組織の力
2017.06.26
「働き方改革」を支援する、人工知能を活用した組織開発〈前編〉
HITACHIが取り組む『Hitachi AI Technology/組織活性化支援サービス』とは?
AIやビッグデータなどの最先端の技術を活用した組織改革や人材育成などが注目を集めている。そのなかで「組織活性度(ハピネス度)」という新たな指標で、企業内組織の生産性や業務改善などを支援しているのが、日立製作所の『Hitachi AI Technology/組織活性化支援サービス』だ。大手企業を中心に20数社で導入実績がある。同サービスを担当するIoT・クラウド事業本部 アプリケーション第2本部主任技師の小川 祐一さんと、研究開発本部 CSI東京 サービスデザイン研究部 研究員 の辻 聡美さんに同サービスの特徴や仕組みについてお伺いした。
チームをつなぐ"ハブ"は誰か?
組織間の壁はあるのか? を可視化
では、具体的にどのように『組織活性度』を数値化し、サービスを運用していくのだろうか。辻さんによると「2つの計測機器を使って、『組織活性度』を数値化するのに必要な、従業員の『行動データ』を収集していく」という。
「計測機器としては、従業員につけてもらう『名札型ウェアラブルセンサー』と、打ち合わせ場所などに置く『赤外線ビーコン』があります。『名札型ウェアラブルセンサー』では、誰と誰が、いつ、何分間、対面したのかという「対面情報」と、人間の目視では認識できないくらいの小さな「身体的な動き」を計測。また、『赤外線ビーコン』を会議室やミーティングデスクなどに置くことで、滞在場所を把握できます」(辻さん)
これらの機器によって、従業員の『行動データ』を収集し、日立製作所のクラウドサービスで解析処理をすることで『組織活性度』として数値化し、可視化している。
「計測データの具体的なアウトプット(可視化)イメージの例として、組織ごとの『組織活性度』の傾向があります。『組織活性度』は毎日計測・収集でき、組織の状況を時系列の変化で見比べることができます。もちろん数値化できるので、KPIにもなります。また、社内で高い生産性を生み出しているチームと、他のチームの組織活性度を比較することで、改善点を見出すこともできます」(小川さん)
「組織の中で、実際に、どのような対面コミュニケーションが取られているかを『組織ネットワーク図』として可視化することもできます。青色、赤色、黄色、橙色などで異なるチームを、点を結ぶ線の太さでコミュニケーションの活発さを表しています。太い線は密なコミュニケーションを、細い線はそれほど活発なコミュニケーションが行われていないことを表します。この図により、誰と誰がよくコミュニケーションをとっているか、誰が他の組織とのハブ的役割を担っているか、そして、どこに組織の壁があるかなど、感覚でしかなかったものが一目瞭然で理解できるようになっています」(辻さん)
このように、コミュニケーションという目に見えないものを可視化することで、組織内の活性化だけでなく、組織間の活性化を促すことにも、このサービスは活用できる。
普通の人たちで構成されたチームが
一定の成果をあげられるチームに
「人事データを使って、個人のパフォーマンスをあげる『人材開発』は多くの企業で取り組まれてきましたが、当社のように『組織開発』に特化したサービスは、これまでにもあまり例がありません。それでも、このサービスでこだわったのは、特別秀でた能力をもった社員がいなくとも、チームに属するみんながいきいきと、幸福感(ハピネス)を得ながら働くことで、チームとして一定の成果をあげることができる。そんなシナジーを生み出すための職場環境づくりを支援していきたかったから」と小川さんは力を込める。
スキルの高い人ほど給料が高くなる。また、個別の成果だけを求めてしまうと、組織としてのシナジー効果が期待できない。その点、組織を活性化し、従業員がハッピーに働けるように組織を改善することで、コスト(給与)をかけずに、生産性の高いチームをつくるというのが、このサービスが目指しているところだ。
後編では、『Hitachi AI Technology/組織活性化支援サービス』の人工知能を活用して、実際にどのように組織を活性化させていくのか。具体的な施策や事例についてお聞きする。