ロジカルシンキング

2016.04.06

ビジネスで伝わる話し方

ロジカルシンキング1:論理的に話す方法を身につけよう

ビジネスのあらゆる場面では、「相手に伝わる話し方」をすることが重要です。そして、事実や意見を確実に伝えるには、論理的に話すことが求められます。論理的な話し方をするために押さえておきたい、論理的に話すコツを3つご紹介します。

ビジネスでは「相手に伝わる話し方」をすることが大切

上司への報告や社内メンバーへのメール、会議での発言など、ビジネスの多くの場面では、情報や思いを「相手に確実に伝える」ことが求められますが、そのためには論理的な話し方がポイントになります。

なぜ論理的に伝えることが大切なのでしょうか? なぜなら、報告や連絡、指示、説明、交渉、提案、トラブル対応などビジネスの多くの場面では、伝えて終わりではなく、相手に納得してもらうことが重要だからです。

自分が話した内容に対して相手に納得してもらうには、論理的に考え、説得力のある結論を構築するスキルが必要になるのです。



論理的な話し方とは

論理的に話すことができれば、相手の理解・納得を得やすくなり、正しい判断を下す、今後の対応策が立てる、といったことがスムーズになります。また、あなたへの信頼度がアップするといったメリットも期待できます。


■論理的に話せる人・論理的に話せない人

上司に報告を行うときや、会議で発言するときに「もっと論理的に話して」と言われたことはありませんか? このようなダメ出しに対して、「どう話せばいいのかわからない」と戸惑う人が多いかもしれません。

論理的に話せない人は、すべての情報を相手に伝えようとして、長々と話しがちです。しかし、「正しい情報を話すこと」と「論理的に話すこと」はイコールではありません。

では、「論理的に話す」とはどのようなことでしょうか? 一言で言えば、「伝えたい内容を明確化し、正しい筋道を立てて話す」ことです。難しそうだと思うかもしれませんが、ポイントを押さえれば誰でも簡単に論理的な話し方をマスターできます。


■論理的に話せる人・話せない人の決定的な違いとは

論理的に話すために必要なポイントは3つあります。話の「結論」、その結論に至った「理由」、そして結論と理由の「つながり」の3つです。

論理的に話せる人は必ず、この3つのポイントを押さえて話しています。逆に言うと、3つのうち1つでも欠けている要素があると論理的な話は成立しません。

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論理的に話す3つのコツ

論理的に話すためのポイントは、「結論」「理由」「つながり」の3つです。ここからは実際の会話事例を見ながら、それぞれのポイントを話の中に入れ込むコツを確認しましょう。


➀「結論は何か」を明確にする

論理的な話をするときに最も大切なのが、「この話の結論は何か」を自分の中で明確にしておくことです。「結論」とは、話の論点に対する答えです。「主張」や「自分の意見」と言い換えてもいいでしょう。

論理的でない話は、理由や状況の説明ばかりで結論が不明確になりがちです。このような話し方だと、自分の意図を相手がくみ取ってくれるとは限りません。その結果、相手が誤った判断をしてしまうこともあります。

〈状況だけ伝えて「結論」がない会話の例〉
部下:「明日の工場からの出荷が間に合わなくなったと連絡がありました」
上司:「だから? 結論は?」

上司が推測した結論
結論A:私に客先に謝りに行ってほしいのかな?
結論B:自分で謝りに行くのかな?
結論C:私に工場に交渉してほしいのかな?
結論D:自分で工場に交渉するのかな?

〈結論がなくても問題ないシチュエーションの例〉
仕事上のコミュニケーションでは、多くの場面で「結論」が求められます。ただし、結論が必要ないコミュニケーションもわずかながらあります。情報交換やアイデア出し、悩み相談などです。

例えば情報交換のときには、「最近、関西では〇〇〇〇が売れているらしいよ」「そうなんだ、東京ではむしろ△△△△が流行っているけどね」といったやりとりが交わされます。この場合は情報を交換することに意味があり、「結論は何だっけ?」などと必ずしも考える必要がありません。

アイデアを出し合うときも、いちいち「そのアイデアが一番よい結論か? 本当に論理的か?」と考えていては自由に発想できません。だから、結論は必要ではないのです。

悩み相談にしても、相手から理屈っぽいアドバイスをされると、相談を持ちかけた側は辛いと感じることもあるのではないでしょうか。

ビジネスにおけるコミュニケーションでは、「結論が必要か」を意識しておくと、「論理的に話すべきかどうか」を判断しやすくなります。

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②「理由」を明確にする

結論の信頼度をより高めるには、結論に至った「理由」もセットで伝えるのがコツです。理由とは、結論を導き出した根拠や原因のことです。

理由を明確に伝えることで、「この結論は論理的思考に基づいて出しました」と強調することができます。逆に理由を伝えないと、相手は「この結論は説得力に欠けるな」という印象を持つことになります。その結果、相手は話に納得できず、その後の対処方法などを決めかねてしまいます。

〈「理由」がない会話の例〉
部下:「今日の工事の完了、ムリだそうです」
上司:「なんで?」

部下が言うべきだった理由の例
理由A:職人さんが3人とも病欠で、人手が足りないからです
理由B:他の業者とトラブルがあって、工事が止まっているからです

部下が伝えた理由によって、上司は例えば次のような対処法をとることができます。
対処A:私が交渉して、別の職人さんを応援に駆けつけさせるよ。
対処B:私が現場に出向いて、話し合ってみようか。

話の中に何らかの結論(主張や意見)とそれを支える理由(根拠)を入れ込めば、誰でも簡単に論理的な話ができます。漠然と話し始める前に、自分が伝えたい結論と、そこに至った理由を確認しましょう。


③「結論」と「理由」をつなげる

話の中に「結論」と「理由」がきちんと盛り込まれていても、内容が論理的とはいえないこともあります。それは、結論と理由とがうまくつながっていないからです。

つながりが悪い原因としては、「理由が抽象的で客観的な根拠が不足している」「理由と結論との間に確かな因果関係がない」などが考えられます。

また、例えば「A(理由)だからB(結論)」といったシンプルな話なら相手にも伝わりやすいでしょう。しかし、「AだからB、BだからC、よってA(理由)だからC(結論)」のように順を追って結論を導き出した場合には、相手にいきなり「AだからCです」と説明しても理解してもらえません。

理由と結論の因果関係を明確にし、考えたプロセスなども踏まえて伝えればつながりがわかりやすく、相手が理解しやすくなります。

〈「結論」と「理由」がつながっていない会話の例〉

部下:「新商品の発注先ですが、一番需要を見込めそうなA社にお願いすることにしました」
上司:「どんなメリットがあるの?」

上司は次のように根拠を推測しなければなりません。
根拠A:A社なら低コストで発注できて、新商品の価格が抑えられるからかな?
根拠B:A社の商品はデザイン性が高いからかな?
根拠C:A社の商品は高品質で故障しにくいからかな?
根拠D:A社とは付き合いが長くて実績があるからかな?

ビジネスシーンでは、結論を支えるために客観的な根拠が複数必要となる場合が多く、結論を導き出した理由が1つとは限りません。

複雑な内容を説明しなければならないときは、ロジックツリーなどを活用して「結論」「理由」「つながり」という3つのポイントを押さえ、論理的な話し方を目指しましょう。



ビジネスで伝わる話し方
その他のポイント

「結論」「理由」「つながり」を話の中に入れ込めば、論理的な話し方はできます。しかし、より的確に伝えるためには、話し方そのものにも工夫が必要です。

ここで参考になるのが、プレゼンテーションで話すときのテクニックです。ちょっとしたジェスチャーをプラスしたり、声の出し方を意識したりするだけで、あなたの話がぐっと伝わりやすくなります。


■態度

話をするときに大切なのは、相手の様子を見ながら進めることです。表情や態度を見て、「うまく伝わっていないな?」と感じたら、ちょっとしたジェスチャーを入れたり、その場で簡単な図を描いて説明したりすると、相手が内容を理解しやすくなります。


■声

声の出し方やボリューム、話すスピードも、「伝わりやすさ」に影響します。必ず心がけたいのは、語尾をはっきり言うこと。語尾が尻すぼみだと、相手が聞き間違える場合もあり、話の内容が正確に伝わらなくなってしまいます。

また、話すスピードも大切です。相手の理解が追いついていないように見えたら、スピードを落としたり、少し声のボリュームを上げたりして調整しましょう。


「結論」「理由」「つなぎ」の3ポイントを押さえたうえで話し方に工夫すれば、伝わりやすさは確実にアップします。話す練習を繰り返したり、同僚にフィードバックをもらったりしながら、少しずつ伝えるスキルを高めていきましょう。


下地 寛也(Shimoji Kanya)


コクヨ㈱入社後、行動と環境(創造性、コミュニケーション、場のあり方等)に関する研究・分析を担当。2003年より、クライアントの企業変革のコンサルティングや研修コンテンツ企画を担当する。著書『コクヨの3ステップ会議術』(中経出版)、『コクヨの1分間プレゼンテーション』(中経出版)、『コクヨの5ステップ ロジカルシンキング』(中経出版)、『コクヨの「3秒で選び、2秒で決める」思考術』(中経出版)、『コクヨのコミュニケーション仕事術』(総合法令出版)



イラスト/フクイヒロシ