ライフのコツ
2021.02.22
アメリカビジネス界で役立つ三大教養
日本のビジネスパーソンも知っておきたい引用事例
「ビジネス教養」は商談や交渉を円滑に進めるコミュニケーションに欠かせないビジネスの重要知識。相手の興味や関心を引き、ビジネス交渉がしやすくなるメリットもある。今回はアメリカのビジネスエリートが身につけている教養とよく使われる哲学的引用の事例を紹介する。
哲学的な引用の事例①
ソクラテス
よく引用されるのは、古代ギリシャの著名な哲学者であるソクラテスと、その弟子のプラトンが残した格言です。ソクラテスの言葉では「The only true wisdom is in knowing you know nothing. (自分が無知であるという自覚こそが、唯一の知性である)」が知られています。
ソクラテスには相手をたしなめるような名言が多いため、どちらかといえばビジネス場面よりも心を開いた友人と絆を深める際に向いているかもしれません。ただ、「All human virtue is increased naturally by the practice and experience and is strengthened.(人間の美徳はすべてその実践と経験によっておのずと増え、強まるのである)」のような言葉は、ビジネス場面にも適しているように思います。
The only true wisdom is in knowing you know nothing.
(自分が無知であるという自覚こそが、唯一の知性である)
All human virtue is increased naturally by the practice and experience and is strengthened.
(人間の美徳はすべてその実践と経験によっておのずと増え、強まるのである)
哲学的な引用の事例②
プラトン
プラトンの言葉としては、「Human behavior flows from three main sources: desire, emotion, and knowledge. (人の振る舞いは、主に欲求・感情・知識に作用される)」が有名です。人を動かすには「欲求、感情、知識」という3つの原動力があるという意味ですが、ビジネスエリートにとっては3つ目の「知識」の部分も重要となります。"ここぞ"というタイミングに知識と論理も駆使しながら、乗り切っていくことが求められるためです。
人間の根本的なこの3つの欲求を踏まえて、人を動かしていくことが、ホワイトカラーとして、リーダーとしての試金石にもなります。また、ビジネス場面でこの格言をうまく活用しながら、説得性のある会話を導いていくことにもつながるでしょう。
プラトンでもう一つおすすめなのは「Good action give strength to ourselves and inspire good action in others. (善い行いは我々に力を与えるとともに、他人に善い行いを湧き起こす)」。誰に言っても響き、どの宗教にも抵触せず、アメリカ人気質にもマッチしていて、物事をポジティブに解決するときに使えるからです。
Human behavior flows from three main sources: desire, emotion, and knowledge.
(人の振る舞いは、主に欲求・感情・知識に作用される)
Good action give strength to ourselves and inspire good action in others.
(善い行いは我々に力を与えるとともに、他人に善い行いを湧き起こす)
哲学的な引用の事例③
ジョン・F・ケネディ
この他にも、暗殺されたジョン・F・ケネディ元アメリカ合衆国大統領の有名なスピーチである「Ask not what your country can do for you -- ask what you can do for your country. (国があなたのために何ができるかを問わず、 国のためにあなたが何をできるかを問うてほしい)」は、アメリカ国民であれば知っている人が多いはずです。
実はさらに、これに「人類の自由のために一緒に何ができるのかを問うてほしい」という、冷戦や国境を越えて世界全体をよりよくするための言葉が続きます。このフレーズは単なるぶら下がり人間、待ちの姿勢ではなく「会社を通じて自分が社会に何ができるかを考えてほしい」という意味にも置き換えられるわけで、ビジネスエリートにまさに求められる要素といえるでしょう。
Ask not what your country can do for you -- ask what you can do for your country.
(国があなたのために何ができるかを問わず、 国のためにあなたが何をできるかを問うてほしい)
なぜアメリカ人には
哲学的素養があるのか?
日本人がビジネスの場面で、哲学的な引用をもちいたり偉人の格言を使うことはほとんどないでしょう。名言や格言を多用するアメリカ人との違いはどこからくるのでしょうか。その要因として挙げられるのは学校教育の違いです。
アメリカでは高校から哲学を学び、ディスカッション形式で説得力や小論文(エッセイ)の経験を積んで鍛えられていることが挙げられます。哲学は有名大学への進学には必須の素養であり、学校教育のなかで数々の名言や格言に触れる機会が多く、これらを学んでいく中で素養が自然と身につき、日常的に活用できるようになるのです。
格言を引用するときの注意点 哲学者や偉人の名言や格言を引用するうえで、生半可な知識はその先の会話に影響を及ぼすこともあり危険です。引用する場合は下記のポントに注意が必要です。
●その人が誰であって、どこかの国に恨みを買うエピソードでないことを確認する
●その人の信条やその言葉を言ったときの状況など、その人の人生全体も把握しておく
●もじったり意味を変えたりした引用もあるため、原語なのか翻訳なのか、信用できる辞書などでエビデンスを確認する
※その人=哲学者、偉人
これらの注意点を踏まえながら、自分が「この人」と思った人の人生や名言の意味を深く知っておくことで、哲学へのハードルはかなり下がるでしょう。大事なビジネスの場面においても、自信を持って交渉を進めるための原動力や励みになるのではないでしょうか。
竹内 太一郎(Takeuchi Taichirou)
学生時代に化学を専攻し、1996年から2015年まで日本の大手化学メーカーに勤務。同時多発テロから間もない2002年からアメリカ北東部ロードアイランド州の工場に2年半駐在、販路開拓のための研究開発とともにアメリカ国内での法適合性を弁護士と検証するなど現地ビジネス界で活躍。その後、非鉄金属メーカーにて化学物質管理などに従事し、現在は各国の化学物質規制に関するコンサルタント会社にてプロジェクトに参画している。
グローバルママ研究所
世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。https://gl-stage.com/service/mama/