる。
  2. 育てようとする樹木同士の競争を軽減するため、混み具合に応じて一部の樹木を伐採すること。山に光が入り下草が生えるため、保水力が向上。災害防止にも繋がる。

未来を担う人づくりも、森づくりの一環です。

四万十町森林組合 大正支所 所長 田邊誠進

苗木の植え付けから間伐材の搬出まで、森林組合での全ての業務を統括するのが私の仕事です。高校を卒業して入社し、個別の業務への従事を経て今に至ります。今課題に感じているのは、人材不足(※1)。全国的にそうだと思いますが、林業に関わる人が年々少なくなっているのを実感していて。今組合では、本来なら100人ほどの作業員の手が必要な36,000haを45人程度で管理しており、思うように手入れが進まない状況もあるんです。現状を打破するには、未来の担い手作りも大切。小中学生に職場体験に来てもらったり、逆にこちらが出張授業に行ったりなどもしています。以前、小学生たちに林業で使う機械を体験してもらった時は、ゲームをやりなれているからか、その操作の上手さに驚きました(笑)。巨大なロボットを扱うように楽しんでもらえたのが心に残っています。こうした取り組みを地道に続け、ポジティブなイメージを持ってもらえたらいいですね。そして人材を確保するためにはもちろん、報酬の水準向上も必要でしょう。コクヨさんが国産材の利用を進めることで市場をけん引して、ウッドショック(※2)のような一過性のものではなく木材の平均価格を少しずつ上げていけたらいいですね。せっかく日本は、国土の7割を占める豊かな森林を持っているのだから、輸入材に依存するのではなく、国産材が健全な形で循環していく世の中になればと思っております。

  1. 林業従事者の数は長期的に減少傾向で、2015年には過去最低の450,000人に。また高齢化率も高く、65歳以上が25%を占めている。(林野庁HPより)
  2. コロナ禍による需要急増やロシアによるウクライナ侵攻の影響で世界的に木材が供給不足に陥り、価格が高騰していること。

香りの良い四万十ヒノキを多くの人に知ってもらいたいです。

四万十町森林組合 大正集成材支所 工場長 廣田和也

結の森から出たスギやヒノキの間伐材の中でも、利用価値の極めて低いものを活用して集成材(※1)をつくる工場を統括しています。素材が柔らかい針葉樹を加工に耐えうる形にするために、まず行うのは搬入されてきた丸太を製材して、含水率8%程度まで乾燥させること。捻れたり曲がったりする不具合を防ぐための大事な工程です。それから欠点除去。製品として使いづらい節などを取り除いた後に、集成材として繋ぎ合わせ、家具に加工したり、フローリングや壁板など内装で使う建材をメーカーに卸したりしています。今は家具に使う素材としては輸入材が一般的で、特に私たちが扱う針葉樹は、まだまだ上質な家具製品として一般ユーザーの目に止まらせるのは難しい状況です。一方で『yuimori』にも活用された四万十ヒノキ(※2)は、特に香りが強く、長く持続するという特徴がある。それを強みに今後も付加価値をつけた商品を作りたいですね。コクヨさんとはこれまでもいくつかの家具を一緒に製造してきましたが、大手のメーカーさんだからこそ、日本農林規格のルールを越えた高いレベルの品質を求められます。でもだからこそ一緒に仕事をして、その基準を乗り越えた時には自信にもなるんです。ともに、ものづくりに携わることで、多くの人に長く使ってもらえる商品を提案し、森に還元できればと思います。

  1. 断面寸法の小さい木材を接着剤で再構成して作られる木質材料のこと。家の構造体や建材、家具の素材として用いられる。
  2. 四万十川流域に植生しているヒノキ。ピンクがかった赤みが特徴で、香りが強く、油分を多く含んでいることが特徴。

健やかな森づくりのために、“使う”ことが大事なんです。

コクヨ株式会社 サステナビリティ推進室 齊藤申一

コクヨ製品の原材料の実に約7割が紙・木材といった森林資源です。その事業の柱ともいうべき森林が日本各地で荒廃する中、何かアクションができないかと2006年に高知県(※1)四万十町での活動(※2)として、「結の森プロジェクト」(※3)を立ち上げました。私は以来、担当として継続的に携わっています。健全な森を作るためには、定期的に間伐を行い、それらを使って資源を循環させていくことが必要。業務としても、四万十町の森林組合が立てる間伐計画を管理したり、間伐の重要性についての発信活動を企業向けに行ったりしています。中でも一番頭を悩ませてきたのは、間伐材を使った製品の開発です。日本の森の大部分を占めるスギやヒノキなどの国産針葉樹は柔らかく、本来家具作りには向かない素材のため、何度かトライしてきたものの思うように活用が進んでいませんでした。でもいかに使っていくか、その提案ができてこそコクヨが参加する意味があるはず。今回は『yuimori』が立ち上がり、改めて製品化のサイクルが出来上がるというのは、ようやくスタート地点に立てるようで嬉しいですね。社会貢献だけに留まらず経済的な循環が始まるように。いずれはコクヨの事業の柱の一つになるよう取り組みを続けていきたいです。

  1. 高知県は、県の面積に対して森林の占める割合が全国NO.1。84%で599,179haもの面積を誇っている。(高知県HPより)
  2. 荒廃した森を再生させる取り組みのこと。生物多様性を維持するほか、CO2の吸収や光合成を活性化させ、温暖化防止にもつながる。
  3. 2006年からスタートしたコクヨの森林保全活動。当初は100haからスタートし、現在は5,425haの範囲をカバー。CO2吸収量は累計72,089tに及ぶ。(2022年7月時点)