HOME > オフィスづくりに役立つコラム > 「本社」ではなく「みんなのオフィス」に。 風通しのよいコミュニケーションでイノベーションを生み出す~株式会社NTTデータフロンティア~
2021.7.28[ オフィス空間 ]
約730名の全社員のうち、品川の本社オフィスに在籍しているのは約100名。普段は顧客先に駐在して仕事をしている大多数のメンバーにとって、「本社」には居場所がなく、用事が済んだらすぐに帰っていました。社員の誰もが気軽に立ち寄れて仲間と話せる「みんなのオフィス」をめざし、全面的にリニューアルされた株式会社NTTデータフロンティア様。「集える場所」の存在がモノづくりにどのような影響を与えるのか、担当者にお話を伺いました。
株式会社NTTデータフロンティア
経営企画本部長 安孫子 和司様
経営企画本部企画担当 課長 丹伊田 真任様
※写真右から
https://www.nttd-fr.com/
――今回のオフィスリニューアルは、コロナ禍前から計画していた?
安孫子:コロナ禍以前から、このオフィスには顧客先に駐在して仕事をしているメンバーの居場所がないことに課題を感じていました。在籍社員の席は固定席運用で、自由に使えるスペースもあまりありませんでしたので、オフィスに来ても用事が済めば、すぐに帰ってしまっていたのです。しかし、同じプロジェクトのメンバーだけでは視野も狭まってしまいます。開発での課題の共有や事例のシェアなど、他のプロジェクトのメンバーとの交流を通して得られる知見も多いはずです。また、事業領域も広くなってきてそれぞれが別々の領域で活躍するようになってきており、お互いのやっていることが少し見えにくくなっていました。もともと風通しのよい会社なのでその強みをより強化していけるよう、交流できる「場」を用意したいと考えていました。そこに新型コロナウイルスの流行があり、固定席のオフィスでは利用の仕方が限定的になること、感染対策に対応できるつくりになっていないこともオフィスリニューアルの後押しになりました。
――新オフィスのポイントは?
丹伊田:今回のリニューアルにあたって目指したコンセプトは、「フレキシブルな対応が可能なオフィス」「働き方に合った働く場があり、生産性高く仕事ができるオフィス」「withコロナに対応したオフィス」の3つです。部門間にあった背の高いキャビネットをすべて取り払い、オフィス全体が見通せるようなオープンな空間を実現しました。常勤のメンバーでなくても気軽に利用できるよう、フリーアドレス制を導入し、タッチダウン利用もしやすいスペースを多く確保しました。また、高さの異なるカフェのようなテーブルや、窓際とオフィス中央に大きく設置したミーティングスペース、個人作業に集中できるブースなど利用目的に合わせたスペースを用意しました。月末月初などは特に出社する人数も増えるので、予約席が埋まってあちこちのフリースペースで作業やミーティングをしている姿が見られますね。オンライン会議の間はデスクに「オンライン会議中」の札を出しておけば、周りも音に配慮するなど対応してくれます。
安孫子:スペースをゆったり確保するために、これまで紙で保管していた資料なども思い切って処分し、棚の数を相当減らしました。やってみたら別に困らないことがわかったので、思い込みを持たずトライアンドエラーすることも大事だと実感しましたね。個室の会議室を作るかどうかもかなり迷ったのですが、壁で囲うと前と同じになってしまいます。最初はゆるやかに可動式のパーティションで仕切る形でやってみて、「やっぱり声が漏れてきて困る」など課題が出てきたらフレキシブルに対応すればいいと考えています。
――感染対策として取り組んでいることは?
丹伊田:ビルの入り口に検温と消毒を設置し、オフィス内は密閉空間を作らず動線も広く確保しましたが、さらに1席ごとに空けて座るようにしています。当然利用ごとの消毒や清掃、アクリルパネルの設置など、基本的な対応はすべて実施しています。座席ごとにゴミ箱を設置するのも止めて、各自ゴミ袋を用意して帰り際に捨てていくような運用に切り替えました。
セキュリティや工程によって在宅ワークができないケースも。
数字で規制せずプロジェクトごとのベストミックスを探る
――コロナを受けて、働き方はどう変わった?
安孫子:緊急事態宣言を受けて、安心安全を最優先として原則在宅勤務に移行しました。ただ、私たちは主に金融機関や公共性の高いシステムの開発に携わっている関係で、セキュリティの関係上で在宅勤務では対応できない仕事や、実際のマシンを使ったテストなど、工程によって自宅ではどうしてもできないものがあり、出社率を数字で規制するのが難しい事情がありました。そこで一律に何%とは制限せず、現地での対応と在宅勤務をその都度選択しながら、ベストミックスをプロジェクトごとに見つけていくという対応になりました。テレワークの方が効率がよい作業があることもわかってきたので、コロナが収束した後もこの働き方は変わらないでしょう。また、プロジェクト単位で100%テレワークもあれば50%なものもありますし、工程でのバラツキもありますが、揃える必要はないと考えています。現状、本社のテレワーク率は70%程度です。本社オフィス以外にもいくつか拠点がありますし、サードプレイスも利用できます。またNTTグループの施設の利用もできるようになりつつあるので、仕事の内容や工程に合わせてベストな場所で仕事ができるよう環境は準備しています。
丹伊田:また、わざわざそのためだけに出社するということがなくなるように、印鑑レスやペーパーレスの仕組みを導入しつつあります。また、オンライン会議用のiPadを全員に支給するなど、テレワークのための環境づくりもサポートしています。在宅勤務した日数に応じて手当を支給する制度も導入しました。また、オーバーワークを防ぐ意味でも、タイムスタンプで社員の稼働状況は把握するようにしています。
――テレワークは以前から活用されていた?
安孫子:コロナ前からテレワークの制度はあったのですが、「特別な働き方」という先入観があったようです。誰でも利用可能なのですが、実際に申請していたのは1割に満たない程度でしたね。いざ始めてみれば、時間制約のあった社員が通勤時間を軽減することができたことで時短勤務からフルタイム勤務に戻したといった事例もあるなど、プラスに捉えられている印象です。
――現状課題に感じていることは?
安孫子:やはりコミュニケーションが取りづらくなったと感じています。また、「困っているな」「体調が悪そうだな」など、
これまでノンバーバルに五感で感じられていたのが分かりにくくなってしまった。そこでZoomで定期的に朝会をしてみたり、個別にサポートや相談が必要な時は1on1を取り入れたりと試行錯誤しています。Zoomをつなぎっぱなしにして仕事をするというアイデアもありましたが、評判があまり良くなったようですね(笑)。管理職同士でも働き方に関する事例や知見を共有・議論する全体会を年に1度開催していて、工夫していることや困っていることをシェアしています。この会は以前から行っていましたが、「テレワークを取り入れた多様な働き方」が管理職の共通課題として議論が活発になったので、コロナによってかなりコミュニケーションに対する意識が高まっていると感じています。オンラインでのコミュニケーションの取り方を学ぶ研修なども取り入れて、全員で学んでいる段階です。また、評価はプロセスと結果で見ていきますが、プロセスの評価が難しくなった面は感じています。
ハード面の整備の後はソフト面の充実。
ワーキンググループで「来たくなるオフィス」を検討
――これから取り組んでいきたいことは?
安孫子:オフィスリニューアルによってハード面の整備はある程度できたので、今後はいかにここに「魂」を入れていくかを考えていかなければと思っています。オフィスは仕事をする場所だけでなく、今後は人と会いたいとか、いろいろ雑談したいとか、アイデアをもらいたいとか、みんなが集まることで得られるものがある場所でなければと感じています。そのための取り組みの一つとして、リニューアル後のオフィスをどうすればもっと使いたいと思ってもらえるか、複数のワーキンググループで検討を進めています。
丹伊田:例えば「一体感を感じられるイベントを考える」をテーマとしたワーキンググループが、オンラインとリアルを組み合わせた謎解きイベントやオンラインお花見などを企画してくれました。謎解きイベントは内定者や社員の家族にも参加してもらったので、どんな雰囲気の会社なのか知ってもらえる機会になったと思います。旅行会社とコラボしてオンラインハワイ旅行体験ツアーなどもやりましたね。アイデアを出し合い、そういったオフィスのソフト面の充実を考える仕組みを考えています。
安孫子:レクリエーションだけでなく、印鑑レス・ペーパーレス導入のための検討チームや、誰がどの席を利用していたのか追跡できるシステムを開発しているチームなどもあります。もともとは濃厚接触者を特定する目的で開発を始めたのですが、オフィスの座席ごとの利用頻度を把握できるので、今後のオフィスレイアウトをフレキシブルに見直していくための基礎データとしても活用していきたいと考えています。
ニーズを捉えて自ら考えるモノづくりの土台は
チーム間のコミュニケーション
――これからの働き方はどうなっていくと考えている?
安孫子:今後はより個人の多様性を受け入れていく柔軟性が重要だと考えています。みんなが同じ場所で決まった時間に仕事をしなければならない、と押し付けるのではなく、育児や介護などライフステージによってそれぞれ事情があっても安心して長く仕事を続けられ、キャリアを形成していけるように、働き方にも働く場所にも選択肢は多く用意しておく必要があるのだと思っています。これからは社員からも、社員の家族からも、社会やお客様からも選ばれる会社であり続けなければならない、それが会社の魅力となっていくので、そのための投資は必要だと考えています。
――今後のオフィスのコミュニケーションはどんな状態を目指している?
安孫子:モノづくりの会社として、これまではお客様のご要望に合わせて納期通りにしっかりとした品質のものをお届けしていくことに強みを持っていました。これからは、そのモノづくりの強みに加え、お客様や社会にとってどんなものが必要かを自ら考えていく力が重要だと感じています。そのための土台となるのがコミュニケーションです。ITのスキルは当然必要ですが、それだけあればいいものが作れるわけではありません。どのようなものが必要とされているのかを知るためにも、コミュニケーションしなければわかりません。別々の開発チームで働く仲間同士が集い、アイデアや知見を共有し、議論することでもイノベーションが生まれるのだと思っています。イノベーションは異質の組み合わせからと考えています。そういった機会の一つとして年に一度ビジネスコンテストも実施しています。自ら考え、仲間と集って新しい価値を生み出す「場」としてこのオフィスを活用してくれたら嬉しいですね。
見通しがよくゆったりとした動線を確保した開放的な空間。フロアにいる人の様子が自然と伝わってきます。
「オンライン会議中」の札を出しておけば、周囲の方が話しかけたりしないよう配慮してくれます。
執務スペースとの間の壁をなくした広いフリースペースは会議や研修などに活用。目的や人数に合わせてフレキシブルな使い方が可能。
誰もが立ち寄って利用できるスペースはオフィスの中央に配置。「バラエティーエリア」の名前の通り、様々なタイプの席から目的に応じて選べます。
見晴らしのいい窓際には立ち会議席やファミレス席など、アイデアを出し合うミーティングスペースを配置。
今回は、株式会社NTTデータフロンティア様の取り組みをご紹介させていただきました。
他にも2020年1年間のデータでの振り返りから、1stプレイス、2ndプレイス、3rdプレイス各企業の実例、感染症やワークエンゲイジメントなどの有識者へのインタビューなどをまとめ、様々な視点から熟考と判断を「WORK TRANSFORMTION vol.3」にまとめました。ぜひご一読いただき、これからのオフィスづくりご検討にお役立てください。
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