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ビジネスに役立つ哲学
働くということは
ビジネスに役立つ哲学2:何のために働くのか
なぜ私たちは働くのだろうか? 人生の選択肢はいろいろはるはずだが、深く考えることなく、学業が終わると社会に出て働く。そして働き始めてから「この仕事が好きか?」「この仕事は自分に向いているか?」「何のために働いているのか?」と考え、悩む瞬間が誰にでもあるはずだ。
※「ビジネスに役立つ哲学」の連載では、作家でありモラリストでもある大竹稽氏が、フランスの哲学者になりきって、現代の迷い、悩めるワーカーにメッセージを送ります。
あなたの仕事は、まずなにより生きること。そしてその仕事は、あなた自身の分別や知識や体験によってなされなければならない
わたしの仕事は生きることだ。あなたの仕事も、まずなにより生きることなのだ。わたしの仕事はわたしの人生を表現している。わたしの仕事で他人の人生を表現することはできないのだ。 わたしの分別、わたしの体験、わたしの性分、わたしの知識、わたしの習慣など、わたしの一切がわたしの仕事を構成する。もしそれらを禁じられたら、わたしの仕事にならないだろう。 あなたの仕事もまた、あなた自身の分別や知識や体験があればこそ。他人の知識や技術を借りていては、あなたの仕事も、あなたの人生も、借り物になってしまうだろう。 わたしには、ワークライフバランスという考え方はまったく不要だ。なぜなら、わたしのワークはわたしのライフでもあるからだ。つまるところワークライフインテグレーションというところだろう。 わたしは、国王の侍従もした。ボルドーの市長もした。自分の館で主人としての仕事もしている。『エセー』という書物も書いている。わたしは旅が好きで、特にイタリア旅行をする。それらすべて、わたしのワークでありライフだ。それらすべてを通して、あなたはわたしを知ることになるだろう。 わたしもまたあなたを知るには、あなた自身のワークライフに触れなければならない。借り物の仕事をしていてはだめだ。あなたはあなたの仕事をしようじゃないか。だいじょうぶ、自然はわたしたちにちゃんと力を与えてくれている。(モンテーニュ)
仕事そのものを学びとし、その学びを積み重ねれば、あなたにしかできない仕事ができるはずです
仕事には二種類あります。一つは学びという仕事、もう一つがミッションという仕事。まずミッションという仕事は、自ら望んで手に入れられるものではありません。突然、向こうからやってくるのです。 わたしは数々の発明や発見をしてきましたが、それらは学術的名声を獲得しようとして達成したものではありませんでした。突如として、それをしなければならなくなった。すなわち発明が私のミッションで、ミッションだから成し遂げられたのです。 しかし、このようなミッションは人生で何回もあるものではありませんし、こちらから目指すものではないのです。ですから「いずれミッションはくる」という心構えだけはしておきましょう。 日々の仕事として求められるのは学びという仕事です。いや、むしろ仕事と学びを分けず、仕事そのものを学びとしてしまいましょう。 そのとき従事している内容自体は誰にでもできることかもしれませんが、学びはあなただけに許されたものなのです。学びを積み重ねれば、きっとあなたにしかできない仕事ができるようになるはず。この「自分にしかできない仕事」こそ、天がわたしたちに贈るミッションなのですから。(パスカル)
仕事とは自由でなければならない。自ら主体的でありつづける自由だからこそ楽しむことができる
まず、あなたに伝えたい。仕事とは自由でなければならない。だがこの自由というものを勘違いしてはならない。なんでも好き勝手に選べるというものではない。無限の可能性があるというものでもない。自由というのは主体的であり責任があるということだ。 さて、いまのあなたの仕事ぶりはどうだろうか? だれかの責任にしてしまうような仕事の仕方ではないだろうか? それは自由な仕事ではない。 さらに、自ら主体的でありつづける自由だからこそ楽しむことができる。おそらくあなたが「仕事ってなんだろう? 」と悩んでいるのは、仕事がつまらなく苦役のようなものに感じているからではないだろうか? アリストテレスという哲学者は「真の音楽家は音楽を楽しむものであり、真の政治家は政治を楽しむものである」と言っている。つまり、真に仕事をする人は仕事を楽しむのだ。「真に仕事をする」というと観念的になってしまうが、なによりも主体的かつ責任ある自由であるかどうかである。 むろん自由には困難がつきものだ。むしろ仕事の半分以上は困難が占めているといっても過言ではないだろう。だがこの困難におけるあなたの状況を振り返ってほしい。もしこの困難を他の誰かに責任転嫁してしまっていたら、ぐっと立ち止まってみよう。そして深呼吸してコリをほぐそう。迷ってばかりでは道は見つからない。待っていても道は見つからない。待つ人はみずからを不幸のオリに閉じ込めているのだ。 「自分にふさわしい仕事ってなんだろう? 」と迷うなかれ。体をかるーく動かすことで迷いが取れることが多い。深呼吸して手をぶらぶらさせ体操したり、散歩したり、体のしこりを取ろう。そうすれば思考のしこりも取れるだろう。 さあ、ここからがあなたの一歩だ。あなたの自由な一歩を踏み出そうじゃないか。(アラン)
大竹 稽 (Ootake Kei)
教育者、哲学者。1970年愛知県生まれ 旭丘高校から東京大学理科三類に入学。五年後、医学と決別。大手予備校に勤務しながら子供たちと哲学対話を始める。三十代後半で、再度、東京大学大学院に入学し、フランス思想を研究した。専門は、カミュ、サルトル、バタイユら実存の思想家、バルトやデリダらの構造主義者、そしてモンテーニュやパスカルらのモラリスト。編著書『60分でわかるカミュのペスト』『超訳モンテーニュ』『賢者の智慧の書』など多数。東京都港区や浅草で作文教室や哲学教室を開いている。
大竹稽HP https://kei-ohtake.com/
思考塾HP https://shikoujuku.jp/