リサーチ

2022.12.29

2022年ビジネスパーソンが選んだ今年の漢字

コロナ禍3年目でワーカーの意識に変化の兆し

日本漢字能力検定協会が毎年、京都の清水寺で発表する「今年の漢字」。2022年は、ロシアによるウクライナ侵攻や円安・物価上昇などを象徴する文字として『戦』が選ばれた。ではビジネスパーソンは、コロナ禍3年目となった今年、どんな思いを抱いたのか。コクヨでは昨年に続いて、ビジネスパーソン約300名に向けて「今年の自社を漢字1文字で表すと?」と質問を投げてみた。得られた結果をもとに、2022年における企業の動きやワーカーの意識変化について解説する。

1位は3年連続で「変」だが
過去2年とは込められた意味が異なる

「ビジネスパーソンが選んだ今年の漢字」のアンケート調査は、2020年から実施しています。2022年の1位は、『変』で、3年連続のトップという結果でした。
ただし、過去2年と今年では、『変』に込められた意味が異なります。2020年と2021年は、「コロナ禍をきっかけとした働き方や事業体制の変化」というニュアンスで『変』を選んだ人が多く、『変』の背景にはコロナがありました。しかし2022年は、「変革の年」「新しい事業分野の開拓を始めたから」「人事制度が大きく変わったから」といった声が多く、自社の前向きな変化を感じてこの漢字を挙げた人が多かったのです。
企業が成長していくには、変化し続けるビジネス環境に対応して柔軟に変わっていくことが求められます。これまでは、コロナの影響から『変』を意識する人が多かったのかもしれませんが、今後も不測の事態などに合わせて企業は変化し、自社の『変』を感じる人が多いでしょう。

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2位の「忙」「無」から見える
WITHコロナ下の働き方

2位は同数で『忙』と『無』が挙がりました。
『忙』を選んだ人からは、「忙しい1年だったから」「忙しかったが、仕事を頑張ることができた」といった声が挙がりました。コロナ禍の非日常な働き方が一段落し、文字通り忙しさが戻ってきたことがうかがえます。
『無』に関しては、「何も感じなかった」「会社に求めることはない」といった、否定的なニュアンスで選んだ人がやや目立ちました。この文字は「来年(2023年)の自社に期待する漢字」でも1位に選出されており、テレワークの常態化などによって自社へのエンゲージメントをあまり感じなくなってしまったワーカーが増えたのではないか、と危惧されます。

「忙」を選んだ理由

●忙しい一年だったから
●従業員が辞めたりで忙しかった
●毎日忙しいから
●いろんな意味で忙しい
●バタバタしていたから
●忙しかったが、仕事を頑張ることができた

「無」を選んだ理由

●特にない
●何も感じられなかった
●何もなかったから
●コロナの影響で忙しかったし、会社に求めることはないから
●世間知らず

なお4位には、2021年に2位だった『耐』となりました。ワーカーの声を拾ってみると、「忍耐の年だった」といった過酷な状況を強いられている声がある一方で、「大型受注ができたが時間がかかったため」や「持ちこたえていけば上向くと思う」などビジネス環境の好転やポジティブな意識をうかがわせる意見もみられました。

「耐」を選んだ理由

●耐えることが多かった
●大型受注ができたが時間がかかったため
●厳しい外部環境に耐えられる企業
●持ちこたえていけば上向くと思う
●忍耐の年だった感じ
●コロナの社会状況に耐える




来年の自社に期待する漢字は
2位の「進」に注目したい

「来年(2023年)の自社に期待する漢字」も聞いてみたところ、1位は先述したとおり「無」でした。続く2位は同数の『進』と『楽』で、特に『進』には「立ち止まらないで改革を進めてほしい」「さらに進化・深化してほしい」といった前向きな声が多く集まりました。働き方改革やDXを推進する企業に対して、ますますの期待を寄せるワーカーが多いことがわかります。

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2023年の自分に期待するのは
「健」やかに「楽」しく働くこと

「来年の自分に期待する漢字」としては、『健』と『楽』が同数で1位でした。『健』を挙げた人からは、「心身共に健康に過ごしたいから」「健康維持に努めたい」とコメントが挙がっています。『楽』に関しては、「楽しい1年にしたい」という期待の声と共に、「もう少し楽になりたい」など現状の苦労をうかがわせる意見もみられました。
今回の結果には、「心身のストレスを感じずに楽しく健やかに働きたい」というワーカーの思いが現れています。企業としては、成長の土壌を固めるためにも「従業員の『健』『楽』を実現するための施策」が求められています。

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2022年の「ビジネスパーソンが選んだ今年の漢字」からは、コロナ禍の影響を受けながらも新しい時代を見すえてアクションを起こす企業の姿がうかがえました。一方で、現在の仕事や働き方にストレスを感じ、不安なく働くことを願うワーカーの思いも見て取れました。 2023年の企業がどのような変化を起こし、ワーカーは何を感じるのか、引き続き注目していきたいと思います。


調査概要

実施日:2022.12.15-16実施

調査対象:社員数500人以上の民間企業に勤めるワーカー

ツール:WEBアンケート

回収数:309件

協力:マクロミル


【図版出典】Small Survey「2022年の振り返り」


河内 律子(Kawachi Ritsuko)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「ダイバーシティ」をテーマとするビジネス研修を手掛ける。

作成/MANA-Biz編集部