ロジカルシンキング
2017.09.06
聞き手が納得できる「理由」とは?
ロジカルシンキング8: 納得感のある理由を組み立てる
理由が不適切でないか
常に意識しよう
自分としては、しっかりと結論に理由を添えて説明しているつもりなのに、なぜかうまく伝わらない。そのような場合には、結論を支える理由が不適切な可能性があります。次の3つのパターンに、なっていないか注意してみましょう。
① 理由が「個人的な思いや感想」になっている
例:(結論)「絶対ノルマは達成できるはずです」
(理由)「私は彼らに期待しているので」→ 根拠のない個人的な思い
② 理由が「言葉の裏返し・言い換え」になっている
例:(結論)「子ども服市場に参入すべきです」
(理由)「これまで参入してこなかったので」→ 単なる結論の言い換え
③ 因果関係が曖昧になっている
例:(結論)「わが社はIT企業です。もっと服装を自由にしましょう」
(理由)「業績がよいIT企業は服装が自由な会社が多いです」
→「服装の自由度」と「業績」の因果関係がよくわからない
いずれも一見もっともらしいようですが、確固たる理由になっていません。意識していないと、つい陥ってしまうパターンなので注意しましょう。
理由は3つ程度に絞り
納得感が出るまで深掘りを
誰かを説得するとき、結論を支える理由は多いほうがいいと考えがちです。しかし、論点と結論のあと、ダラダラと多くの理由を並べると、聞き手にとっては話のポイントが見えにくくなります。似たような情報はできるだけ整理し、理由を3つ程度にまとめて提示すると、聞き手は理解しやすくなります。
ただし、理由を3つに絞っても、それらに説得力がないと聞き手は納得できないもの。そんなときは、3つの理由を補強する「理由の理由」をプラスします。
最初に挙げた3つの理由を1段目の理由とすると、それを支える2段目の「理由の理由」には「事実(数字、データ、過去の事例など)」をもってきます。それでも納得感が出ないなら、3段目に「理由の理由の理由」を加えて結論を補強します。聞き手の納得感がえられるまで、理由を深掘りすることが大切です。
事実や専門家の意見で
理由を補強しよう
理由は、基本的に「数字やデータ」「一般常識」「事例の積み上げ」といった事実をもとにつくるべきですが、こうした事実は、すべて過去のもの。しかし、ほとんどの結論や提案は「未来をどうするか」という内容です。過去からの連続性がある未来であれば、過去の事実がそのまま続く前提で、未来について理由づけをしても信頼性が高いといえます。
例えば、「(過去の事実)日本の出生率はここ10年間1.2~1.4%の低いレベルで推移しているので、(未来の結論)今後の日本の人口は低下していくでしょう」という話にもある程度の信頼性がもてるでしょう。
一方、過去の数値やデータだけでは心もとない、不確実な未来を予測するケースもあるでしょう。そんなときは、「専門家の意見」を集め、理由づけする方法がおすすめです。
例えば、「(専門家の意見)マーケティング専門家の多くがダイバーシティ関連の需要が今後増えるという予測をしています。(未来の結論)我が社でもその分野の商品の可能性を検討すべきだと考えています」。もちろん、実際のマーケティング専門家がコメントしている記事やデータを集める必要がありますが、不確実な未来に対する主張をする場合はこのような方法がいいでしょう。
最後にもうひとつ、理由を組み立てる際に注意したいのは、理由と結論の間の距離。
「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざのように、二つの距離が離れすぎていると、聞き手は何の話かさっぱりわかりません。
例えば、(理由)「お客様の課題が部門間の連携不足」だから
(結論)「フリーアドレスのオフィスを提案しよう」
これだけでは、聞き手は理解しにくいですが、次のように理由と結論の間を埋めてみると、話が明確になります。
(理由)「お客様の課題が部門間の連携不足」だから
(間の理由)「他部門の人と気軽に話ができればよい」だから
(間の理由)「席を固定せず、自由に座れるようにすればよい」だから
(結論)「フリーアドレスのオフィスを提案しよう」
このように、常に聞き手の立場や求めている情報を推測しながら結論と理由を組み立てていくことで、聞き手を十分に納得させることができるのです。
下地 寛也(Shimoji Kanya)
コクヨ㈱入社後、行動と環境(創造性、コミュニケーション、場のあり方等)に関する研究・分析を担当。2003年より、クライアントの企業変革のコンサルティングや研修コンテンツ企画を担当する。著書『コクヨの3ステップ会議術』(中経出版)、『コクヨの1分間プレゼンテーション』(中経出版)、『コクヨの5ステップ ロジカルシンキング』(中経出版)、『コクヨの「3秒で選び、2秒で決める」思考術』(中経出版)、『コクヨのコミュニケーション仕事術』(総合法令出版)