2021.4.12[ オフィス空間 ]

逆境をしなやかに超えていく
「来たくなるオフィス」を目指して
~JX金属株式会社~

#事例

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逆境をしなやかに超えていく「来たくなるオフィス」を目指して~JX金属株式会社~ 逆境をしなやかに超えていく「来たくなるオフィス」を目指して~JX金属株式会社~

コロナ禍においてワークスタイルの多様化に伴い、オフィスの縮小や撤廃に動く企業も少なからずある中、オフィス移転に伴って 「来たくなるオフィス」を目指す、JX金属株式会社様。そのねらいやオフィスの担うべき役割、Face to Faceだからこそ生み出される価値について、お話を伺いました。


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総務部
総務担当課長 村木 茂亮 様 / 主事 湯元 哲平 様 / 主任 辻村 千聡 様 
主任 福躍 直哉 様 / 副部長 渋谷 俊生 様 ※写真左から

JX金属株式会社
https://www.nmm.jx-group.co.jp/

―――本社移転はコロナ以前からの計画とのことですが、目的と解決したかった課題は?

村木:20196月に、2040年を見据えた「長期ビジョン」を策定し、同時に、その実現の重要な一施策として本社移転も公表しました。今後の人員増を見越したスペースの確保といった課題対応も目的の一つではありますが、最も重点を置いたのは「技術立脚型企業」への転身のため、「組織・人材を育むオフィス」を構築することです。生産性を高め、技術に触れ、人と人とをつなぐことで、新しい価値を生み出す。ベースにあるのは、今後の大きな社会変動の中で、いかに生き残るかという「危機感」です。そのために社員一人ひとりの意識を変える必要がありました。

―――新オフィス構築のポイントは?

村木:新しい価値創造のため、「来たくなるオフィス」をコンセプトとして設計しました。役員エリアなどの「特定の誰かのためのスペース」は極力削減。その代わり、視界を遮らない広い空間に執務テーブルや豊富な打合せスペースを設置し、会議"室"に籠らない「わいがや」を目指しました。会議室もガラス張りにしてオープンな作りとしています。また、業務の内容に応じて働く場所や時間を自律的に選択するABWを採用しましたが、組織の機動性も活かすという観点から、完全フリーアドレスではなく、事業部単位など100人程度のまとまりからなるグループアドレス制を採用しました。周囲に同じチームの人がいて、顔が見えることで「つながり」を実感できるようにしています。

福躍:また、自然と人が集まる場としてラウンジを設けました。飲食だけでなく打合せやイベントにも利用可能です。社員の「困りごと」に対応するコンシェルジュカウンターを中央に設置することで、どの時間帯にも人が訪れる仕掛けとしています。また、カフェやオフィスコンビニも設けており、社員の憩いの場ともなっています。特に、無料のセルフコーヒーマシンは、豆が挽かれる50秒を待つ間に、隣り合った社員同士が挨拶を交わしているなど、日々のコミュニケーション活性化に役立っています。

―――「来たくなるオフィス」を目指す理由と、そのための取り組みは?

福躍:当社は、緊急事態宣言が発令される前、20203月には100%在宅勤務となりました。そこで感じたのは、自宅でも仕事は可能であるものの、やや「こなし仕事」になりがちで、新しい技術や価値を創造しにくいのではとの懸念です。そこでFace to Faceでの交流を促す場としてラウンジ内で15時以降2名以上の社員が集まれば、アルコールを含めた飲料を無料で提供する「ちょい飲み」制度*を導入。この時間帯であれば子育て中などで時間制約のある社員も参加しやすく、気軽に歓送迎会や同期会などを開催してちょっと話すことが出来ます。同じ部署内でのちょい飲みでも、隣のテーブルと自然と交わったりするなど、新入社員や中途入社の方でも部署を越えたコミュニケーションが取れるので好評ですね。社内に声を掛けられる人がたくさんいるというのは、エンゲージメントを高める効果もあるのではないかと思っています。

辻村:「行けば誰かがいる」ので、わざわざアポを取らなくても話せる場があると気軽に参加できてありがたいですよね。移転後は、違う部門にも顔見知りが増え、ABWで移動の機会も増えたことで、オフィスのあちこちで部門を越えて声をかけあう文化が生まれつつあると実感しています。

湯元:当社は事業が非常に多様で、同じ銅といってもダイナマイトの発破を行う鉱山開発からスマートフォンの部品に用いられるナノ単位の微細な素材を扱う部署まで様々です。そこでお互いの事業を理解するために、社内勉強会なども実施しています。部署内で閉じていてもアイデアは限られますから、交流によって思いがけない新しい価値創造につながればと思っています。

*「ちょい飲み」制度は、緊急事態宣言発令時には運用を停止、さらに状況に応じて利用人数や利用時間に制限を設けるなどして、メリハリある運用を図っています。


―――コロナの影響で働き方の変化は?

湯元:コロナ以前からコアタイムなしの完全フレックス制を導入していました。しかし、在宅勤務制度はあっても実践する人はほぼ0でした。パソコンの持ち出しが難しい、オフィスに来て紙を見なければならないなど理由はいろいろありましたが、一番の理由は「変化に対する怖さ」といった心理的ハードルだと思います。

村木:20206月のオフィス移転に際しても、コロナ禍で原則在宅勤務となる中で、出社は個人荷物の整理のみに限定し、引っ越し説明会もオンラインで開催しました。数百名単位の大規模な会議を初めてオンラインで実施したことも、「挑戦する姿勢」として共有することができました。環境変化に押し出される形ではありましたが、在宅勤務に不安を抱いていた人たちも案外やればできるんだと実感したようです。

福躍:移転後は、出張等が制限される中で、オフィスに出社するのは約半数、残りは在宅勤務という状況が続いています。出社する場合も、午前中は在宅、午後から出社して満員電車を避ける人も結構います。今後はオフィスを軸に様々な選択肢がある、というのが理想だと考えています。

―――コロナ禍を受けて会社として対応したことは?

湯元:コロナ禍とは関係なく、ABWの導入とコミュニケーションの強化のために準備していたオフィスのレイアウトやICTの活用が、結果的に感染対策としても機能した形になりました。新オフィスは席数や間隔にかなりゆとりがあるため、感染対策としてレイアウトの見直しやパーテーションの設置などをしなくてもソーシャルディスタンスを保てるようになっています。もちろん、各階の入口に検温と消毒液の設置、マスク着用やソーシャルディスタンスの注意喚起シートの設置などの対策は行っております。

辻村:本社の社員全員にスマートフォンを支給し、そこに業務効率アプリを搭載しました。電子決裁や顔写真付きの居場所検索、社用メール確認、名刺管理、年間スケジュール等の表示アプリなど、働く場所を選ばず効率的に仕事が進められるように、環境を整えているところです。全社一括管理なので、案外手間のかかるアプリのインストールなども自動で出来ます。

福躍:通常プロフィール写真の登録はなかなか進まないもの。そこで、コンシェルジュの方に撮影を依頼し、撮影した人にはオフィス内でPCを持ち歩くときに便利なバッグをプレゼントしました。おかげで現状約8割が顔写真登録しています。スマートフォンの支給に伴って代表電話を廃止したことで電話の取り次ぎ業務はなくなりましたし、名刺管理アプリと電話を連動させることで、電話を受信した際に相手の名前が表示されるようになったことも、業務効率化の1つとして実感しています。

―――今後の働き方はどう変わっていくと思う?

渋谷:今後コロナが収束しても100%出社には戻らないだろうと思っています。一度在宅勤務に慣れると、在宅の方が効率的な仕事もありますし、通勤ラッシュを避けたいといったライフスタイルの変化は定着してきていますから。「オフィス」「在宅」に加えて、今後「出張」が戻ってくると、移動の隙間時間はシェアオフィス等を利用した方が効率的です。ワークプレイスの選択肢は広く持ち、業務内容に合わせて自律的に働き方を決めていけばいいと考えています。ただ、出張についてはこれだけウェブ会議が定着したので、今後「なぜ出張する必要があるのか」の明確な理由が求められるようになるでしょう。現地に行く必要があるもの、オンラインでいいものを見極めることになっていくのではないでしょうか。

村木:多くのご要望いただく工場見学についても、新オフィス内にラボ併設型ショールームを設置したことで、わざわざ遠方の工場まで行かなくても、当社の技術を体感していただくことが出来るようになりました。今後はさらにVR工場見学も導入し、銅を製錬する大型の炉など、現地に行っても側では見られないものを目の前で見られる仕掛けも導入する予定です。現場に足を運んでいただいて空気感を感じていただくのか、ICTの工夫で移動時間を削減するなど別の付加価値を得るのか、選択できるようにしたいと思っています。

―――今後対応していく必要があると感じていることは?

辻村:在宅勤務の浸透を受けて、社員のメンタルヘルスに対するフォローを今後強化していきたいと考えています。メンタルヘルス専門の産業医の先生と連携し、ストレスチェックの結果でストレス度の高い社員だけでなく、新入社員などもきめ細やかな対応をしていく計画を立てています。

渋谷:ワークスタイルの多様化を受けて、在宅勤務でいいのか、オフィスに来てFace to Faceで議論すべきかを業務内容によって部署で判断し、働き方の変化に合わせた評価や業務管理の方法を整える必要があると考えています。ただ、やはりテレワークのみでは新しい価値創造に限界があります。対面での更なるコミュニケーション活性化や、オフィスにいる人と在宅で仕事をする人をどう繋いでいくかなどについて、今後、より深く検討していきたいと考えています。

―――今後オフィスが果たすべき役割は?

渋谷:オフィスを縮小させる会社も多いと聞きますし、ABWを採用している会社では6~7割の席数設置という会社も多いようですが、当社はオフィスの面積を減らすという方向性ではありません。フリーアドレス(ABW)を採用していますが、仮に100%出社しても対応可能な席数は確保していますし、将来的な人員増にも対応可能です。オフィスの役割は、Face to Faceで人と人が交流し、刺激をもたらすことで、激化する国際競争や大きな社会変容の中でも生き残っていくための新たな価値を創造すること。また、パートナーや地域の方が私たちの事業や技術に触れる結束点としての役割もあると思います。そのためにも、より"来たくなるオフィス"を目指して新たな仕掛けを考えていきたいと思っています。



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仕切りのない広い空間にゆったりとした間隔で執務テーブルを配置。


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全ての執務席にPC用アダプターとスマートフォン用充電器を完備しています


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ガラス張りの役員会議室は「場の共有」の象徴的スペース。


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デジタル展示と体感展示で技術に触れる「ショールーム」


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テレビ会議システムで国内外の拠点と繋がる「イベントスペース」

 

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広々としたラウンジは、飲食だけでなくイベントや懇親会など多様な用途で利用可能。


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チケット手配や備品管理、システム相談などに一元対応するコンシェルジュカウンター。


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種類豊富なドリンクを用意しているカフェカウンター。ホットスナックやスイーツも販売しています。


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無料で楽しめる「ちょい飲み」用飲料。1日でストックの約半分近くが無くなることも。


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150300円という社員割引価格で販売されるお弁当は、種類も豊富で毎日ほぼ完売。



今回は、JX金属株式会社様の取り組みをご紹介させていただきました。

他にも20201年間のデータでの振り返りから、1stプレイス、2ndプレイス、3rdプレイス各企業の実例、感染症やワークエンゲイジメントなどの有識者へのインタビューなどをまとめ、様々な視点から熟考と判断を「WORK TRANSFORMTION vol.3」にまとめました。ぜひご一読いただき、これからのオフィスづくりご検討にお役立てください。

 下記の「ダウンロードボタン」よりダウンロードをお願いいたします。

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