HOME > オフィスづくりに役立つコラム > ABWとは?働く「時間」と「場所」を自由に選択できる時代の到来
2021.7. 6[ 働き方 ]
「ABW」という新しい働き方をご存知でしょうか?新型コロナウイルス感染症の流行により、従来の働き方やライフスタイルは一変しました。感染拡大を防ぐために「新しい生活様式」として、テレワークや時差出勤、会議はオンライン等と、人との接触を最大限に低減する取り組みが求められています。そこで、ニューノーマル時代の新しい働き方として注目されているのがABWです。
ABWは、社員側からみると自律的に働くことにより創造性、生産性が向上する、ワークライフバランスを整えやすい点に魅力があります。また、経営側から見ると社員一人ひとりの生産性が向上する、フレキシブルな働き方を社員に提供することにより多様な能力を持つ人材確保につながるといったことが期待できます。
今回は、ABWとはどのような働き方か、なぜ注目されているのか、メリット、フリーアドレスやテレワークとの違い、導入のポイントについて考えていきます。
ABWとは「Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」の略であり、業務の内容やその日の気分に応じて、働く「時間」と「場所」を自由に選択できる働き方のことを指します。
従来通りにオフィスに出勤するだけではなく、自宅やカフェ、コワーキングスペースなど様々な場所で柔軟に仕事をすることができるので、場所に縛られない働き方となります。勤務時間についても定められた総労働時間を満たせばよいので、ワーカー自身で労働時間の配置(始業及び終業の時刻)を決定することができ、個々のライフスタイルに合わせた働き方が可能になります。
業務やプライベートのスケジュールを考慮し、働くのに最適な場所や時間を選んでいるABWの働き方の例として、3つのモデルケースをご紹介します。
モデルケース1は、お客様訪問で外出の多いAさん。
Aさんは、訪問先の近くにあるコワーキングスペースやカフェを利用することによって、オフィスに出勤する移動時間や訪問先から訪問先への移動時間を削減しています。こうすることで、提案準備に時間を割くことができ、訪問の際も時間に余裕を持って行動ができています。
モデルケース2は、新しい企画を練り上げ中のBさん。
Bさんは、始業時間を早めてオフィスに出勤しています。オフィスに早く出勤することで社内に人も少なく、電話が鳴り響くこともないため、静かな環境で集中して仕事に取り組めます。また、早い時間に退勤できるので、プライベートな時間が確保できました。
モデルケース3は、子育て中のCさん。
Cさんは、午後から子供の面談で学校に行かなければなりませんが、休みを取らなくても、一旦仕事を中断することで対応しています。今日は出社せず自宅で勤務なので、通勤がない分いつもより早く始業を開始でき、会議にはwebミーティングで参加します。午後は一旦仕事を中断し学校の面談に行き、自宅に戻った後にまたソロワークを再開して、1日の仕事を終えました。
このように自身で、業務上やプライベートのスケジュールを考慮して最適な場所や時間を選んで働くことにより、ワーカーの力を最大限に引き出すことができます。
では、なぜコロナ禍をきっかけに、ABWが注目されるようになったのでしょうか?
以前からテレワークや在宅勤務の制度は導入されていたという企業も一定数ありました。しかしながら、そういった制度の利用は、子育てや介護などの理由があるワーカーに限定されている、制度はあるが何となく使いづらい雰囲気で浸透していないといったケースも少なくありませんでした。
しかし、コロナ禍では、そういった理由や風土に関係なく、一定数のワーカーが半強制的ともいえる形で在宅勤務を経験しました。結果、ABWという言葉を知らなくても「自身で働く場所や時間を選ぶ」という概念は、より一般的なものとなりました。
また、「自身で働く場所や時間を選ぶ」ことは、ただ自由に働く場所や時間を選べるということではなく、「働き方の自律性が高まることによって、個々の創造性や生産性向上に寄与する」とするABWの考え方が注目されています。
ABWを導入するメリットについて、ワーカー側の視点と経営者側の視点に立って、見ていきましょう。
ワーカーは、自分の業務に最適な場所、時間を選択できることで、作業効率を高めることができます。また、好みの環境で仕事をすることは、ストレスの軽減や、クリエイティブな発想を生み出すことにもつながります。柔軟な働き方によりワークとライフのバランスもとりやすく、心身健康な状態を保つ効果も期待できます。
続いて、経営者からみたABWのメリットを見てみましょう。
まず、ワーカーの自律的な働き方を促進することで、それぞれの能力が発揮されやすくなり、生産性向上が期待できます。また、柔軟な働き方をワーカーに提供することにより、多様な能力を持つ人材の確保や従業員満足度を向上させる効果があります。自席のフリーアドレス化も進める場合には、オフィスのスペースを有効に活用し、ファシリティコストの軽減も期待できます。
フリーアドレスとは、「オフィスで自席が固定されていない」ことを指します。 オフィス空間が多様であるかどうかは問いません。
社員全員分の固定席を用意する必要はないので、人数の変化や組織変更にも柔軟に対応し、オフィス内のスペースを効率化することができます。
対して、ABWはオフィス内外、多様なワークスペースから働く場所を選びます。また、本来「時間と場所を自由に選択できる働き方」を意味しますが、狭義のABWとして、「オフィス内で好きな場所を選んで働けるスタイル」を指すこともあります。このケースでは、オフィス内に「コミュニケーションに適したスペース」「集中するソロワークに適したスペース」など、業務内容に合わせて選べるスペースがあり、そこからワーカー自身で自律的に業務や気分に適した場所を選択します。
ABWとフリーアドレスの違いは、「場所を選ぶ」ということで混同されがちですが、フリーアドレスは主にスペース効率化、ABWは生産性や働きやすさの向上を目指しています。
テレワークとは、「tele=離れた所」と「work=働く」をあわせた造語で、情報通信技術(ICT)を活用した柔軟な働き方のことです。場所にとらわれず、時間を有効に活用することを目指しています。
自宅での「在宅勤務」、移動中や移動の合間の時間に行う「モバイルワーク」、メインとなるオフィス以外の施設「サテライトオフィス」や「コワーキングスペース」での勤務、バケーションも楽しめるリゾート地などで仕事をする「ワーケーション」といった、オフィス以外の様々な場所でICTを活用して働くことを総称してテレワークといいます。
ABWの柔軟な働き方を実践するために必要な要素の1つが、テレワーク環境(ICT環境)の整備といえます。
ABWの導入にあたり、社員が働きやすい場所の提供だけではなく、制度やツール、企業風土についても検討が大切です。
また、社員の居住地や働き方を鑑みると、自社オフィスと外部のワークスペースの割合はどのくらいが適切か、現状の自社オフィスの床面積は有効に活用できているかといった調査を実施し、計画的にABWの環境を整えていくことも必要です。
コクヨではABW推進をサポートするために、導入前の調査や運用コンサルティング、社員の意識改革を促す研修など、多面的に様々なサービスを提供しています。
今回は、働く「時間」と「場所」を自由に選択できる「ABW」について、ご紹介しました。
導入を進めていく中で、特に重要なのが「社員一人ひとりの意識」です。ABWの導入によって、どのようにより良い働き方にしていくのか、生産性を高めながら楽しく仕事に取り組んでいけるか、それらは自由に働き方を選択できる社員個人に委ねられています。
また、今回ご紹介した内容を一気に変革する必要はありません。できることから始めて、ABWという新しい働き方を取り入れてみてはいかがでしょうか?
【参考】一般社団法人 日本テレワーク協会,テレワークとは
https://japan-telework.or.jp/tw_about/
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