Wittyは4年前に発売された製品ですが、現在ではミーティングチェアの売り上げを牽引する製品の一つとなりました。また海外での引合いが、増加している製品でもあります。 開発当時のお話を、ここで少し紹介できればと思います。
Witty デザイン担当 商品開発部 大江孝明
人が沢山集まる場で使われるイス。
その新しい姿を求め、Wittyの開発は始まりました。
着目したのは集会でのイスのあり方で、ポイントは下記の3つです。
特に、集会用のイスは収納効率を求められる為、多く積載できる事を重視します。その為に座り心地は犠牲にされがちで、長時間座るのは辛い事が問題でした。
また集会施設では、力の弱い方がイスを並べて片付ける事もあり、持運びの手軽さが大切になります。
そして一つの空間に沢山並べるイスの為、並んだ時に雑多に見えない事も、空間視点では重要と考えました。
収納効率を上げても、座り心地を損なわない。そして軽量という3点で私達が目をつけたのが、弾性のあるメッシュでした。薄くても弾力性がある素材で、クッション性が期待出来ました。
加えて、そのメッシュをイスへ張った際には3次元の面形状が形成されるよう、弾力を出す糸の混成率や方向性、メッシュの編み方など、張り地メーカーと共に試作を重ねました。
3次元の面形状を形成する事には、メッシュが体にフィットする面積を増やし、自然に体を支えて、座り心地を高める狙いがあります。この面形状は機能的にも、デザイン的にもWittyの大きな特徴として、こだわりの強い部分でした。
●初期段階スケッチ
メッシュを使うことには、落とし穴があります。
メッシュ自体は弾力性があるのですが、メッシュを縁取るイスのフレームは、樹脂製で硬く出来ています。着座時には、そのフレームとメッシュの間で、弾力性のコントラストが出来ます。
座面で例えると、それは樹脂製フレームが太股の裏に食い込む現象を引き起こし、逆に座り心地はとても悪くなります。
それを回避するため、フレームを体に触れ難い位置に設定し、たとえ触れたとしても体に沿うような形状にデザインして、座り心地を損なわない形状にしています。
金型成型品の確認時、計画時の計算値同等の強度が無い事が分かり、急遽背もたれの形状を修正する事態となりました。見通しが甘かったのです…。
「ここから修正か…。」と、納期や投資額の危機感に襲われつつも、製造工場の方々と対策案を考えました。私はなかなか解決案が出せず、行き詰まり感と不安に駆られていました。
その時、工場の課長が「大江さん。むすび、食べますか。」と突然切り出しました。
「え? むすび?」私は、突然で意味がわかりませんでした。
課長はおむすびを用意してくれました。それを食べながら、温かいお茶を飲んで少しのんびり話していると、不思議と「何とかなるかなぁ。」と思えました。きっと課長は、沢山の困難な状況を越えて来ていて、今回みたいな状況でも私の様な若造を気遣ってくれたのだと思います。良い人との仕事に恵まれました。
メッシュを3次元の面形状に成型するのは初めてだった為、何度も成型のトライをしては改善を行いました。「これが限界です。」「いや、まだトライして下さい。」の繰り返しです。
最後まで諦めずにトライしてくれた工場の方々には、全く頭が上がりません。
本当に、多くの人々の協力と頑張りで生まれた製品です。
2006年の発売以来メッシュの色を追加し、海外向けの座高を高くしたタイプを追加したりと、どんどん広がりを見せるWittyは、コクヨと共に成長しているイスと言えるかもしれません。
私自身もWittyに負けないよう、コクヨと共に成長していきたいと思います。