ライフのコツ
大企業のサプライチェーンに女性所有の企業を!
国際NGOが推進する「サプライヤーダイバーシティ」とは?
サプライヤーダイバーシティとは、大企業のサプライチェーンにマイノリティ企業(マイノリティ性の高い企業)を受け入れていく取り組みだ。2018年には、日本でも女性サプライヤーをサポートする国際NGO『ウィコネクトインターナショナル』の支部が立ち上がっている。その意義や内容、活動などについて紹介する。
サプライヤーダイバーシティとは
サプライヤーダイバーシティとは、女性や障がい者、LGBT、退役軍人などのマイノリティが所有する企業が、大企業のサプライヤーとして、商品やサービスを提供する機会を得るための取り組みです。 たとえば、世界経済において購入意思決定の85%は女性によるものですが、大企業や政府が女性所有の企業をサプライヤーとして受け入れる割合は1%にも満たない現状があります。このように、マイノリティサプライヤーの割合が著しく不均等という問題が、世界のダイバーシティ社会における課題となっています。
サプライヤーダイバーシティの メリットが広く認知されはじめる
最近になってサプライヤーダイバーシティという考え方が登場し、推進する動きも広がってきました。サプライヤーとして選ばれるマイノリティ企業にとってはビジネスチャンスですが、選ぶ側の大企業にも大きなメリットがあることが認知されてきたからです。 企業がイノベーションを起こすためには新しい才能や視点が必要であり、その点から多様性に富むマイノリティのサプライヤーに可能性を見出せるのではないか、という理解が進んできました。多様性に富んだサプライヤーをインクルードすることで、新鮮で画期的な商品やサービスの提供につながり、メリットを生み出すことができるということが広く知られるようになったのです。
なぜマイノリティ企業が サプライヤーに選ばれないのか
これまでは、マイノリティ企業の、マイノリティという特性がマイナスとなり、サプライチェーンから外されることが多く、大企業との取り引きが難しい状況にありました。選ぶ側の企業は多様性や独創性に富んだマイノリティ企業の優位性をあまり認識しておらず、積極的に選ぶという姿勢はみられなかったのです。 一方で、マイノリティ企業側も自分たちのマイノリティ性がサプライチェーンにおいては多様性という強みになることをあまり認識していなかったため、自分たちの特性を活かしきれていませんでした。また、マイノリティ企業には中小サプライヤーも多く、大企業へのアプローチはより困難な状況でした。 こういった状況から、大企業とマイノリティ企業が出会うチャンスがほとんどなく、サプライヤーダイバーシティの実現が難しかったのです。
マイノリティ企業が 選ばれるためには外部サポートが必要
そんななか、10年ほど前から欧米を中心に、マイノリティ企業をサポートし、サプライヤーを探している大企業と結びつける支援態勢が必要だという機運が高まります。 具体的には、大企業とマイノリティ企業をマッチングする仕組みをつくったり、大企業のサプライヤー選定を容易にするため、サプライヤーとして有望なマイノリティ企業に認証を付与したりしました。 こういった活動を行ったのが、国際的支援団体ウィコネクトインターナショナルのようなNGOです。ウィコネクトインターナショナルは女性サプライヤーに特化している組織ですが、欧米には障がい者やLGBTなど他のマイノリティサプライヤーを支援するNGOもあります。
NGOウィコネクトインターナショナルとは
ウィコネクトインターナショナルは女性企業家を大企業などのサプライチェーンに組み込むことを目的に活動する世界で唯一の非営利独立団体で、2009年に米国・ワシントンDCで設立されました。 女性が所有・経営する企業は多様性・独創性に富んでいるにもかかわらず、商品やサービスを提供できる割合が1%未満と少ないことを問題視し、この数値を高めることをミッションに活動しています。 女性が少なくとも51%以上の株を所有し、1人または複数の女性によって経営が行われている中小企業に対し、勉強会や意見交換会を開いて事業成長を支援したり、国際認証を発行したうえで大企業とのマッチングなどを行っています。 現在、世界45拠点・112か国で約1万社を超える女性企業家が事業登録し、活動に賛同する大手のメンバー企業は100社にのぼります。 ウィコネクトインターナショナルでは、政府、国際機関、企業、業界団体など多くの関係者と横断的に共創しながら、サプライヤーダイバーシティの実現をめざしています。
ウィコネクトインターナショナルの主な活動
- ●女性企業家にリーチし自己登録を促進
- ●国際認証を発行
- ●トレーニングや勉強会の機会を提供
- ●大企業や国際機関の調達部門とのマッチングサポート
女性が所有する企業に発行される国際認証とは
51%以上の株式を女性が保有し経営にも携わっている企業は、ウィコネクトインターナショナルが運営するWEBデータベース「e network」に無料で事業登録できます。自社の事業内容などを書き込んだり更新したりできるもので、ビジネス活動につながる可能性があります。 ウィコネクトインターナショナルの活動のなかでも特徴的なのが、第三者団体として賛助企業や国際機関からの負託を受けて国際認証を発行していることです。 この国際認証「WBE(Women 's Business Enterprise)認証」は、WEBデータベース「e network」に事業登録した企業のうち、ウィコネクトインターナショナルの審基準に達した企業に発行されます。認証を受けると、企業成長のための教育機会が提供されたり、女性サプライヤーに関心の高い国内外の企業とつながる機会を得ることができます。 この国際認証の発行にあたっては厳密な調査が行われます。なぜなら、女性が会社の代表者となっていても、実態は女性が意思決定権を持たず、男性株主や親会社の統括下にあるケースもあるからです。そのため、所有・経営・統括が女性の手で行われているかを財務諸表などで確認します。サプライヤーダイバーシティの信憑性を担保するためにも、適切な国際認証の発行が不可欠なのです。
鈴木 世津
NGO・ウィコネクトインターナショナル 日本プロジェクトディレクター。2004年に個人事業主として起業開始。オンラインの語学トレーニングやファシリテーションなどを手がけるヒューネクスト(株)を経営しながら、2018年にウィコネクトインターナショナル日本ディレクターに就任。ワシントン本部と連携し、女性企業家のサプライチェーン参入とその事業成長に情熱を注ぐ。
グローバルママ研究所
世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。https://gl-stage.com/service/mama/