仕事のプロ
2017.04.12
日本的な人材の流動化を促進する企業間『レンタル移籍』〈前編〉
企業の課題を解決し、社員の成長を促す新たな出向スタイル
会社に在籍しながら、期間を定めて他社のプロジェクトなどに参加できる。企業間の『レンタル移籍』サービスを手がけている株式会社ローンディール。政府主導により「働き方改革」が進められるなか、今後加速していく人材の流動化の一役を担ったサービスとしても注目を集めている。同社代表取締役社長の原田未来さんに、サービスの仕組みや目的などについてお話を伺った。
大企業とベンチャー企業、
互いの課題を解消できるマッチングが実現
2015年にサービスをスタートすると、大企業(出向元企業)からベンチャー企業(受入(もしくは出向先)企業)へのレンタル移籍が1つの流れとして生まれた。これは、原田さんにとっては嬉しい誤算だったという。
「わたし自身、ベンチャー企業で働いていたこともあり、当初はベンチャー企業同士の人材交流を想定していたので、大企業からオファーをいただいたときは驚きました。ただ詳しくヒアリングしてみると、大企業もテクノロジーの進化やグローバルによる競争激化により、成長が鈍化して、イノベーションの創出が急務になっているという課題を抱えていました。それも、現場の業務や既存の研修だけでは解決できない課題のため、『オープンイノベーション』が求められていたのです」
大企業は、新しい価値を生み出したり、現状に変化を起こせるポテンシャルのあるイノベーション人材の育成方法として、このサービスに多くの期待を寄せているのだ。さらに、これまでは『事業創造』というテーマで、経営企画部やイノベーション推進部などからの問い合わせが大半だったが、最近では『働き方改革』という背景もあって、どのように人材を育てるかという課題を持った人事部からの相談も増えているという。
一方、受入側であるベンチャー企業にとっては、このサービスにどのようなメリットを感じているのか?
「ベンチャー企業は『慢性的に人が足りない』『採用力がない』という大きな課題を抱えています。しかし、事業を推進させていくためには、当然優秀な人材にきてほしい。その点、大企業に在籍している人材は、研修なども含めて組織の中でしっかりと経験を積まれており、お客様への対応なども申し分ない。また、自分たちでは手の回らない業務を任せられるという利点もあります」
"レンタル移籍"というオープンな出向制度は、大企業、ベンチャー企業双方にとって、自社だけでは解決できなかった課題の改善に寄与できるサービスであり、働き方の変革が求められる今後においては、ますます注目される制度といえるだろう。
後編では、"レンタル移籍"で得られる個人の成長や具体的な事例についてお聞きする。
原田 未来(Harada Mirai )
株式会社ローンディール代表取締役社長。小売業者向け卸サイトを展開するITベンチャー企業にアルバイトとして入社し、部長まで昇進。その後、さらなる成長を目指して大手ベンチャー企業に転職し、新規事業に携わる。しかし、自身のキャリア構築を通じて、オープンな人材交流の場の必要性を感じ、2015年9月に「レンタル移籍」サービスをスタート。現在は、参加企業の拡大や出向者の成長のサポートに注力している。新たな働き方・人材開発の手法として注目を集めており、セミナーやイベントなどでの登壇も多数。