仕事のプロ
2020.12.24
今こそ求められる「ナレッジマネジメント」とは?〈前編〉
ナレッジの拡張・共有で生産性を高める
昨今、企業や組織におけるナレッジマネジメントの取り組みが広がりをみせている。ナレッジマネジメントの狙い、目的として、知(ナレッジ)の共創によるイノベーション創出への期待も高い。一方、ナレッジマネジメントの効果には、効率化・生産性向上という側面もあり、イノベーション創出同様に大きなインパクトがある。ナレッジの共有が効率化・生産性向上にどう効果的なのか、コクヨ株式会社ワークスタイルコンサルタントの吉澤利純氏に解説してもらった。
ナレッジマネジメントの効果
時間短縮・品質向上・スキル向上
まずは、資料やデータなど形のあるナレッジについて見ていきましょう。「表出化」「素材化」「血肉化」により、大きく3つのメリットがあります。
●資料作成の時間が短縮できる
●使い回すことで品質が高まる
●社員のスキル向上につながる
例えば、同じような資料を複数の人が別々にイチから作成している...という状況は、極めて非効率です。過去に作成された優れた資料を集めて整理し、誰もが見える状態、読める状態に「表出化」し、みんなが探して使えるよう「素材化」し、必要な人はそれらの素材を活用することで、資料作成の時間は大幅に短縮でき、また、アレンジして新たにアウトプットすることで自分自身の知として「血肉化」されます。
表出化:インプットした知識を資料にまとめる
素材化:資料のフォーマットをそろえる、資料の管理サーバーを整える
血肉化:他者の資料から学び、必要な部分は自分の資料に取り入れて新たにアウトプットする
また、その資料を複数の人が使い回すことで内容や表現がどんどんブラッシュアップされ、資料の品質向上につながります。さらに、資料を作る人自身の資料作成スキルの向上はもちろん、資料を活用する人は元の資料から多くを学ぶことができ、社員全体のスキルの底上げにもつながります。
その他にも、色やフォントの使い方などをルール化したりテンプレートを統一し、標準化することの効果も多々あります。デザインのルール化とテンプレート化で、見た目を整える時間を短縮し、最も大事な資料の中身をよりよくする時間を多く生みだせます。
また、トンマナがそろいデザインのクオリティが上がることは、企業への信頼度やブランド力にも関わってきますので、組織のイメージ戦略上の効果にもつながります。
ナレッジマネジメント成功のポイント
Give and Takeの精神で
多くの組織をコンサルティングしてきた経験上、難しさを感じているのが「表出化」の部分です。個人の持つノウハウや情報を他者と共有することに非協力的な人はどの組織にもいますし、貴重なものや専門性の高いものほど引き出しづらいと実感しています。
大事なのはGive and Takeの精神。みんなで出し合い共有することがお互いにとってメリットがある、という状態や空気をつくっていくことが大事です。
また、「素材化」の際にも注意が必要です。表出化したもののグループ内でしか閲覧できない、どこに保存されているかわからない...という状態では不十分です。
誰もが使いたいときに使えて「血肉化」できるよう、使える状態に整えてしかるべき場所に保存しておくことが重要です。
企業が扱う情報が大量になっている今の時代は、必要な情報を必要なときに即座に使えるようにしておかなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。さらに、こうして使ったら、これとこれを掛け合わせたらもっとよくなる(ナレッジを有効に活用できるよ)、というアドバイスをし合うことも大事です。
後編では、無形のナレッジのマネジメントを中心に、コロナ禍における変化や留意点について解説し、個人ができる具体的なアクションにも言及します。
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吉澤 利純(Yoshizawa Toshizumi)
コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
1級ファイリング・デザイナー/オフィスセキュリティコーディネーター ストア事業、営業、新規事業企画部門を経てワークスタイルコンサルティング部門に所属。 主に、ナレッジシェアリング構築のコンサルティング、オフィス構築、運用改善コンサルティングを担当し、お客様の働き方改革をサポート。