HOME > オフィスづくりに役立つコラム > 【オフィスのチカラ】オフィスのサステナブル 6つのアイデア
公開日:2024.9. 4
執筆:コクヨコラム編集部
「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション:Sustainability Transformation)」とは、企業が自社の経済成長だけを重視した経営から、社会全体のサステナビリティ(持続可能性)を目指した経営・事業方針へと転換することをいいます。
経済産業省が2022年8月に公表した「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」では、SXを、社会と企業のサステナビリティの同期化、及びそのために必要な「経営・事業変革(トランスフォーメーション)」のことであると説明しています。
環境問題など多くの社会問題が深刻化するなかで、企業が存続するためには「確かな稼ぐ力・競争力に基づく経済的価値」と「地域や環境に貢献できる社会的価値」を両立することが欠かせません。また、この取り組みを実現し、企業が市場評価を高めるには、消費者や投資家から共感を得ることが重要です。
オフィスは、投資家はもちろん従業員や地域の方など多くの人が集まる場所です。これからの企業価値を、より広く社会に認識してもらうためにも、まずはオフィスづくりで実践できる小さな取り組みから、企業の「SX化」をはじめてみてはいかがでしょうか。
この記事では、サステナビリティ(持続可能性)のうち、「環境配慮」に焦点を絞り、オフィスづくりでSXを取り入れる6つのアイデアについてご紹介します。
※参照 経済産業省「伊藤レポート 3.0(SX 版伊藤レポート)」2022年8月30日(https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220831004/20220831004-a.pdf)
目次
企業にSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)が求められる背景には、気候変動などの環境課題や、格差の深刻化などの社会課題があります。
一部上場企業へのアンケートによると、企業がSXに取り組むことが重要だと考える理由として、約58%が「新たなビジネスにつながる可能性の増加」を図るためだと回答しており、多くの企業が、積極的なSXで、ワーカー自身の「社会課題への関心」や主体性を高めたいと考えていると推察できます。
本来、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは「持続可能な社会への以降・変換」を意味し、環境問題や人権保護などの様々な課題への対応が対象です。次の項からは、「環境配慮」に焦点を絞り、オフィスづくりで実現できる社会と企業のサステナビリティの同期化について、働き方/ワークプレイス構築を得意とするコクヨ株式会社と、賑わいづくりを得意としエシカルな空間づくりを目指す株式会社船場の両社による、具体的な取り組みをご紹介します。
環境配慮による企業のSX促進のために、ぜひご参考ください。
オフィス構築において環境負荷が最も抑えられるのは「長く使う」ことです。そのためには「性能面」「機能面」「トレンド面」での劣化や変化を見越した「ロングライフ設計」の家具を採用するとよいでしょう。具体的には、椅子の座面など汚れやすい部分をパーツごとに交換できる、働き方の変化に合わせて使い方や組み合わせを変えられる、色や素材のトレンドにあわせて天板や座面などが変えられる、といった汎用性や可変性のある家具を選ぶことが大切です。
・チェアーの印象を変えたいときや、汚れたときに簡単に座面が交換できる「パロ(Pallo)」。
・URL:https://www.kokuyo-furniture.co.jp/products/office/pallo/
環境負荷を抑えるためには、オフィスリニューアルや工事で発生する廃棄物を減らすことが有効です。働き方の変化を見越して、グリッド単位でレイアウト変更しやすいプランにしたり、造り付けせずに移動可能な家具を使うことで、レイアウトを変える際にも既存のものを長く使うことができます。その結果、廃棄物を削減することに繋がります。例えば、会議室も固定壁でつくるのではなく、可動式のブースを設置したり、シェルフなどでゆるやかな間仕切りをつくる形にすることで、移設も容易なオフィス空間をつくることが可能です。
・移設が可能な会議ブース「ワークポッド(WORKPOD)」。
・URL:https://www.kokuyo-furniture.co.jp/products/office/workpod/
従来なら廃棄していた未活用のものを取り入れたり、今までリサイクルの対象と考えられていなかったものを活用することでも、環境負荷を軽減することができます。また、自社製品の製造プロセスで発生する端材や、地域ならではの未活用素材を取り入れることで、オフィスづくりの背景にストーリーが生まれ、ワーカーやパートナーとの共感や、循環型社会への意識の自分事化を促すことが期待できます。
photo by Katsuhiro Aoki
・廃棄建材やサンプル建材を分解・再構築して株式会社船場が作成した建材「Link」。
オフィス内で不要になったものの形を変えて利活用することでも、環境負荷軽減に貢献できます。新しい価値を生む「アップサイクル」は、あえて何を使ったかを分かるようにつくることで、目にする人のサステナブル意識の醸成につながります。
また、新しいオフィスを企画する際、ワーカー自身がワークショップに参加して、どのように引っ越し前のオフィスの素材を使って、新たな価値を創造するかを考えることで、ワーカー同士のコミュニケーションや、オフィスへの愛着を高めることも可能です。
photo by Katsuhiro Aoki
・現場工事で出た廃材を使ったオブジェを展示(株式会社船場 本社オフィス)。
省エネルギーやごみの削減は、環境負荷の低減につながる比較的はじめやすい施策です。経済産業省によれば、平均的にオフィスビルの消費電力は、空調が約49%、照明が約23%を占めています。これらを合わせるとオフィスの消費電力の約72%となり、オフィス運用時の空調や照明に関わる施策がいかに有効かが分かります。
具体的な施策としては、蛍光灯をLED照明に交換する、人感センサーを取り入れてフロア内の必要な照明だけを点灯したり、使用していないエリアの空調を停止するなどのアクションが考えられます。オフィスの空間構築では、自然採光を取り入れることで、照明の電力節電だけでなく、心地よいオフィスづくりを実現することも可能です。
※参照 経済産業省 資源エネルギー庁「夏季の省エネ・節電メニュー」令和6年5月(最終閲覧日:2024年8月28日)https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230609003/20230609003-6.pdf
心地よい階段を設けることで、エレベーターの使用がほぼ0になった例も。
オフィス移転やリニューアルなど、テナントエリアの内装工事では、多くの廃棄物が発生します。そのため、オフィスの解体工事でリサイクルを意識することは非常に重要です。
建設工事に伴って廃棄される「木くず」「紙くず」「金属くず」「廃石膏ボード」「電線・銅管」などを分別し、リサイクルできるものを確実に取り出します。そのためのバックヤードスペースとスケジュールを確保することが大切です。きちんと分別できれば、内装工事でのリサイクル率100%を実現することも可能です。
株式会社船場では、オフィスの解体時の廃棄物を再資源化しやすいよう、工事現場で発生する建設混合廃棄物を8品目に分別。
気候変動や新型コロナウイルス感染症など、急激に変化する社会情勢に対応するために、これからの企業には、より一層持続可能な経営方針が求められます。SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)によって企業と社会の持続可能性を同期化することは、社会的責任を果たしながらビジネスを展開するための、重要な手段です。
従来の経済成長モデルでは、短期的な利益追求が優先されがちでしたが、これからは、企業が環境や社会に対して責任を持つことでこそ、投資家や顧客からの評価が高まり、資本市場での競争力を高めることができるのです。また、SXを通じて、企業の評判や認知度、ブランド価値が向上することで、新しいビジネスチャンスを創出する可能性も広がります。
いまや、企業がステークホルダー(従業員、その家族、顧客、取引先、投資家、地域社会など)からの信頼を獲得し、長期的な成長を実現するためには、SXの戦略的な導入が必要不可欠といえるでしょう。
今回ご紹介した、長く使える家具を選ぶ、まだ役割を残しているものは捨てずに資源として循環する、といった取り組みは、一見小さなことのように感じるかもしれません。しかし社会課題を自分事にするためのほんの少しの工夫が、未来(のより良い社会と企業の発展)につながります。「SX時代」におけるこれからの企業価値をアピールするためにも、まずはオフィスづくりで企業の積極的なSX化を体現してみてはいかがでしょうか。
オフィス構築にあたってサステナブルの観点も取り入れたいけれど何をすればいいかわからない、という場合は、ぜひ本記事でご紹介した6つのアイデアをご参考ください。
これからのワークプレイスを考える際、サステナブルであるためには環境配慮だけでなく、より幅広い視点が必要となります。SX時代の変化に気づき、価値を築くことができる「次の100年をつくるワークプレイス」をテーマに、コクヨ株式会社と「エシカルデザイン」を手掛ける株式会社船場で、共同レポート「SXWP(Sustainability Transfoemation Workplase)」を発信いたしました。サステナブルについてより広く考えてみたいという方は、ぜひこちらのページをご覧ください。
編集協力:株式会社船場
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