仕事のプロ
2016.06.07
ワーキングマザーにやりがいのある仕事を!
ワークスタイル情報/女性総合職の新しい働き方
もっと自分らしく、自信を持って働きたいワーキングマザーに向けて、様々なワークスタイルを紹介するワークスタイル情報編。
今回は、どんなライフステージにあってもイキイキと働き続けたいと願う女性を支援する人材紹介会社『Waris』の共同創業者である田中美和さんにお話を伺いました。
- フルコミットか、離職か・・・
100%か0%かを問われる日本の働き方 - 男性に比べ、女性の場合はライフステージの変化が働き方に与える影響は大きい。結婚、出産、育児など、どれも女性が変化を求められることが多いからだ。これは今も昔も変わらないことだが、男女雇用機会均等法が制定されて以来、女性も総合職として男性と渡り合って働くような時代は変わってきた。しかし、働き方は変わっても、ライフステージに対する対応の遅れは未だに根深くある。たとえば、育休制度や時短制度など企業内の制度は整いつつあるものの、育休や時短をとりづらいという女性がまだまだ多いのも現状だ。
- 田中さんは、前職で出版社に在籍し、働く女性をターゲットとした雑誌制作を行っていたという。そこで、キャリア女性延べ3万人以上の声に触れた。「出会った女性たちの多くが、結婚や出産、育児などのライフステージの変化に翻弄され、働く環境や時間、仕事内容などに悩まされていました。キャリアを積み、仕事へのやりがいを感じて、さらなる高みを目指している最中にリタイアしてしまう方も数多くいらっしゃいました。正社員だと働く場所も時間も拘束されてしまい、物理的に働き続けられない、時短勤務だと責任ある仕事を任せてもらえず納得がいかないなどといった理由で、辞めてしまわれる方も。日本ではまだまだ100か0かの働き方が主流ですが、そうではない、もっと女性がやりがいをもって、フレキシブルに働ける環境をつくりたい、そう思うようになっていきました」と田中さんは訴える。
- 「女性の働く環境をもっとよくしたいと思って雑誌をつくっていましたが、どうしても間接的にしかサポートできない歯がゆさがありました。そこで米国認定のキャリアカウンセラーの資格を取得したんです。その後、出版社を退職し、フリーランスで執筆するかたわら、個別カウンセリングも行っていたところ、女性の働き方について同じように危機感をもった米倉史夏と河京子と出会い、起業に至りました」と田中さんは笑顔で話す。3人の想いが重なり、大きな原動力となって女性の働き方を変える、布石づくりが始まったのが今から3年前。
- 文系総合職にフォーカスし
仕事のやりがいと多様な選択肢を女性に! - 「じつは、弊社の成約案件の約7割が業務委託というフリーランス契約です。プロジェクトごとに契約するといったらわかりやすいでしょうか? 」と田中さん。フリーランスというと、イラストレーターやカメラマン、ライター、プログラマー業などのクリエイティブ系やIT系の仕事を思い浮かべてしまうが、意外と文系総合職的ジャンルも引き合いがあるのだという。
- なぜ文系総合職に着目したのかと問いかけてみると、「弊社に登録されている会員は現在2600名以上いらっしゃいますが、マーケティングや営業、PR、人事などの専門的分野でお仕事をされてきた文系総合職の方が多いんです。登録されている方の平均年齢も38歳とちょっと高め。でも裏を返せば、38歳ということは、23歳で正社員として就職した場合、15年ほどのキャリアがあるわけです。この培ってきた専門的キャリアをライフステージの変化で終えてしまうのはとてももったいないと思うんです。けれど、人材派遣では一般事務職の求人は多く、大手の人材紹介では総合職の仕事はあるものの、ある程度の残業を前提とした社員案件が主で場所も時間も長期間にわたり拘束されてしまう。今までの市場には、文系総合職の「仕事の質は変えずに柔軟に働き続けたい」という女性のニーズに合った働く場所がほとんどなかったんです。でも、ないからといってそのままにしていては何も変わらないし、女性が活躍できる世の中にはなっていきません。そこで、キャリアを活かしながらフレキシブルな働き方ができないかと、企業側にヒアリングを重ねるうちに、けっこうニーズがあることがわかりました。
- 時代もあるのかもしれませんが、ベンチャー企業や中小企業の中には、一から手取り足取り教えて人材を育てている余裕がない場合もあります。そこでは、すでにキャリアを持ち、すぐに動いてくれる人材が必要に。『広報のできる人が今欲しい』だったり、『人事のシステムを見直したいので人事のわかる人を補強したい』だったりと、一定期間内で、即戦力が欲しいというニーズがみえてきたんです。そこで、固定化された働き方ではなく、フレキシブルに働けるキャリアのある方を紹介できれば、と考えました。能力があり、仕事をきちんと終えられれば、週3日出勤でOKだったり、週1回の定例会議だけ出席すれば後は在宅勤務も可能という企業もあるんです」
- 文系総合職で経験とキャリアを積んだ女性たちが能力を発揮し、ライフスタイルに合わせて働ける環境を見出したWaris。さらに、「弊社で登録の女性たちを対象に"働き方について"のアンケートを実施したところ、一見、結婚や出産、育児、介護などが要因で会社を辞められているように見えるのですが、総合職でお勤めだった方ほど、仕事へのやりがいや対価を求める傾向にあり、仕事への不満に後押しされて辞めていることがわかりました。でも懸念されるのは、一度会社を辞めてしまうと、育児などが落ち着いてから・・・と思っていても、復帰が難しくなってしまうという部分。このアンケートからも、キャリアダウンせずに、やりがいはありつつ、フレキシブルに働ける場というのはとてもニーズがあることがわかったのです」と田中さんは話す。
- また、働き方を変えたい女性はライフイベントに関わらずいることもわかっている。Warisには現職(フリーランスを含む)を持ちつつ登録している女性が約6割いるという。これは、NPOやNGO団体での仕事と両立させたい、または大学院に行きながら週3回くらい働きたい、サイドビジネスをしながら働きたいなどが主な理由だという。「ライフイベントとは関係なく、人生を豊かに過ごしたいというようなワークライフバランスを重視される女性も増えていると感じます。このような女性たちが、しなやかに働き続けるためには、キャリアを活かしながらフレキシブルに働くことで、プライベートと仕事を両立できる環境を整えることが急務なのだと強く実感しています」
- 働くことの価値観が
変わる世の中へ - Warisが得意とする、文系総合職の業務委託という新しい働き方。育児や介護をしながら新しい働き方をするのは不安もあるかもしれない。けれど、「弊社ではご登録者と面談を行い、その方の強みはどこなのか、どんなお仕事をされてきたのかなど、細かなカウンセリングをしています。そのカウンセリングを元に企業とのマッチングをしています」と、女性経営者ならではの細やかなサポートも万全だ。
- 創業3年目を迎えたWarisだが、女性の登録が圧倒的に多いなかで、最近ではフレキシブルに働きたいという男性の登録者も増えていると田中さんは言う。「業務委託という働き方は、女性はもちろん、プライベートとのバランスを上手くとりたいという男性にも魅力的なのだと思います」。男性にも新しい働き方が浸透してくれば、女性の働き方もより理解され、活躍できる時代になるのかもしれない。これからの時代、ガツガツと朝から晩まで仕事ばかりするのではなく、効率とやりがい、仕事に対する対価のバランスをとりながら働ける、働き手が働き方を選べる日がくるのもそう遠くないかもしれない。
株式会社Waris
どんなに環境が変化しても、誰もが自分の能力を生かしてイキイキと働き続けられる社会の実現を目指し、2013年設立した文系総合職のキャリア女性に特化した人材紹介会社。
文/長田和歌子 撮影/曳野若菜