HOME > オフィスづくりに役立つコラム > 【オフィスのチカラ】ダイバーシティ&インクルージョンオフィスのつくり方
公開日:2024.2.26
執筆:コクヨコラム編集部
#オフィスのチカラ #コクヨ #ダイバーシティ&インクルージョン
企業経営において人材の多様性の重要度が高まっています。多様性には年齢や性別、性的指向、人種、国籍、身体特性、職務経歴、文化的背景、教育的背景、家族構成、趣味嗜好・・・など様々な特性がありますが、中にはその特性によってこれまでのオフィスでは働きにくさを感じるものもあります。特に障がい者やLGBTQ+の方などは従来のオフィス環境では不便を感じていたのではないでしょうか。
「オフィスのチカラvol20」では、障がいのある人や様々な個性を持つ個人が、互いに刺激し合いながら働ける、ダイバーシティ&インクルージョンオフィスとは具体的にどういうものなのか、コクヨのダイバーシティオフィス「HOWS
PARK」の事例も取り上げながらご紹介します。
昨今ビジネスシーンで使われるダイバーシティ&インクルージョン。
ダイバーシティとは、「多様性」という意味で、年齢、性別、性的指向、人種、国籍などの違いを自覚した上で、共存している状態のことを指します。そして、インクルージョンとは、「受容」という意味で、それらの多様性を認めたうえで、これらの特性が活かされている状態を指します。
そこで、ダイバーシティ&インクルージョンの視点から、オフィスを捉えなおした場合、多様性を持った人が安心して働ける環境を整えることが大事になります。具体的には、次のような配慮が一例となります。
・トイレの扉は引き戸、できれば自動扉に。広さを確保し、中で転回できるようにする。照明は自動点灯にし、手すりやオストメイトなど必要な設備を取り入れる。
・LGBTQ+の方が使いやすいジェンダーフリートイレやオールジェンダーロッカールームの設置。
・決まった時間にお祈りが必要な人のための祈祷室の設置。
・出産後に早期職場復帰を希望する人向けの搾乳室の設置。
・通路は車椅子が通れる幅を確保し、動線を明確にする。
・車椅子利用者や視覚障がい者が移動しやすいよう、床に物を置かない。
・スロープの勾配は1/12以下とし、勢いでぶつからないよう下った先にスペースを確保する。またスロープがあることをわかりやすくするために他の床と違う色にするなどの工夫をする。
・視覚障がい者にとって真っ白な色はまぶしさを感じるため、壁や床など面の大きなスペースは優しい色合いを取り入れる。
・弱視の方のためにドアパネル部分の色を変えてドアを認識しやすくする。
・聴覚障がい者が緊急時の警報システムを視覚的に確認できるデジタルサイネージやパトランプの設置。
・自分の使いやすい高さにあわせられる電動昇降デスクやテーブル。
・コンセントやスイッチ、ホワイトボードやカードリーダー、ロッカー、カウンターなど車椅子利用者や下肢障がい者も使いやすい高さを検討。
・外部の音や視線を遮断し気持ちを落ち着かせるカームダウンルームの設置。
・聴覚障がい者は視野の範囲内で動くものが多いと集中できないため、囲まれた空間を用意。
・多言語や点字での表示。
・視覚多様性に配慮し、判別しやすい色使いをする。
このような配慮はあくまでも一例であり、実際にはそこで働く人との対話が重要です。次からは、特例子会社であるコクヨKハート株式会社のオフィス構築時に用いたプロセスを詳しくご紹介します。
コクヨは、障がい者雇用が義務化された1976年よりずっと以前の、1940年から障がい者雇用を行ってきました。そして、2003年に特例子会社コクヨKハート株式会社を設立し、コクヨグループの小規模な印刷物製作やデータ処理などの業務を受託しています。
2023年6月、コクヨKハートはダイバーシティオフィス「HOWS PARK(ハウズパーク)」を開設しました。オフィス構築においてはだれもがより働きやすいオフィスのあり方を探りながら作り上げました。ここでは、ダイバーシティオフィスづくりの事例のひとつとしてそのプロセスをご紹介します。
ポイントはプロセスを重視し、何度も対話を重ねたことです。途中たくさん失敗もしながら、試行錯誤による改善を繰り返しました。
<プロジェクトでの多くの失敗を通してメンバーが感じたこと>
・遠慮はしないという意味でプロジェクトメンバーに最初から当事者を入れるべきだった
・配慮や理解は「過剰」でも「不足」でもバリアに繋がる
・ダイバーシティって終わりがないし、正解もない
・だれに対しても「知ったつもり」になってはいけない。勝手な遠慮やバリアを解いて、伝えよう
・知ろうとすることが大事
・不満に思っていることは健常者も障がい者も意外と変わらない部分が多い
・手話がなくても、口を大きく開ける、ジェスチャー、筆談、アプリを使う...「もっとしゃべりたい」と思ったら、違いを乗り越える方法はたくさんある。
今までの「障がい者が使いやすいオフィスを一方的に考える」という構築方法では、過剰な配慮や思い込み、一般通念となっていることにとらわれがちですが、この対話を繰り返すというプロセスでは、あらためて「本当に必要なことは何か」ということを参加したメンバーそれぞれが考えることができました。ここからは、「HOWS PARK」の工夫を写真と共に一部ご紹介します。
MIND ROOM
精神障がい、発達障がいなどをお持ちの方が外部の音や視線を遮断し、気持ちを落ち着かせるためのスペース。あたたかみと落ち着きのある空間をめざし、次のような工夫を行いました。
・調光スイッチで自分好みの明るさ設定が可能
・吸音パネルで音と視線に配慮
・他の人に見えない視線に配慮したパーテーションの高さ
・圧迫感がないよう上部はオープンに
SWITCH
車椅子利用者にとって、様々なモノの「高さ」は非常に重要です。一般的なユニバーサルデザイン寸法は定められていますが、今回は様々な利用者と検証を行いました。その結果、だれもが書きやすいホワイトボードの高さは床下から800mmがベストと考えました。
また、コンセントやスイッチも検証を実施。下肢障がいの方はかがみにくいため少し高い方がよく、車椅子の方でもプラグを差し込む力が一番入りやすい高さだとわかったため、コンセントは500mm、スイッチは1100mmとしています。
COUNTER
聴覚・精神・下肢障がい、車椅子ユーザーなど、だれもが安心して使いやすいカウンターを考えました。安心できる距離感を保つため、あえてバラバラな高さのテーブルや椅子を組み合わせ、目線の高さを変えられるような仕様に。形状は四角ではなく丸の方が会話しやすいとわかりました。
ここで挙げた工夫の例はすべての会社に当てはまるわけではありません。早い段階から当事者と対話しながら、自社に必要な配慮を取り入れることが大切です。この時に大切なのが、「知らない・見えないからうちの会社にはいない」ではなく、「困っている人がいるかもしれない」という前提に立つこと。例えば精神障がいや発達障がいがある方LGBTQ+の方が自らの特性をオープンにしていない場合もあります。日本におけるLGBTQ+の割合は、現在3~10%と言われています。言えないだけで近くにいるかもしれないと想像し、困っている人にどんな配慮をすれば働きやすいオフィスになるか考えてみませんか?
Note
コクヨは特例子会社・コクヨKハートや多様な社外の仲間とともに、インクルーシブデザインによって社会のバリアを発見し、誰もが自分らしくいられる社会をつくることを目指しています。コクヨではこのプロセスに「HOWS DESIGN」という名前をつけて、共感 ※1・共創※2によるモノづくり・コトづくりを進めています。
※1 共感:ヒアリング・アンケート・ワークショップでの対話を通じて違いを「気づき」にすること ※2 共創:プロトタイプを用いてデザインワークショップを行い、リードユーザーとともにバリアを取り除くアイデアを生み出すこと
HOWS DESIGN
https://www.kokuyo.co.jp/sustainability/howsdesign/
「HOWS PARK」はご見学可能ですので、実際に見て参考にしたい場合はお気軽にお声がけください。
「オフィスのチカラ」は、コラムのほかにも、お客様のオフィス構築プロジェクトやカイゼン活動をご紹介している冊子です。 ぜひこちらからダウンロードしてご覧ください。
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