仕事のプロ

2020.05.15

在宅ワークで体が痛い!

座る環境を整えてストレスの少ない在宅ワークを

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策で在宅ワークを開始された方の中には、リビングやダイニングで仕事をしていると体が痛くなり、オフィスで何気なく座っていたオフィスチェアーのありがたさを痛感している方も多いのではないでしょうか。そもそもなぜ在宅ワークでは体が痛くなるのか。またどうしたら、その痛みを減らすことができるのか…それら理由と対策法についてご紹介します。

なぜ在宅ワークでは
体が痛くなるのか?

オフィスチェアーは「集中して仕事をする」ために、「アップライト姿勢」と呼ばれる、骨盤を前傾させて背骨のS字を整えた座り方ができるようにつくられています。一方、リビングチェアーやダイニングチェアーなどの家庭で使われる椅子は、「リラックスして歓談する」ことを主な目的に、座面も少し後傾して「リラックス姿勢」を自然と取れるようにしています。また、座る時間もオフィスチェアーほどの長時間は想定していないので、クッションも薄めになっています。

在宅ワークでは、パソコンに向かっている時間が多くなり、なおかつ立ち上がったり歩きまわったりする必然性も減り、長時間同じ姿勢になりがちです。このような状況で、「アップライト姿勢」で行うべき「パソコン作業」を、薄いクッションのイスに座り「リラックス姿勢」で行っていることが体に負担となるため、『在宅ワークで体が痛くなる』のです。中には、お尻が痛くなるという声もあります。それはリビングチェアーのクッションは比較的薄い、ということが起因しているといえます。

また、ノートPCはモニターの位置が低いので、覗き込む姿勢になってしまいがちで、頭が前へ垂れてしまい、肩こりや首の痛み、ストレートネックなどの原因にもなってしまいます。

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ダイニングチェアーで
PCワークを快適に行うには?

ポイントは、猫背にならないようにすることです。家にあるもので、体への負担を減らす簡単な方法を2つご紹介します。

1つは、座面の後ろ側に座布団やクッションを置いて少し高くすることで、骨盤が前傾するようにサポートし、背骨のS字をつくって猫背にならないように工夫することです。もう一つは、背もたれ側にクッションを置いて腰をサポートすることで、猫背を防ぐという方法もあります。

どちらか一つ、かまたは両方を試してみて、猫背にならず自然なS字になるよう調整してみてください。クッションなどの硬さは、骨盤が前傾したS字の姿勢をしっかりとつくるには硬めがオススメですが、お尻が痛くならない適度な柔らかさも必要なので、自分にあったちょうどよいバランスをご自身で見つけてください。S字がつくれているかどうかの感覚としては、立っている時のように、骨盤の上にしっかりと背骨が乗っている感じがつかめるといいかと思います。

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モニター画面の高さを最適に!

また、ノートPCで画面を覗き込むように頭が前へ垂れてきてしまう姿勢の改善としては、モニターの位置を目線の高さに近づけて頭が前に垂れない姿勢をつくることが重要です。ノートPCの下に、本などを置いて調整してみてください。

あまり高くしすぎるとキーボードを打つ腕に負担をかけてしまうことにもなるので、腕と首や肩への負担ができるだけどこかに集中しないバランスのいい高さをご自身で見つけてください。



外の光を感じられる場所で!

オフィスでは白色の蛍光灯が多いのに対して、ご家庭では赤みのある電球色を使用している場所も多いと思います。赤味のある電球色は夕方の太陽やたき火などの色と近く、リラックスするのに適した光です。

一方、仕事モードで脳をある程度覚醒させるためには、日中の自然光に近い白い色の方が適しています。直射日光が当たる場所はNGですが、外の光を感じられる場所を選ぶことで、朝の覚醒から夕方には徐々にオフモードに切り替わる、自然なリズムで働くことができるかもしれません。



適度に動くことも重要!

このように、PCワークに適した姿勢をつくれたとしても、同じ姿勢でずっと座っていると体への負担は増えます。座っている間も適度に体を動かすように意識したり、できれば、1時間に1回くらいは立ち上がって、ストレッチするなど、意識的に体を動かすことを取り入れましょう。



気づきを踏まえて家具選びを。

このような工夫をいろいろとしてみることで、自分の体に負担の少ない姿勢や働き方のリズムが見えてくるのではと思います。

今後在宅ワークはもっと普及すると言われていますが、これまで紹介した、働く姿勢の整え方やリビング家具をカスタマイズするポントなどをふまえたうえで、自分に合う椅子やデスク、PCスタンドやモニターなどの道具を選ぶことができれば、よりストレスの少ない在宅ワークが実現するでしょう。

コクヨでは、在宅ワークにも使えるさまざまなオフィスチェアーやデスクなども揃っていますので、
ぜひチェックしてみてください。



木下 洋二郎(Kinoshita Yojiro)


コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部 ものづくり本部 1Mプロジェクト


革新的なオフィスチェアーing を始め、オフィス家具全般の先行開発およびアドバンストデザインを担当。人間工学や脳科学の視点から行動観察を行い、デザインとエンジニアリングを融合した開発手法でコクヨのイノベーションをリード。ドイツReddot Design賞Best of the Best、ドイツiFデザイン賞金賞、グッドデザイン賞等、受賞多数。


イラスト/稲垣敬子