仕事のプロ
2014.05.21
チーム営業でクライアントに安心感を
Vol.11 「ママタメ」でママ視点の企画を発信
株式会社アミューズ
ビジネス開発部 ビジネス開発室所属 主任
島川真紀子さん
所属アーティストのライブやコンサートに協賛やタイアップを取るなどの営業として活躍する傍ら、社内プロジェクトでママのための交流会を企画する「ママタメ」のメンバー。新1年生の男児の母で、現在第2子を妊娠中。
インタビューアー/WorMo’編集長 河内律子(3歳児のワーキングマザー)
- 1つの仕事を2人で担当する
営業スタンスを定着 - ――株式会社アミューズは、サザンオールスターズや、福山雅治さんといったアーティストが所属するエンターテイメントプロダクション。私たち一般人にはちょっと遠い世界ですが、どんなお仕事をされているのでしょう?
- 私の仕事は、企業と直接取引をする営業職です。クライアントのニーズを把握して、アーティストやコンテンツを紹介させてもらい、ライブ・舞台の協賛案件から、タイアップ作業、新規事業に至るまで、幅広く行っています。私の場合はめずらしく異動がなくずっと同じ部署にいて、もうすぐ10年目になります。
- ――お仕事の幅がすごく広くて、お忙しそうですね。それだけの量のお仕事を何人ぐらいで担当していらっしゃるんですか?
- 私の他に営業が4名とデスクさんが1名の合わせて6名。その内3名が女性ですが、会社全体でも女性6割に対して男性4割と、女性率が高いんです。ただ私が担当する営業職の残り3人はすべて男性。仕事は彼らのフォローに頼ることが多いですね。メンバーにはパパもいて、お腹の大きい私に「大丈夫?」と気を遣ってくれ、感謝しています。
- ――理解ある同僚、うらやましいです。でも営業職だとクライアントに合わせて時間が不規則になりがちでは?出張や保育園からの急な呼び出しなど、仕事面ではどんな工夫をされていますか?
- 同じ部の営業職男性メンバーには、案件ごとにペアを組んでもらうようお願いしています。これは会社の制度ではなく、自分で考えた、いわば"保険"のような体制で、上司にも必要性を説明して納得してもらいました。たとえば地方出張が多い案件は、ペアの方に出張に行ってもらうなど、仕事の内容に合わせてペアの相手を決めて、情報共有と仕事の分担をしています。クライアントとの打ち合わせにも一緒に出てもらうと、先方も安心してくださいますね。もちろん、事前にスケジュールがはっきりしていれば、調整して自分が出張に行くこともあります。でもこうして、周囲が日々、理解し協力してくれていることに、本当に恵まれていると思っています。
- ――私のイメージですと、エンターテイメントの会社と聞くと、24時間仕事に拘束されるイメージがあるんですが。
- はい、みなさんから「そんな忙しい業界で、ママは働けるの?」と心配されます。でも会社全体では60%が女性で、その中の約10%がママ社員。みなさん、さまざまな部署に所属し、活躍されていますよ。私の場合は、19時スタートのイベントや公演が多いので、仕事を終えると翌日になっていることもありますが、両親や夫の協力でなんとか乗り切っています。
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- ――お子さんに「帰りが遅い」などと言われたりしませんか? 私は、3歳の息子に先日初めて「(お迎え)が遅い!」と怒られてしまいました(苦笑)。
- 夜や週末が仕事のときは、息子にその理由を毎回伝えています。最近は、息子も私の仕事をわかってくれているようで、テレビのCMを観て「ママのお仕事だ」と言ってくれるので、すごく励みになりますね。ただ1年ほど前、ある案件の協賛関連の仕事を担当している時に、帰宅するのが連日夜中の2時や3時ということがあったんです。すると普段、何も言わない息子に「そろそろママと夜ご飯を食べたいな」と言われて...。ショックでした。
保育園のお迎えは、夫や祖母が手厚くフォローしてくれていたんですが、私を待っていたんですね。それからは仕事をセーブしたり、自宅で仕事することで早く帰ったりして、息子ときちんと向き合う時間をつくって、ハードな時期を乗り越えました。
- ママ社員がもっと輝くための
社内プロジェクト「ママタメ」 - ――そうした激務の中、一方では働くママの視点を生かしたプロジェクトを社内の有志で立ち上げていらっしゃるそうですね。
- はい。ママのためのエンターテインメントを企画する「ママタメ」のメンバーなんです。入社当時はほとんどいなかったママ社員も、今では全体の10%ほどまで増えました。私が最初の育児休業から復帰したあたりから、子育て支援制度も段々と整ってきて、そんな中「育児の両立って大変だよね」、「限られた時間内で、どうやって業務を上手くこなしてるの?」というママ社員同士の日々の会話をキッカケに、「ママタメ」プロジェクトが立ち上がりました。「せっかくだから何か仕事に繋がる企画に」と考えた有志たちで、月1回のランチ会から始めて、ゆるく続けて約4年になります。"ランチ合コン"と呼んでいますが、相手はいろんな業界や企業のママで、社員や現場の方々から役員の方まで、仕事の話を中心に今では10社以上とお昼時間を活用して情報交換しています。
- ――「ママタメ」で実際に企画されたイベントもあるんですか?
- 年に2,3回ですが、たとえば音楽業界なので、アーティストとの音楽イベントなどを企画しました。親子で参加できるライブなどもやりましたが、一方で本業のビジネスとは全く違うものと接する、いい機会にもなっています。ゲストのママで衆議院議員の小渕優子さんに話を聞く機会もありました。また、プロのヘアメイクさんから時短メイクを伝授してもらったり、顔のリンパマッサージをみんなで習得なんてことも(笑)。こうした交流で世界が広がり、また私自身の元気もチャージできています。
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- ――異業種交流や市場調査もできる「ママタメ」活動も含めて、子どもがいることで仕事のクオリティが上がったなどということはありますか?
- こういう業界だとママは戦力外と見られがちです。ただ私の場合は、社員で母親という目線で、会議に新しい風を吹き込めている気がします。「託児所付のミュージカル公演」や「こども用の玩具について、ママがどう考えているか」など、母親目線の意見にも耳を傾けてくれています。でも、すべてのママ社員が、母親であることを活かせる環境で才能を発揮できているわけではないと思います。だからこそ「ママタメ」のような取り組みをきっかけに「ママだから会社に居づらい」というネガティブな発想とは逆の「ママの強み」を確立できるような仕組みができればと考えています。ワーキングマザーみんなが胸を張って仕事ができ、企業全体のパフォーマンスも上がる環境が理想ですね。
- ――キャリアアップについては、どう考えますか?
- 昨年の頑張りを上司が見ていてくれ、主任になれましたが、目指せるところの限界はあるかもしれません。でも、目標にしたい役職の先輩ママがいて、また私の姿を見て、社内にママでも進める道があると思ってくれる女性たちもいる。もちろんすべてが完璧じゃなく、育児も家事も仕事も80点という中途半端な状態です。ただ、1つが80点でも3つ足せば240点!?そんな考えで、何とかなると思ってやっていきたいです。
- ――もうすぐ産休ですね。楽しみにされていることはありますか?
- 産休・育休に入っても、休み前に手がけた仕事は気になるし、イベントなどがあったら、きっと見に行ってしまうと思うんです。やっぱり仕事が好きなので。でも、この春から小学校に進学した息子のことも、新しい環境になじめるかしばらくは心配。産休で家にいてあげられるので、息子のそばにいて支えてあげたいと思っています。なによりも、息子と赤ちゃんとの生活がすごく楽しみです。
- 【イベントのお知らせ】
『ママタメジャンボリー ~サエラと歌おう!楽器を作ろう!』 -
WorMo’とママタメが贈る、親子で参加できるイベント企画「ママタメジャンボリー」!第一弾は、サエラによる親子向けミニライヴと交流会。こどもたちはワークショップで楽器作りにチャレンジ、できた楽器でサエラと一緒に演奏します。さぁ、みなさん、サエラと一緒に歌って、楽器を作りましょう!ファミリーでのご参加、大歓迎です! ご来場、お待ちしております。
- 日時:2014 年6月1日(日)14:00-16:00
会場:エコライブオフィス品川
詳細はこちら>> -
島川さんの ある1日
6:00 起床→朝食準備や洗濯など 8:00 朝食後に小学校に送り出勤 9:00 出社
スケジュール確認やメールチェック10:00 打ち合わせや会議 11:00 チームミーティングやクライアントへのアポ取り 12:00 マネージメントの進捗状況の確認 13:00 ランチ 14:00 スポンサー企業への訪問(2社程度) 17:00 資料づくり、制作会社との連絡・報告・相談 18:00 帰宅準備(業務が終わらない日は夫や両親が学童にお迎え) 19:00 夕食準備→夕食→洗濯 21:00 いったん、息子と就寝 22:00 一度起きる→夫の食事の準備 23:00 会社のメールチェックなど 24:00 就寝
取材を終えて
エンタメ業界=ハードワークというイメージどおり、とても忙しそうな島川さん。大きなおなかを抱えて、なおも精力的に活動される姿を見て、母は強しっ!と感じました。ワーキングマザーの働き方として、限られた時間をより効率的に、より効果的にというだけでなく、働く相手(パートナーやクライアントなど)に「安心感」を高めてもらうという視点は、とても新鮮で説得力がありました。
第一線で働く営業職には、クライアントを常に意識した働き方が求められているんですね。職種によって配慮すべきことの優先順位が異なるということを実感した取材でした。(河内)
文/三宮千賀子 撮影/ヤマグチイッキ