仕事のプロ

2016.04.08

「仕事」がなくなるその前に身につけるべきスキルとは? 〈後編〉

“創造的な仕事”ができる人材への道を切り開く

前編では、これからの時代に求められる“創造的な仕事”をするためには、“目的”を軸にものごとの仕組みや構造を考え、組み立てる“構想する力”が必要であることを紹介した。後編では、“目的”の部分に焦点を当て、引き続き紺野登先生に伺った。

目的と行動との結びつきが
人を動かす力になる

目的あっての実践が重要だということには前編でも触れた。さらに、成功しているプロジェクトには「目的に階層がある」という共通項があると、紺野先生は述べる。

 

「ものごとを進める際には、究極には共通善を目指す大きな目的を追求しつつ、個々の小目的に結びつけることが重要です。大目的だけでは、人は自分の日常に結びつけられず、実践に移せません。一方、目先の小さな思いだけではつまらないし、おもしろくないと、意欲は生まれません。そこで重要なのが真ん中の「中目的」あるいは駆動目標です。目的群に階層を設け、自分が今やっていることが中目的の達成にどう貢献し、最終的には大目的の達成にどうつながるのか、その結びつきが明確であればあるだけ、末端の人まで動かす力が強くなるのです」

 

その古典的成功例が、JRの東海道新幹線だ。「日本経済の大動脈をつくる」という大目的のもと、「東京と大阪を”3時間”で結ぶ夢の超特急」を「東京オリンピックまでに完成させる」と期限を決め、そのためにはいつまでに何をどうすればいいのかと小目的を結びつけていった。技術者をはじめ各部門の担当者たちは、大目的を見据えたうえで、それぞれに課せられた小目的を達成するために、自分の持つスキルを最大限に生かす努力をした。実は新幹線はよくいわれるように技術革新でなく、既存技術の組み合わせだった。こうして、関係者が一丸となって目的に向かった結果、東海道新幹線という日本が誇る東西バイパスができ上がったのだ。

 

「目的(purpose)と目標(objective)は異なります。本来は軸となる目的があったうえで目標を設定するものですが、目的よりも目先の目標に重きが置かれる傾向があります。目的を見失うと、組織も人も、衰退の一途をたどります。とくに、決断力や実行力が求められるシーンでは、東海道新幹線の例のように、究極の目的をしっかりと見つめ直すことが大切です」

 

 

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紺野 登 (Konno Noboru)

博士(経営情報)。多摩大学大学院教授(知識経営論)KIRO(知識イノベーション研究所)代表。一般社団法人Japan Innovation Network 代表理事、慶應義塾大学院SDM研究科特別招聘教授、東京大学i.schoolエグゼクティブ・フェロー、日建設計顧問。 都市開発プロジェクトやワークプレイス・デザインなどにかかわるとともに、FCAJ(Future Center Alliance Japan)では、数多くの企業が参加するコ・クリエーションの場をマネジメント。また、イノベーションに関する多くの書籍も出版している。

文/笹原風花 撮影/ヤマグチイッキ