ご担当者の声
●業務継続への課題意識について
業務が出来なくなる状況については、これまでの震災や火災のほか、昨今の新型コロナウィルスによるパンデミックへの対応など多岐にわたります。それらを経験する中で、ペーパーレスとABW(モバイルワーク含む)のほか、柔軟に配置を変えられる可変性家具の検討は新庁舎整備において重要な要素となっています。
ペーパーレス化は単なる紙文書の電子化ではありません。働き方において「場所を選ばない」だけでなく、これまでの紙媒体に比して、災害による破損・焼失などを防ぐことができ、業務継続を可能とします。さらに、新型コロナウィルスがきっかけで社会にもたらした働き方であるテレワークやABWを可能とします。
加えて、可変性のある家具を導入することで、刻々と変化する状況や業務の内容に応じて、フレキシブルなオフィス展開を可能とし、業務継続性を高める要素となります。このように、市役所として市民サービス維持(・向上)という課題に対応するだけでなく、平常時・非常時問わず、さまざまなシーンに対応できることを意識して整備してきました。
●「Smart Itami」の実現に向けた職員像について
「Smart Itami」は、来る人口減少社会における生産年齢人口の低下によって生じる人員・人材不足への対応と、市民サービスの維持・向上の両立を目的としています。「Smart Itami」では労働生産性の向上を求め、職員が自身で考え、政策形成を行うことを目指しており、その実現に向け、①超勤レスでスマートな働き方を実現し、②ペーパーレスでスマートな職場環境を構築し、③キャッシュレスでスマート決済の導入に取り組みました。
目指す職員像としては、市民サービスの根幹である「現場主義」であること。それに加えて、変革に対応すべく、「既成概念に捉われない自由な発想をすること」を求めています。そのためには、目の前の業務から将来に向けて「自身で考える」力を日頃から養うことが必要となり、そういった力は日常の中で、「考えたことをプレゼンテーションする」ことや「コミュニケーションとネットワーク」によって養われると考えています。当然に、その手法としては「デジタルを道具として普通に扱える」ことが前提となります。新庁舎に生まれ変わることによって、職員が生き生きと働くスマートな職場と市民サービスの向上が実現し、未来に向けて選ばれるまちとなることを期待しています。
●建築特徴について
新庁舎は未来型の庁舎として整備しました。免震構造やライフラインの多重化など、BCPを向上させたことに加え、抗菌・抗ウィルス仕様の内装材や換気量の充実といった新型コロナウィルス対応など、安心して利用できる庁舎になっています。そして「共に創る」をテーマとし、市民や障がい者団体とディスカッションやワークショップを重ね、誰でも利用しやすいユニバーサルデザインを実現する庁舎となっています。
さらに、将来に向けたグリーン社会の実現として、床面積2万㎡を超える大型庁舎では西日本で初めて「 ZEB Ready 」に認証されたほか、地元県産材の木材を活用することや建設地に植えてあったクスノキを保存、利活用するなどグリーン社会が求めるカーボンニュートラルとサスティナブルを体現するグリーン庁舎となりました。
さらに、デジタル技術の活用により「待たなくていい」「書かなくていい」「行かなくていい」をコンセプトにしたスマート窓口を実現するほか、デジタルサイネージによる情報発信や自治体施設では全国初となる無人決済コンビニを導入するなど、未来型のスマート庁舎となっていると自負します。
このように、さまざまなアイデアと技術、共創によって建設された庁舎は、夢と魅力があふれる庁舎となりました。まだ生まれたばかりの建物はこれから、これまでの文化や歴史を継承しつつ、新しい時代に向けて成長し続けるものとなります。そして、利用される市民にとって「普段使いのできるリビングのような市役所」となるように、どんどん使い尽くして、より魅力的な市役所となってほしいと考えます。
-
伊丹市
総合政策部 デジタル戦略室 主幹(新庁舎等整備担当)
中西 寛氏
-
-