リサーチ

2022.12.07

女性の雇用と管理職登用の現状

女性管理職割合12.3%。停滞する女性登用

男女の均等な対応や仕事と家庭の両立などに関する雇用管理の実態把握を目的とした「雇用均等基本調査」の令和3年度調査の結果が2022年7月に公表された。結果をもとに、男女の雇用状況の差異や女性の管理職登用の現状について考察する。
※「令和3年度雇用均等基本調査」は、厚生労働省が全国の企業と事業所を対象に、管理職に占める女性割合や、育児休業制度の利用状況などについて、2021年10月1日現在の状況を調査したもの。

正社員・正職員における
男女比率は、およそ7:3

正社員・正職員に占める女性の割合は27.4%で、男性の割合は72.6%であった。女性の割合は前回調査(令和2年度)の27.2%から0.2ポイント上昇したものの、男女比率の差は依然として大きい。

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職種別に女性の割合を見ると、総合職20.7%、限定総合職34.0%、一般職33.9%など。総合職における女性比率が他職種に比べて低かった。




「男性のみ採用」した
企業が約3.5割

令和3年春卒業の新規学卒者を採用した企業は、回答企業のうち21.3%。その中で、採用した学卒者の性別を見たところ、「男女とも採用」した企業は43.1%、「女性のみ採用」は20.1%、「男性のみ採用」は36.8%と、女性を採用した企業は6割強に留まっている。

「男性のみ採用」してい企業で職種別に見ると、総合職では41.8%、限定総合職では49.6%、一般職では35.2%。また、総合職における「男性のみ採用」企業の割合は前年度に比べて1.8ポイント増加。限定総合職、一般職においては前年度に比べて減少したが(それぞれ3.9ポイント、4.0ポイント減)、低いとは言えない割合だ。

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企業規模に比例して
女性を採用した割合は高くなる

なお、企業規模別に見ると、企業規模が大きいほど女性を採用した企業の割合が高く、5000人以上規模では99.2%、1000〜4999人規模では97.2%、300〜999人規模では、81.5%、100〜299人規模では70.1%であった。他方で、30〜99人規模、10〜29人規模ではいずれも56.8%であった。




女性管理職を有する企業は53.2%
直近7年間では減少傾向

課長相当職以上の女性管理職(役員を含む。以下同)を有する企業の割合は53.2%、係長相当職以上の女性管理職を有する企業の割合は61.1%であった。いずれも前年度に比べると横ばいないし微増したが、近年で最も高かった平成27年度(課長相当職以上59.1%、係長相当職以上65.9%)に比べると低く、直近7年間では女性管理職を有する企業の割合はやや減少傾向にある。

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課長相当職以上に占める
女性割合は12.3%

男女問わず各役職に人員を配置している企業において、課長相当職以上の管理職に占める女性の割合(以下、「女性管理職割合」)は12.3%、係長相当職以上の女性管理職割合は14.5%であった。この10年を見ると微増しているが、「2020年代の可能な限り早期に指導的地位(※)に占める女性の割合が30%程度」という政府目標には遠く及ばない割合だ。

※法人・団体等においては、課長相当職以上


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規模が小さい企業の方が
女性管理職割合が高い

なお、企業規模別に見ると、どの管理職の分類においても、「10〜29人規模」の企業における女性管理職割合が最も高く、その他の規模における割合も、企業規模が小さいほど高い傾向がある。規模が小さい企業の方が、女性が昇進しやすい傾向にあることがうかがえる。

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実際、女性昇進者割合として、2020年 10 月1日から2021年9月 30 日の間に、新たに役職に就いた昇進者に占める女性割合を企業規模別に見ると、課長相当職以上について、「5000 人以上規模」から「100〜299 人規模」においては1割程度であったのに対し(※)、「30〜99 人規模」では16.3%、「10〜29 人規模」では24.5%と、相対的に高かった。なお、全体で見ると14.5%であった。

※「5000 人以上規模」10.3%、「1000〜4999 人規模」10.5%、「300〜999 人規模」10.8%、「100〜299 人規模」9.8%




女性のキャリア継続のための対応と
女性管理職登用の抜本的な改革

調査結果を振り返ると、正社員・正職員における女性比率(本調査では27.4%)は、経年で見ると増加傾向にあるとはいえ、男性比率に比べると低い状況にある。そして、女性雇用の最大の機会である新卒採用においても、そもそも新卒採用を行った企業の割合自体が約2割と低く、そのうち女性を採用した企業も約6割にとどまっており、女性の雇用促進の難しさがうかがえる。

また、管理職への女性登用については、「2020年に指導的地位に占める女性の割合が30%程度」という政府目標が「2020年代の可能な限り早期に」と修正されたが、今回の「課長相当職以上における女性管理職割合12.3%」という結果は、目標にはまだまだ遠い状況であることを示している。正社員・正職員に占める女性割合が約3割であることを鑑みても、12.3%は低い数値であろう。
役職別に見ると女性昇進者割合は増加傾向にはあるが、微増でしかなく、そもそも課長相当職以上の女性管理職がいない企業も46.8%に上り、目標達成にはほど遠い。

職場における女性の活躍を妨げる大きな要因の一つとして、雇用機会の少なさは、新卒採用時の男女差を見てもあきらかです。また、昇格条件が女性に不利に働いている、あるいは出産や子育てといったライフステージの変化への対応が不十分なため、キャリアの継続を断念したり、上司・同僚の理解が得られず、働きづらさを感じているケースも少なくないでしょう。そうした環境下では昇格意欲も芽生えにくく、女性自身が管理職を希望しないという状況が生まれています。
こうしたさまざまな課題が関連しているため、女性管理職を増やすことは簡単ではありませんが、男性中心だったこれまでの企業体質を抜本的に変えていく、本気の改革が今、求められるのです。


【出典】『令和3年度雇用均等基本調査』


作成/MANA-Biz編集部