より多くの気くばりをかたちに、
窓口向けロビーチェアーのあたらしい原型をめざしました。
Madre デザイン担当佐々木拓
ホテルのロビーチェアーと庁舎の窓口前にあるロビーチェアーだと、どう違うのか?
そう考えていくと、前者はいかに寛いでもらうかが大切であり、後者はストレスを感じないことが大切になってきます。
そして、さまざまな人が訪れる庁舎だからこそ、より多くの人が待ちやすいロビーチェアーであることが重要です。
待ち合い空間には座るという行為の他にも、ロビーチェアーまでアクセスしたり、順番を聞き忘れないようにしたり、気を遣う行為がたくさんあります。
それらの行為を知らず知らずのうちに妨げてしまう障害が空間の中には潜んでいます。
できる限り、モノがもっていた障害を減らし、より多くの人が気遣いなく待つことができる空間をめざしてデザインされたのがマドレです。
●マドレスケッチ
マドレはユーザー参加型のワークショップでの観察・検証・対話の繰り返しから生まれた商品です。
窓口前を想定した動作を何度も検証し、ユーザーと社内の営業・マーケティング・開発・デザインメンバーが一体となって対話していくことで新たな発見がたくさんありました。
マドレの一番の特長は、サイドに肘・背のないラウンドシートです。
このラウンドシートは脚が不自由な方のアクセスしやすさと、座りやすさを追求した形状です。脚が不自由な方の座り方から着想した形状ですが、結果的にちょっと腰掛けたい方や、荷物を置きたい方、前後で座って待ちたい子ども連れの方にも使いやすい融通の利く形状になっています。
●マドレの一番の特長は、サイドに肘・背のないラウンドシート。 より自由な座り方・使い方が可能。
●チェアーから立ち上がるときに自然とつかまりやすいパネルサイズ、位置など細やかな部分をユーザーの方々と検証している。
待ち合い空間では、座ることが待つことのすべてではありません。 ロビーチェアーのことだけを考えるのでなく、待つ空間全体の心地よさを考えることが重要です。マドレのサイズは、座って待つのに最低限必要なコンパクトサイズで作られています。 これは通路をより広くとり、人とすれ違うときも気遣いなく通ることのできるようにするためです。サイドのラウンド形状は、車イスやベビーカーを使用している方のスペースをできる限り自然に作り出すのにも適しています。 公共の空間だからこそ誰かを特別扱いするのではなく、より多くの人が気兼ねなく、より自然な状態で待つことのできる空間になってほしいと考えています。
●「特別な場所を用意されることが嬉しいこととは限らない」と車イスユーザーの方。使う人の気持ちを考えることが、ものづくりのヒントにつながった。
●より自然な状態で「待つ」ことができるように機能を特化した。