仕事のプロ

2020.06.10

『チェンジ・マネジメント』

働き方改革を根付かせるための考え方とは

働き方改革に取り組む企業が増えてきました。働き方を変えるには、オフィスのレイアウトを変えたり在宅勤務を取り入れたりと様々な方法があります。組織の中で変革を起こすということは、手段を導入した後にしっかりと定着させることが重要です。

今まで慣れ親しんだやり方に固執する社員も少なくなく、働き方改革が思うように進まない、定着しないということはどの組織でも起きうる問題です。チェンジ・マネジメントとは、変化はコントロールできるという視点に立ち、組織内で起こる抵抗や軋榛などチェンジ「変化」をマネジメント「管理・統制」する考え方です。
 
ワークサイト7号で取材したオランダの電力会社エッセントでは生産性向上を主な目的とし、時間と場所を自由に選択できる働き方を導入しました。従来の固定席を止め、在宅勤務を推奨、出社する義務をなくしました。当然ながら導入には相当苦労したそうです。いつでもどこでも社員が働けるということは、自分の上司・部下・同僚が目の前にいないことを前提に仕事を組み立てる必要があり、今までの目の前の部下に業務を与えて管理する伝統的なマネジメントのスタイルから脱することがポイントでした。

マネジャーの役割を「仕事は進んでいるか」「何をやったか」「いつ終わるのか」など細かくチェックすることから、仕事の中身よりも「体調は大丈夫か」「時間は足りているか」「この人と共同でやったほうがいいかも」と、仕事全休の大きな流れを注視し、全体の中で個々がしっかり機能しているかどうかを見るスタイルへと変えました。
 
変化に対し組織で伺が起ころうとしているのかを見極め、理解すること。社員と共に経験を積み、学習すること。そこから継続的に改善をすること。これを根気よく繰り返すことによりエッセントは働き方改革を実現させました。結果、エッセントは生産性が約15%向上し、社員の病欠も20%削減、社員の満足度も向上したそうです。

金森 裕樹(Kanamori Yuki)


働き方と学び方を研究するコクヨの研究機関「ワークスタイル研究所」研究員。ワークスタイル情報メディア「ワークサイト」副編集長として雑誌・webで情報発信している。

オフィスのチカラ vol.10より転載