HOME > オフィスづくりに役立つコラム > 【オフィスのチカラ】オープンイノベーションと場づくり
2022.4. 4[ オフィス空間 ]
オープンイノベーションという言葉をよく耳にするようになりました。オープンイノベーションとは、「組織内部のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすことである(Henry W.Chesbrough 著書『Open Innovation』2003年)」とされています。消費者ニーズの多様化やICTの飛躍的な発展とそれに伴う市場競争のグローバル化、産業構造の変化などにより、「自前主義」をベースとした従来型のクローズドイノベーションでは、スピードやコストの面で競争力を維持できなくなってきたという状況が背景にあります。オープンイノベーション実現のための場づくりについて考えてみませんか。
一言で「オープンイノベーション」と括りがちですが、企業の姿勢は大きく2つの方向性があります。
外部資源を社内に取り込み、イノベーションを創出すること。事業における欠けたピースの保管や社内リソースでは出ないアイデアや発想の補完を目的とします。インキュベーション的な機能を果たす場合もあります。
外部チャンネルを活用し、既存の内部資源を新たな開発および製品化につなげること、例えば、社内の開発技術をさらに発展、または市場化することを目的に社外にライセンスアウトするなどが挙げられます。
どちらかに軸足を置いて展開する例もあれば、2つの方向性を連携しながら統合的に進める例も見られます。
オープンイノベーションの場として、企業が活用する場は様々ですが、一例として以下のようなものがあります。
スタートアップが多く集まるコワーキング施設のコミュニティを通じて連携や協創を図ります。施設側がオープンイノベーションのコーディネートを担う場合もあります。
自社施設の一部を、イベントスペースやコワーキングスペース等として一時的に供用します。セキュリティ面の課題をクリアすれば、既存施設での運用が可能です。
自社のオフィスにオープンイノベーションに特化した空間を設置します。特に研究開発施設に併設する例が多く見られます。社員が日常的にその環境に触れることができます。
オープンイノベーション専用の施設を開設し、自社で運用します。コワーキングやインキュベーションの機能を持たせる場合もあります。
自社のオープンイノベーションの場に必要な機能は、企業により異なりますが、多くの施設で採用されているものとして以下のものが挙げられます。
セミナーやワークショップを開催できるようなイベントスペースから、国際会議の開催が可能なカンファレンスまで、規模や形態は様々ですが「人が集まれる場」を設けています。
自社やパートナーの製品や技術などを展示するスペース。完成品のPRではなく、自社の知的資源と社外の人を結び付け、協創の可能性を提示するための場を設けています。
生み出されたアイデアを、すぐに形にするラピッドプロトタイピングの場として、専用の設備を用意する例が見られます。
会話や発想の広がりを期待して、芸術系や人文系、絵本といったあえて専門分野から離れた書籍を配架するなど、従来の「資料庫」ではない機能を持たせています。
社外の人が日常的に利用できるスペース。特定のパートナーに限定する場合から、一般利用を受け入れる場合など、場の目的により使用範囲が異なります。
オープンイノベーションの阻害要因のひとつとして挙げられているのが社内の拒否反応です。今まで評価されてきた自らの技術力に対する自負があるからこそ、社外の知的資源の導入や社外の提供には懐疑的な面もあるでしょう。「場づくり」のひとつの効用は、オープンイノベーションに掛ける「企業の本気度」を社員と共有し、オープンイノベーション的な風土の浸透を図れることかもしれません。
参考
オープンイノベーション白書 初版(オープンイノベーション協議会 2016年)
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