ロジカルシンキング

2017.05.24

あなたの話、正しく伝わっていますか?

ロジカルシンキング6:話の論点を明確に伝える

話をしっかり聞いてもらえないのは、
“つかみ”で失敗しているから

「ところで、君は何が言いたいの?」
上司から、そう指摘されたことはないでしょうか。

自分の考えを理解してもらうには、まず「これから何について話すのか=論点」を聞き手に伝えることが重要です。「話し手が何を言っているのかわからない」という場合、話の論点が曖昧になっているケースがほとんど。論点を明確にするには、次の2つを聞き手に伝えることがポイントとなります。

今どのような«状況、背景»なのか
その状況に対する«問い(問題や疑問)»は何か

例えば「残業時間を減らす対策」について話したいとき、「残業についてですが...」と切り出しても、残業のどんな点について話したいのか、聞き手はさっぱりわかりません。
「残業」とひと口に言っても、残業時間や残業の仕方など、その内容はさまざま。「残業時間を減らす」という論点を明示したいなら、次のように「状況」と「問い」をセットで伝えることが重要です。

●今の状況、背景 → 「最近、若手の残業が極端に増えています」
●状況に対する問い → 「彼らの残業をどのように減らしていくかですが...」

このように、問いの前に「状況や背景」を述べることで、話し手と聞き手に共通の土台ができ、聞き手はスムーズに話に入っていけるのです。


聞き手の予備知識に合わせて
話の切り出し方を変えよう

状況・背景を述べるときも、ちょっとしたコツがあります。それは問題点から一歩引き、相手が知っている一般的な情報から話し始め、少しずつ焦点を絞っていくこと。専門的な知識が豊富な人ほど最初から焦点を絞り、専門用語を多用して聞き手を混乱させがちです。例えばITに関する話なら、相手次第で、次のように「状況」と「問い」が異なります。

●ITに詳しい聞き手
「(状況)B to C向けのSNSをビジネスで使うときは、常にセキュリティが話題となりますが、(問い)企業はどのような対策をとるべきでしょう」

●ITに詳しくない聞き手
「(状況)フェイスブックやツイッターなどのSNSは企業向けにつくられていないため、セキュリティ対策が十分とは言えません。それでも多くの企業からB to C向けのSNSをビジネスに活用しようという動きが出ています。(問い)そういった企業は、どのようなセキュリティ対策をとるべきでしょう」

このように、話をするときは聞き手の予備知識に応じて、問題点からどこまで引いた位置まで戻って、状況の説明をするべきなのかを考える必要があります。聞き手が理解できる状況から話を始めることで、共通の前提に立ってもらえるのです。



下地 寛也(Shimoji Kanya)


コクヨ㈱入社後、行動と環境(創造性、コミュニケーション、場のあり方等)に関する研究・分析を担当。2003年より、クライアントの企業変革のコンサルティングや研修コンテンツ企画を担当する。著書『コクヨの3ステップ会議術』(中経出版)、『コクヨの1分間プレゼンテーション』(中経出版)、『コクヨの5ステップ ロジカルシンキング』(中経出版)、『コクヨの「3秒で選び、2秒で決める」思考術』(中経出版)、『コクヨのコミュニケーション仕事術』(総合法令出版)



イラスト/フクイヒロシ