TRANSETは
新しい挑戦の連続でした。
それを少しこの場で
紹介出来ればと思います。
TRANSET デザイン
担当
商品開発部
大江孝明
「出張の経費を削減、加えてコミュニケーションの円滑化を目的として、必要性が高まるテレビ会議。その会議スタイルに応える、新しい家具。」これが開発テーマでした。
私の第一印象は「難解…。」でした。「それ、家具で応えるの?」と。
何をすれば、テレビ会議を有効に進められるのか? それを要素化する為、自社オフィスのテレビ会議についてヒアリングを行いました。そこでは、現状のテレビ会議に関する、潜在的な意見が聞こえてきました。
代表的な例は
私はテレビ会議を巡る様々な思いを目の当たりにし、
「これは新しい物が作り出せるかも」という、手応えを少し感じました。
最も検討時間が長かったのは、スピーカーでした。小さなスピーカーをテーブルに取付け、位置、個数、取付け角度など様々に試し、ユーザーヒアリングを繰り返す。そこで膨大な生のデータを集めました。
そうして、私達が下した決断は「スピーカーとマイクが天板上にあるテーブル」でした。特に天板上にスピーカーという異物があるテーブルは、造形的にはかなり挑戦的です。それに、スピーカーハウジングの形状をゼロから考える事も新たなチャレンジでした。家具に組み込め、人の着座を邪魔せず、音質を高め、デザイン的にも違和感が無いハウジングです。また、水こぼれなど不測の事態に耐えるという点で、機能的にも挑戦的なものでした。これは一筋縄ではいかないだろうと覚悟を決めました。
この予想は的中し、私はデザインと基本設計を終えた直後に倒れてしまいました・・・。やりがいのある仕事だった為、頑張り過ぎたようです。過ぎたるは、なお及ばざるが如し。周りの人にも迷惑をかけてしまいました…。
●スピーカーの納まりを検討
●初期段階スケッチ
天板を製作しスピーカーを組込む工場とのやり取りで思わぬ展開が。「デリケートな電気機器を扱いたくない。」と。
理由は、工場内に粉塵が漂う時がある事と、工員が誤ってスピーカーのコーンを潰す事でした。つまり、「うちは電気機器を組み立てる場所ではない」という事でした。それには「なるほど。」と思いました。だから、粉塵が入らず、誤ってコーンを潰さない様にスピーカーハウジングを改良する事にしました。時間は余分にかかってしまいましたが、その改良で問題は解消出来ました。
製造側にはその言い分があり、それをデザイナーが受け止めるのは大切な事だと思います。結局はこちらの無理も聞いてもらわなければならない事は多く、持ちつ持たれつです。
●初期3Dモデル
新製品説明会用に製作した試作機が好評を頂き、私達は一安心しました。
しかし、それも束の間。テレビ会議システムのメーカーによって、音声の接続形式が違い、声の拾い方と聞こえ方に大きな差が生まれる事がわかりました。
対応策は、一つずつTV会議システムを検証していくしかなく、各社にお願いしてデモ機を貸して頂き、ノイズやエコー、音量の差異などを地道にチェックしていきました。
それで誕生したのが、音声入力レベルの可変機能でした。その段階での機能追加は、コスト面と納期面で苦しい選択でしたが、ユーザーに快適に使ってもらう為には、採るべき選択だったと思います。
●GOOD DESIGN AWARD受賞
TRANSETは私が開発者の一人であり、またデザイナーという事で今回記事を書く機会を頂きましたが、本当に沢山の人々の協力の結果で生まれた製品です。
これからもコクヨに集う力を合わせて、使う人が少しでも心豊かな時間を過ごせる物を、世に送り出したいと思います。