仕事のプロ
2020.09.25
キャリアって何ですか?
「どう生きたいか」を考えること
コロナ禍をきっかけに、自分のキャリアを見つめ直す人が増えています。キャリアというと、「自分には誇れるキャリアがない」と考える人も少なくないようです。編集長つぶやき記事第3弾は、キャリアを形成していくにあたって、まずは「キャリアとは何か」考えてみたいと思います。
- コロナ禍で
キャリアについて改めて考える人が増加 - コクヨでは2020年5月、ポストコロナに向けた働き方の変化を探るために、約3000人のワーカーに向けてWEBアンケートを実施しました。その中で興味深かったのが、キャリアに関する内容です。
- 「自分らしい生き方や働き方について深く考える機会が増えた」「仕事とプライベートのバランスを深く考える機会が増えた」と答えた人が、それぞれ全体の40%以上もみられたのです。
- 確かに私自身も、半強制的な在宅ワークをするようになってから、今後のキャリアについて考えることが増えました。「ニューノーマル」や「新しい生活様式」といった言葉が日々メディアで躍るのを目にする中で、気がつけばいつも「今までと同じ自分でいいのかな?」と自問しています。
- キャリアとは
「どう生きていきたいか」の道しるべをつくること - ところで、「キャリア」という言葉に対して、どんなイメージをお持ちですか? 一般的には、「仕事の経歴」「専門的なスキルを必要とする職業」などの意味で使われることが多いようです。
- しかし、「career」を英和辞典で調べると、「生涯」といった意味もあることがわかります。仕事だけではなく、プライベートも含めた人生まるごとが「キャリア」というわけです。
- 私は数年前にキャリアコンサルタントの資格を取得して以降、「キャリアとは何か」を考え続けています。そして現時点では、キャリアを「『自分がどんなふうに生きていきたいか』の道しるべをつくっていくこと」だと考えています。
- キャリアビジョンは「描いて終わり」ではなく
常に自分に問いかけるもの - さて、就職活動や企業の1on1では近年、次のような問いかけがたびたび聞かれます。「あなたのキャリアビジョンは?」
- 「キャリアビジョン」とは、「自分のありたい姿や現時点で描いている将来像」といったイメージです。人材育成や学校のキャリア教育においても、このキーワードはよく登場するようになってきました。
- キャリアという言葉はこれまで、経歴や経験など「どう生きてきたか」を指すことが多かったように思います。ところが最近は、過去はもちろん、現在も未来も含めた人生観として語られることがあります。その流れから「キャリアビジョン」という言葉も、注目ワードとして使われるようになったのです。
- でも、「あなたのキャリアビジョンは?」と聞かれてすぐに答えられる人がどれだけいるでしょう。社会の変化を予測するのが難しいこの時代に、明確なキャリアビジョンを語ることは困難だと思います。就職活動などの場面ではその時点での答えをひねり出さなければならないかもしれませんが、本当の答えは、常に自分に問いかけていくものではないでしょうか。
- 「何を楽しいと感じるか」+「楽しいと感じる理由」を
少し深く考えてみる - 希望する職業や組織での役職は思い浮かべやすくても、「どう生きたいか」となると、なかなかありたい姿を描くのは難しいかもしれません。そこでおススメしたいのが、「何をしている時に楽しいと感じるか、ワクワクするか」を思い出し、さらに「なぜ楽しいのか」まで考えてみることです。
- 例えば、「お客さまにじっくりヒアリングしている時に楽しさを感じる」といった小さな喜びに目を向けてみたらどうなるでしょうか。そこから「お客さまのお困りごとを引き出すことがやりがいになっている」と深めて考えることで、その部分をさらに追求していくキャリア形成の手がかりをつかめます。
- もちろん、「会社の中でステータスを上げたい」などストレートな希望もアリです。その場合も、「なぜ上の役職を望んでいるのか? 上がると何があるのか?」と自問します。ポイントは、周りの評価を気にせず自分の気持ちを正直に見つめて「譲れない価値観(大切に思っていること)」を探ることです。
- 仕事だけでなく、例えば「ラジオの相談コーナーが好き」「アレンジレシピを考えるのが楽しい」など日常のちょっとしたことも拾って、理由を考えてみるのもよい方法です。また、興味あることにどんどんトライしてみて、楽しいと感じたらその理由を少しだけ突き詰めてみるのもおススメです。
- 「一緒に行った人との相性がよかったのか」「その場所が気に入ったのか」「やってみた内容が楽しかったのか」など、いろいろな可能性が考えられるはずです。その中から、自分の気持ちにしっくりくるポイントを探ってみましょう。
- 「楽しい」を観察・分析することで
自分らしいキャリアの原動力が見つかる - キャリア形成に必要な要素は、「能力(できること)」「動機」「価値観」の3つといわれています。能力を身につけることは後からでも可能です。しかし動機や価値観は、努力してつかむものではなく、自分を深く観察・分析することで初めて見えてくるもの。動機や価値観は、「楽しいこと」「ワクワクすること」「やっていると時間を忘れること」からつくられるものであるはず。ですから、自分の行動を振り返ることで、キャリアの原動力を見つけられるのです。
- 自己分析の方法はいろいろあります。自分の「楽しい」を見つめ直すところから、「どんな生活をしたいか」「何にこだわって生きていきたいか」などキャリアへの道しるべをつくっていく方法もある、と思うと、少しキャリアを描くことに対して"楽しく"なってきませんか?
河内律子
(Kawachi Ritsuko)
WorMo'編集長、キャリアコンサルタント(国家資格)。ワーキングマザーの働き方や学びを中心としたダイバーシティマネジメントについての研究をメインに、「イノベーション」「組織力」「クリエイティブ」「キャリア」をキーワードにしたビジネスマンの学びをリサーチ。その知見を活かし、「学び」をテーマとする働き方コンサルタントとして活動中。
構成・横堀夏代