組織の力
2020.06.30
未来のオフィスが担うべき5つの役割
ワークスタイル研究所では、国内外のさまざまな先進事例の収集・分析を通じ、オフィスというものの意味をあらためて問い直してきています。本レポートでは、その研究活動から得られた、今後のオフィスに求められる役割としての「5つの仮説」を市場の反応と共にご紹介します。
トレンド3:オフィス以外の働く場はどう変わっていくのか
「オフィス以外」の街中の様々な場も、ワーカーの「働く」を受け入れるために様々に変化してきている現状があります。
まずは、街中ではもう完全に市民権を得たといってもよい、カフェで働くシーンです。
電源もWifiも、さらにおいしいコーヒーも完備。「スタバでMac開いてドヤ顔」なんて言われはじめたのも、もう何年も前になりますね。ショッピングモールなどのフードコートでも、同じようなシーンが見受けられます。
また、最近の動きで見逃せないのは、「コワーキングスペース」の台頭です。
コクヨでも以前はDESK@(デスカット)という貸しオフィス事業を営んでおりましたが、現在は業態変更しMOV Creative Loungeというコワーキングスペースを渋谷にて運営しています。
貸しオフィス事業の代表格「Regus」とコワーキング事業の代表格「wework」を比較したところ、拠点数などの事業規模はRegusが一ケタ上であるものの、市場からの期待を反映する企業評価額はweworkがRegusの数倍、という状況になるくらい、コワーキングという業態は昨今大きな注目を集めています。
このコワーキングという業態、市場が拡大していると同時に、そのあり方も多様化してきています。ものづくりを支えるコワーキング、ジムに併設されたコワーキング、女性起業家専用のコワーキング、ベッドタウンと都市部の中間部にある郊外型のコワーキング等々、街中のあらゆる場所であらゆるニーズを受け止めはじめています。
さらには、米国でのサービスですが、自宅が同じ方向の社員同士でライドシェアし、異部門間コミュニケーションを帰宅中に図る、つまり「移動時間を働く場と捉える」ような概念も出てきています。
街全体が、ワーカーの働くを受け止める方向に変化していく様子がひしひしと感じ取れますね。これらの事例は、以下のようにまとめられそうです。
課題提起:「今後もオフィスって本当に必要であり続けるのか? 」
ここまでで挙がった3つのトレンドのまとめを並べてみます。
トレンド1:ワーカーは「目的に合わせて働く場所を自由に選びたい」という意向を拡大していっている
トレンド2:働くシーンに関連するテクノロジーやデバイスは、「ここじゃないと働けない」という制限をなくし、働く場を自由化する方向に進化していっている
トレンド3:街中で、オフィス以外でも働ける場所が増大し、その利用も拡大してきている
この3つのトレンドを踏まえたうえで、いよいよ本題です。今後も、オフィスは本当に必要であり続けるのでしょうか? 企業は、オフィスを構えるための投資をし続ける意味が将来的にもあるのでしょうか?
ワークスタイル研究所は、それでもやはりオフィスは必要! と考えます
だってだって、オフィスがなくなるとオフィス家具が売れなくなって、コクヨがつぶれちゃうから...、というのはもちろんウソですが、ワークスタイル研究所としては、オフィスは今よりもさらに明確な役割を持って存在し続ける、と考えています。
もちろん、今まで事例を見てきたように、「働く場が街中に分散していく」というのはおそらく今後も続くトレンドと考えられますし、自宅とオフィスの往復のみだった時代に比べ、目的に応じた場所の使い分けはどんどん進んでいくと考えられます。そんな中でも、やはりオフィスでなくてはできないこと、オフィスだからこそうまくできること、というものは残っていくはずであり、それを受け止める場としてオフィスは残り続けると考えます。
では、何がオフィスの新たな役割として残っていくのでしょうか?働くシーンの中で、自宅や3rdプレイス、そして公共の場よりも、オフィスのほうがうまく担えることは何か?という方向性で考えてみます。
ワークスタイル研究所
2017年創設。ワークプレイスを基軸とした新しい働き方に関して、調査・実践研究・発信を通した研究活動を担っている。ワークスタイルコンサルティングや先端的な働き方や働く環境を紹介するオウンドメディア『WORKSIGHT』の発刊を行う。