仕事のプロ

2020.08.12

コロナ禍の社員の心をつないだ10分セミナー

強制的な在宅ワークから生まれた新しいコミュニケーションのカタチ

新型コロナウィルス感染拡大を防ぐために発令された緊急事態宣言により、急遽在宅ワークへの対策に追われた企業も多いだろう。初動対策としては在宅で業務が行える環境を整えることが求められたが、緊急事態宣言が解除された現在でもこれからの働き方として、在宅ワークがオフィスワークとともに日常化してくる。そのような環境下で企業側も、またワーカー個人としても、よりよい働き方を実現する方法を模索している。
今回は、緊急事態宣言下での在宅ワークによるコミュニケーション機会の喪失やワーカーの孤立への危機感から、新しいコミュニケーションのカタチを模索し、光明を見いだした、コクヨ株式会社小笠原純女氏の取り組みを紹介する。
小笠原純女氏は、『スキルパーク』という人材育成ビジネスの責任者をする一方で、チームをマネジメントする立場にあり、組織力やチームビルディングに関心を持っていたという。

長引く在宅ワークで
帰属意識やモチベーションの低下に不安

新型コロナウィルス感染症拡大を抑えるために半強制的に行われた在宅ワーク。どのように過ごされていましたか? 「寂しい」「対面コミュニケーションがまったく無くなった」「時間ができたことで、自分の人生を改めて考え直した」「自己研鑽に時間を使った」など、いろいろな方がいらっしゃると思います。

私の仕事上の肩書は働き方コンサルタントです。特に「ビジネスパーソンのスキルアップ/モチベーションマネジメント」などをテーマにしたビジネススキル研修や組織力を高めるためのコンサルティングに携わっています。

それらの知見や、自身の育児休暇中の帰属意識の低下の経験などから、長期間「同僚に合わない・声を出して話す相手がいない・仕事以外の話(雑談)ができない」といったコミュニケーション量の低下は会社への帰属意識や、仕事へのモチベーションの低下につながると感じていました。

そのため、今回の緊急事態宣言による半強制的な在宅ワークは、一人暮らしや単身赴任をしている同僚にとってメンタルへの影響が大きいのではないか、ととても気がかりでした。

外出自粛中の在宅ワークによりコミュニケーションの機会が激減しただけでなく、業務によっては一時的に仕事が減った人も少なくありません。漠然とした仕事への不安と、それを相談できず一人で抱え込んでしまう孤立状態、さらに感染への不安もあいまって、仕事へのモチベーションや会社への帰属意識が低下することが危惧されました。

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スタートに迷いはなかった

私が携わっているビジネス研修は対面セミナーがメインのため、緊急事態宣言下で3密回避が必須のなか、人を集めて行うセミナーや研修の開催は難しい状況でした。とはいえ、業務は進めなければなりませんので、今まであまり着手できていなかった、自分たちの事業(ビジネス研修)の社内認知を高めるべく、営業担当者向けへの社内オンラインセミナーを企画。その会議の席であるメンバーの『10分くらいのオンラインだったら、みんな参加しやすいかな? 』というつぶやきが課題へのヒントになったのです。

私が課題に感じていた「在宅ワーク中の社員のモチベーションと帰属意識の維持」が、オンライン上に場所をつくることで解決できるのではないか......、『あそこに行けば、同僚の声が聞こえ、仕事の話が少しできる』そんな場所をオンラインでつくれるのではないかと思いました。

そこに、スキルアップという目的をプラスすることで、みんなが躊躇することなく、集まれるはず。こんな思惑の結びつきで生まれたのが『オンライン10分セミナー』です。30分足らずの会議で実施を決めたこの『オンライ10分セミナー』は、その日のうちに概要をかため、社内掲示板や各部署への広報を開始しました。

この企画をスタートした4月は、強制的な在宅ワークによってほぼすべての会議がオンラインになっていたとはいえ、業務外でオンライン会議システムが積極的に活用されていたとはいえませんでした。まして『オンライン10分セミナー』は参加者にとっては直接的な業務(営業活動)とは異なるテーマ『Gmail活用術』であったため集客は難しいのではないか、など懸念もありましたが、初回から50名近くの申し込みがあり、『オンライン10分セミナー』企画に手ごたえを感じることができました。



自然と生まれる雑談が
オンラインでもぬくもりを感じさせる

数字で計れる参加人数や満足度以外でも、『オンライン10分セミナー』の参加者から嬉しい声をたくさんいただきました。実は、このセミナーは、本当に「10分」だけ実施していたのではなく、オンライン会議になれない人のために本題のセミナー前に操作説明をしたり、セミナー後には質問コーナーを設けたりして、意図的に参加者同士のコミュニケーションの機会を多く設定していたのです。


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その結果、セミナー開始前には久しぶりに顔を合わせる同僚と「元気にしている? 」「久しぶりに会社の人と話したよ」「結構、寂しいもんだね、在宅ワークって」といった、雑談で盛り上がるなど、インフォーマルなコミュニケーションを楽しむ場面も多々見受けられました。また、今までつながる機会のなかった地方の社員とも知り合える機会にもなりました。





『オンライン10分セミナー』サービス

お客さまからの要望を受け、6月より『オンライン10分セミナー』をサービスとして提供開始。コンテンツ数をさらに増やし、お客さまの要望に合わせたコンテンツのカスタマイズも可能。詳しくは、コクヨの研修【スキルパーク】までお問い合わせください。





小笠原 純女(Ogasawara Junko)


コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント/一級建築士
建築学科卒業後、1998年にコクヨに入社。入社後10年ほどはモノづくり(文具開発、家具開発、働き方の研究、オフィス構築)に携わり、その後、ヒトづくり(人材育成、意識改革、働き方改革など)を中心にサービスを提供し、現在に至る。

コクヨの研修【スキルパーク】

コクヨの社内研修から生まれたコクヨの研修【スキルパーク】は、サービス開始から12年目を迎え、お客さまの要望に合わせてコンテンツを増やしながら働き方変革・人材育成のサポートを実施。お客様のニーズに合わせ、対面研修、オンライン研修、eラーニングなどさまざまなサービスを提供。kokuyo.jp/skillpark/