レポート

2018.06.18

なぜビジネスパーソンにマインドフルネスが必要なのか?

組織で成果を上げるマインドフルネス

2018年5月23日夜、「YeLL/幸せに働く技術 組織で成果を上げるマインドフルネス」と題したイベントが、KOKUYO東京ショールームのスタジオで開催された。「マインドフルネス」を切り口に幸せな働き方を考えるこのイベントでは、「組織やリーダーシップにおけるマインドフルネスの必要性」などビジネスパーソンにとって気になる話題が取り上げられた。イベントの模様を紹介しよう。

自分自身へのリーダーシップを
発揮する力がリーダーの前提条件

では、組織のリーダーにとって「マインドフルであること」が必要なのはなぜだろう。

荻野氏は、「深いところにある自分の思いに気づくためです。自分に対して正しいリーダーシップを発揮できなければ、他者のマネジメントもできません」と説明する。

そして、組織のリーダーをコンピュータに例える形でマインドフルネスの重要性を説明する。
「私たちは長い間、さまざまな知識を吸収し続けるスタイルで能力開発を行ってきました。コンピュータでいえば、さまざまなアプリケーションを次々とインストールし続けているようなものです。しかし、OS(基本ソフト)としての自分の感情や思考のマネジメントスキルが今こそ重要であり、このOSがバージョンアップされないまま、多くのビジネスパーソンがバーンアウトしてしまっている状況です。自分の感情や思考に気づかないまま知識やスキルで武装し続けた結果、メンタルに支障をきたしているのではないでしょうか。気づきの力を深めることは、OSをバージョンアップするようなものなのです」

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そして最後に、「一人ひとりがマインドフルネスを実践して気づきの力を深め、自分の価値観に従って行動していくことが個人の幸せをつくり、ひいては幸せな社会をつくる力になるのではないでしょうか」と柔らかに問いかけて、荻野氏はプレゼンテーションを終えた。



自社の組織風土に意識を向けることも
よりよいリーダーシップに欠かせない

第2部ではワールドカフェが行われた。参加者は1テーブルにつき4人ずつのグループに分かれ、12分間×2ラウンドで、模造紙に言葉を書き出しながら、一つのテーマについて自由に議論する。1ラウンドが終わったら、4人のうち3人は別のテーブルへ移動し、空いた3席には別の3人が座る。残っている1人は、前のラウンドで展開された議論を簡単に共有し、また新しい議論を始めるスタイルだ。

テーマは「これからの時代、組織をより良く導く『気づきの力』とは?」。荻野氏も参加者の1人として1つのテーブルに加わり、議論が始まる。あるテーブルでは、「自分の組織に対する気づき」というトピックが上がり、「自分が属する組織風土の特徴に気づかないと、リーダーとしてよりよい方向へ導くこともできないはず」「成功体験に縛られているリーダーの中に気づきは生まれない」と手厳しい意見も。

荻野氏が参加するテーブルでは、「自己認識と自己開示はリンクしている」という話題が上った。荻野氏は、「自己開示には心理的安全性があることが大前提。例えばブラック企業って、メンバーが何か発言しても上司に否定されるから自己開示がなくなるし、気づきも生まれない」という。ある参加者は「心理的安全性って、『北風と太陽』の童話に出てくる太陽みたいですね」と納得する。

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さらに荻野氏は、「これからの組織では、まずはリーダーが自己開示すべき。リーダーが自分にも他者にも開いた存在であることで、組織にも開示の文化が生まれるはず」と方向性を示す。



自己認識を深めたことで生まれるネガティブな感情とも
勇気を持って向き合う

第3部では、参加者と荻野氏との質疑応答が行われた。「組織にマインドフルネスを導入したいけれど、変わることを拒む人たちがいて進まない」という相談に関しては、「人は熱量が感じられるものや楽しそうな雰囲気に惹かれるので、まずは自分たちが求心力になって楽しく実践してみてください」とエールを送る。

また、「気づきって何ですか?」というシンプルかつ本質的な問いに対しては、「今より半歩でも一歩でも進化するためのヒント、インスピレーション」という荻野氏なりの定義がなされた。

クロージングには、荻野氏が参加者に向けてメッセージを送った。

「自己認識を深めていくと、使命感や信念といった美しいものだけでなく、不安や恐れなどネガティブなものも必ず現れてきます。恐れと向き合うのはつらいことですが、勇気を持って乗り越えるしかありません。そこにノウハウはなく、行動によってのみ乗り越えられるのです。勇気をもって行動する人こそマインドフルなリーダーであり、みなさんにも必ずその力があります。一緒に恐れを乗り越えていきましょう」

一人ひとりがマインドフルネスのスキルを身につけて自己認識力を高め、そこで見えてきた恐れを勇気をもって乗り越える。そんなビジネスパーソンの力が積み重なることで、組織の成果は大きく変わるのかもしれない。

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荻野 淳也(Ogino Junya)


外資系コンサルティングカンパニーやベンチャー企業を経て、株式会社ライフスタイルプロデュース代表取締役。一部上場企業からベンチャー企業までを対象にコンサルティングやエグゼクティブコーチングを提供し、リーダーや組織の成長を支援している。2013年に一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュートを設立し、代表理事に就任。Googleのマインドフルネス能力開発メソッド「SEARCH INSIDE YOURSELF」認定講師。



エール株式会社
「働くを面白くする」をビジョンに掲げ、クラウド上司サービス「YeLL」を大企業向けに提供。マネジメントに長けたクラウド上司が週1回の1on1を行うことにより従業員の生産性向上を支援。その新しいビジネスモデルが評価され、昨年9月に行われた『NRI ハッカソン「bit.Connect」Hack for Workstyle』にて、参加39団体の中から最優秀賞と野村ホールディングス賞を受賞。これまで目に見えなかった感情やコミュニケーションというこれからの時代の企業経営に欠かせない要素を扱うことで、東証一部上場のシステム会社や外資系コンサル企業などの人材開発をサポートしている。
エール株式会社 HP :http://www.yell4u.jp/

文/横堀夏代 撮影/MANA-Biz編集部