仕事のプロ
フリーアドレスのよくあるQ&A
フリーアドレス導入にまつわる疑問を一気に解決
フリーアドレスのよくある疑問・質問を、Q&A形式で紹介。席の使い方からマネジメントや収納など、フリーアドレス導入前の気になる疑問や不安について、コクヨのワークスタイルコンサルタントがアドバイスする。
席の使い方について
Q.コロナ禍の今、不特定多数の人が席を共有するフリーアドレスにメリットはあるのか?
A.感染対策として使用前後の席の消毒は必要ですが、出社状況が刻一刻と変化する現在のような状況下ではフリーアドレスのメリットが活きてきます。 すでにフリーアドレスを導入していた企業では、ノートパソコンやネット環境などのデジタル化(環境整備)によって在宅勤務への対応がスムーズで、出社の場合も席が選べる利点によって距離の確保や密集回避に柔軟に対応できました。またアフターコロナの働き方を考えても、多様な働き方への対応としてデジタル化はもちろんのこと、オフィスの環境と機能を柔軟にしておくことが危機対応への備えとしても有効ではないでしょうか。
Q.フリーアドレスといっても席が固定化してしまうのでは?
A.フリーアドレス導入の目的が社員に浸透していない、納得感を得られていない場合に固定化が起こりやすいです。例えばコミュニケーションの活性化としてさまざまな部署の人との関わりを増やすことが目的であれば、それをしっかり伝えることが重要です。意図が伝わっていなかったり、目的が不明確なままとりあえず導入してみた...というケースでは、いろんな席に座ってみるという動機づけがないため席の固定化が起こりやすいです。
Q.空いている席が見つからなかったらどうする?
A.席が見つからない原因として考えられるのは、席が探しにくい、席は十分あるが使える状態ではない、そもそも席数が足りないなどが考えられ、それぞれで対策が異なります。 空いている席を探す対策としては、予約制にする、位置情報を活用する、フリーアドレスのエリアが見渡せるよう遮蔽物を無くすなどが考えられます。席があっても荷物が置きっぱなしなどで使える状態でない場合は、社内でルールを設定するのが効果的です。例えば会議などで2時間以上席を空ける場合や外出して直帰する場合は、机の上にモノが無い状態にする「クリアデスク」を徹底するなど。座席数が足りない場合は、出張や在宅などを加味したうえで必要十分な在席率を算出する必要があります。
Q.上司の席の近くには誰も座りたがらないのでは?
A.上司の近くに誰も座りたがらないのは上司の方に「座りたくない」と思わせる要因があるのかもしれません。例えば威圧感があったり話しづらい雰囲気が出てしまっていると、自然と部下との間に距離が生まれてしまいます。 フリーアドレスの導入には空間づくりと同じくらい、ルール・運用の浸透や意識の醸成が不可欠で、常に近くにいないからこそ自分から働きかけるコミュニケーションスタイルに意識的に変えていく必要があります。 上司の方が、笑顔で積極的に話しかける、部下からの相談にできる限りはやくレスポンスする、話をよく聴き小さいことでも評価して褒めるなどを意識することで、相談や雑談がしやすい雰囲気が生まれ、部下も安心して近くに座れるようになるはずです。
Q.人が使った後は机が汚れていたり、片づけないで帰る人もでてくるのでは?
A.席を使った後は机の上にモノを残さない、汚れていたらきれいに拭く、といったルールを徹底してもらうことが原則です。席を共有するフリーアドレスでは、次の人が気持ちよく使えるようにしてから離席するのが最低限のマナーでもあります。 例えばコクヨでは、週に1回お掃除タイムを設けて、10分間原則全員で、拭き掃除や出しっぱなしの物を片づけるなど、みんなが気持ちよく使える環境をみんなでつくろう、という取り組みを行っています。
マネジメントや人材育成について
Q.席が自由だと新人のOJTができないのでは?
A.新入社員や中途入社、異動者などフォローが必要な方は、期間を決めて固定席にしたり、OJTリーダーとペア席にしたりするなどの運用がオススメです。また、周りの仕事の仕方を見たり聞いたりしながら自然に覚えてほしい、部に馴染んでほしいという場合は、チームや部門のエリアの中で自由に座るグループアドレスも効果的です。席の移動が自由なフリーアドレスだからこそ、状況に適した座り方(席の配置)がより柔軟にできます。 コクヨでは20年ほど前からフリーアドレスを導入していますが、新入社員を集めて一定期間固定席として固めて「フレッシャーズシート」を設定し、その席にいる新入社員は部門横断で、みんなで育てていくという取り組みをしていたこともあります。
Q.部下のマネジメントが大変になりそう。
A.マネジメントのスタイルを変えていく必要があります。フリーアドレスでは部下を管理するのではなく、与えた仕事に対してどんなサポートが必要かを考えて働きかける必要があります。部下の様子が見えないからこそ、自分から見に行くことが求められるのです。 また、何かあった時に相談したいと思える関係性や、話しかけやすい雰囲気づくりも大切です。 部下も同様に働き方や意識を変える必要があります。固定席では、状況を察した上司や同僚の方からサポートしてくれる場面もあったと思いますが、フリーアドレスでは、まずは自分で考えて判断し、状況に応じて報告や相談の方法やタイミングも考えるなど、能動的に行動することが大切になります。 上司も部下も意識を変え自律的に関わっていく必要があり、そこにフリーアドレス導入の大きなメリットがあるとも言えます。
Q.本当に社員が自律的になるの?サボってしまうのでは?
A.フリーアドレスは自由だと捉えがちですが、自由は自律的・自発的に働いて初めて与えられるものです。 社会の変化が激しく予測が難しい今の時代、言われたことだけでなく自ら考えて行動できる自律的な人材が求められています。フリーアドレスでは、「今日は集中業務だから落ち着ける席に座ろう」「業務を効率的に行うため、連携している〇〇さんの近くに座ろう」、といったことを一つひとつ考えて行動する必要があります。考えて選択することを毎日繰り返すことに意味があり、自律的な行動へとつながります。
Q.部やチームの一体感が失われるのでは?
A.放っておくと帰属意識や一体感は失われてしまいがちです。さらにテレワークを併用している場合はチームメンバーとすら顔を合わせる機会がなくなり、孤立につながるリスクもあります。まずは、会社のビジョンが部やチーム、自分の仕事とどう繋がりどんなゴールをめざしているか、部やチームで議論・共有することを心がける必要があります。そして意識的に会う機会をつくることです。 例えば週1回、チーム全員が集まって座り、雑談もしながら一緒に仕事をする。チームビルディングに力を入れたい場合は、グループアドレスでゆるやかに集まって座るなど。こういった工夫には「自分たちの居場所はここだ」と感じられる効果もあります。また、物理的な場所だけでなく、上司から承認されるなど人間関係で「自分の居場所がある」と感じられることも帰属意識につながります。 また、フリーアドレスというとバラバラになるイメージがありますが、用途によって柔軟に集まることができるという良さもあります。今日はプロジェクトで集まって座る、チームで曜日を決めて集まるなど、目的に合わせて自由に集まって座れるのがフリーアドレスのメリットでもあります。コミュニケーションやチームビルディング、共創を意識した席選びもフリーアドレスでは可能なのです。
Q.席が近いだけで偶発的なコミュニケーションは本当に活発化するの?
A. 知らない人やあまり親しくない人が隣に座ったとして、それだけでは偶発的なコミュニケーションは生まれません。新しい価値を生み出す目的でフリーアドレスを導入したある会社では、社内ルールとして「挨拶をする」ことを大切にしていました。まずは挨拶をして話をするきっかけをつくり、そこから少しずつ会話を重ねていくことで徐々に関係性ができることを狙ったわけです。 コクヨでは、挨拶を心がけるのはもちろんですが、会話が生まれるきっかけとしてロッカーに自分の趣味の写真などを貼ったりする取り組みもしています。また自席の無いフリーアドレスではモノは個人ではなく共有することが基本になるため、例えば共有本棚や共有文具置き場などもコミュニケーションが生まれる場として重要な役割を担ってくれます。
フリーアドレス導入に向けて押さえておきたい基礎知識 メリット・デメリットや成功のポイントとは
コロナ禍で働き方が変化している今、注目されているフリーアドレス。導入のメリットがある一方でデメリットへの不安から社員の反発も起こりやすい。導入の効果を見極め、失敗しないために押さえるべきポイントやABWとの違いなど、具体的な疑問への回答もふまえて成功のポイントを紹介する。 https://www.kokuyo-furniture.co.jp/solution/mana-biz/2022/01/post-633.php
所在確認について
Q.オフィスフロアが複数階あるとメンバーを探すのが大変になるのでは?
A.位置情報で所在を示すアプリなどもありますが、まずは上司や同僚と共有しているスケジューラー(予定表)に自分がどこで何をしているのかわかるように予定を書いておくことが原則です。社内か外出か、作業中か会議中かなどが判断できるように書いておくといいでしょう。拠点が複数あったりフロアが複数階ある場合は「品川オフィス6階」など拠点名を入れるなど、少し詳しく記載しておくと親切です。
Q.テレワークとフリーアドレスを併用する場合、所在確認や連絡手段にどんな工夫が必要?
A.マネジメントの観点から部下の所在を確認したいという場合は、スケジューラーを部下と共有し、所在や業務を確認できるようにしておくといいでしょう。一方、テレワークやフリーアドレスの運用では所在確認以上に連絡手段をしっかりと確保しておくことが重要になります。そのためにも、電話、メール、チャットなど複数の連絡手段をもっておくこと、そしてそれらを緊急性や重要度にあわせて柔軟に使い分けるといいでしょう。 くわえて、上司や同僚と共有しているスケジューラーに予定を入れるルールにしておけば、相手の状況が把握できるので、返信がこない...、会議中なのに...といったストレスを感じなくてすみます。 例えばコクヨでは「あいさつチャット」を取り入れています。これは部内で始業、終業、中抜けするときに発信するルールで「これから始業します、品川オフィス6階」「新幹線で大阪に移動中」などと発信することで、グループメンバーの所在や行動、忙しさなどをなんとなく把握できる、というメリットがあります。
導入に向けて
Q.社員が少ないとフリーアドレスをやる意味がないのでは?
A.コミュニケーションを活性化したいなど、フリーアドレスを導入する目的があれば、会社規模や人数に限らず意味はあると思います。例えば現場サポートの強化を目的に、隣の部署の仕事内容も把握して繁忙期もお互いに補完できるようになるためにフリーアドレスを取り入れた企業もありました。 またフリーアドレスにして固定席を減らし、コミュニケーションスペースや集中スペースといった多目的なスペースを設置。業務に合わせて働く場所を選択できるようするなど、スペースの有効利用を目的として導入するケースもあります。
Q.導入に向けて上司や反対する人をどう説得すればいいの?
A.何か新しいものを取り入れる際、一定数の反対は避けられません。ただし、あまりにも反対が多い場合は、導入の目的が明確に伝わっていない、デメリットばかりでメリットが正しく伝わっていないという可能性があります。反対する人を説得するというよりも、目的を説明して理解してもらうこと。そしてフリーアドレスだからこそ実現する新しい働き方やチャレンジしてみたい働き方などを各自で考えてもらうこともとても大切です。 フリーアドレスと聞くと、「自席がない=居場所が無くなる...」とデメリットが先行してしまう場合がありますが、「なくなる」ではなく「選べるようになる」と、考え方を変えてもらう。そのためにも、「働き方をこう変えたい」「こんな働き方にチャレンジしたい」といったフリーアドレスの良さを最大限に活かした新しい働き方をイメージしてもらうこと。フリーアドレスを前向きに捉える意識変革がカギになります。
Q.適正な席数はどれくらいに設定すればいい?
A.出社率などの数字を把握し、日・週・月によって数字が大きく変動していないかに注意が必要です。例えば月曜日の午前中と金曜日の午後、月末は出社率が上がるなど、変動する時期と理由を把握したうえで必要な席数を設定することが重要です。 また固定席は減らしても多目的スペースなどを含めれば全員座れる、オフィスだけでなくサテライトオフィスやコワーキングスペースなども含めて席数を確保するなど、どこでスペースを確保するのかも考えておく必要があります。
Q.在宅と出社のハイブリットな働き方の場合、フリーアドレスの運用はどうすればいい?
A.在宅と出社を組み合わせて働くABWに近い働き方の場合、遠隔でも報告・連絡・相談をうまく回す仕組みを整えることが大切です。 また、在宅との併用の場合、出社の目的が「チーム内コミュニケーションを取る」といった集まるニーズが高くなるため、全員が集まって座れるように予約制にして、スペースを確保できる仕組みも有効です。 ただし、すべてのスペースを予約制にすると柔軟な働き方ができなくなるので、予約なしで自由に座れる席も確保しておくといいでしょう。
Q.コロナ禍におけるフリーアドレスのデメリットとその解決策は?
A.コロナ禍のオフィスでは「距離の確保」「密集・接触の回避」「換気・衛生面への配慮の徹底」「非接触・飛沫の遮断」「対面や接触を避けられる動線」などの感染対策が鉄則となります。 フリーアドレスのデメリットとしては、不特定多数が席を共有し、席の利用者の特定が難しいという点です。一方、席が選べる利点によって距離の確保や密集回避には柔軟に対応ができます。出社率を下げるのは固定席の場合と同じですが、同時に、ホテリングといった席を予約するシステムにすることで利用者を特定できるようにし、誰が何時から何時までどの席に座っていたかを把握して、万が一に備えることも必要になるでしょう。 また退席する時のクリアデスクのルールとして消毒するという項目も必要になります。 コクヨでは消毒が終わったら席上の札を裏返して「消毒済み」にするというルールを最近追加しました。それによって前の人が拭いてくれたという目印になります。
備品/その他について
Q.机が無いと書類や文房具はどこにしまうの?
A.フリーアドレスを成功させるためには、「紙からデータへ」「個人所有から共有へ」という変化も同時に起こす必要があります。固定席の収納の代わりとして個人ロッカーを設置するケースが多いですが、収納容量は縮小されることがほとんどで、個人で所有できるモノが限られてしまいます。またフリーアドレスの導入と同時にペーパーレス化を進める企業も多く、紙ではなくデータで保存・保管するようになります。 コクヨではハサミやノリ、ステープラーといった文具一式をまとめて置いておくスペースを設置し、フロア全体で共有する仕組みを取り入れています。
Q.固定電話はどうするのか?
A.昨今は電話よりもメールを窓口とする企業も増えてきており、フリーアドレスの導入を機に固定電話のありかたを見直し、減らしていく必要があります。ただし業種・業態・業務内容によっては固定電話が必要な場合もあるでしょう。 固定電話がある場合でも、例えば固定電話のある席に当番制で座る、固定電話から当番の人の内線に転送されるように設定するなど、運用で乗り切るケースが多いです。 最近は営業以外の社員にも携帯電話を支給する会社が増えていますが、フリーアドレスだけでなくテレワークを併用するなど働く場の選択肢が増えているため、名刺に記載する電話番号も会社ではなく個人の携帯電話にするなど、担当者と直接繋がるように変えていく必要があるのではないでしょうか。
Q.仕事をする座席とロッカー(収納場所)が離れると、書類などをいちいち取りに行くのが面倒になるのでは?
A.フリーアドレスの働き方では、今日は何の仕事をどこでするか、そのために何が必要かを自律的に考える必要があります。一日に必要なモノをすべてロッカーから持ち出すやり方もありますが、例えば、午前中に必要なモノだけをロッカーから持ち出し、仕事が終わったらロッカーに戻してまた必要なモノだけを持ち出すという方法で、仕事にメリハリをつけることもできます。 持ち歩く必要があるため不要な書類を減らす、整理する習慣が身につく効果もあります。収納が離れていることをポジティブな行動に転換できるといいでしょう。
フリーアドレス導入に向けて押さえておきたい基礎知識 メリット・デメリットや成功のポイントとは
コロナ禍で働き方が変化している今、注目されているフリーアドレス。導入のメリットがある一方でデメリットへの不安から社員の反発も起こりやすい。導入の効果を見極め、失敗しないために押さえるべきポイントやABWとの違いなど、具体的な疑問への回答もふまえて成功のポイントを紹介する。 https://www.kokuyo-furniture.co.jp/solution/mana-biz/2022/01/post-633.php
成田 麻里子(Narita Mariko)
コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
コクヨ入社後、10年間にわたりオフィスデザインやワークスタイル研究、新規事業企画に携わる。現在は企業向けサービス[コクヨの研修]スキルパークにおいて、人材育成、働き方改革に関わる研修企画および講師を担当。