仕事のプロ

2023.03.28

ロボット化社会は到来する?技術研究の最先端

仕事を奪う奪われるではないロボットとの付き合い方

少子高齢化等で今後確実に労働人口は不足すると予測されていることもあり、ロボット技術の進歩に期待が寄せられている。ロボットがオフィスで同僚として働く未来は到来するのか? 『超ロボット化社会』の著者でありロボット研究者である新山さんにロボット開発の現状やロボットとの付き合い方などについてお話を伺った。
※本記事は、MANA-Biz編集部著『LEAP THE FUTURE』(プレジデント社)から、内容を一部抜粋しております。

登壇者

■新山龍馬氏(明治大学専任講師)

インタビュアー:吉田大地(コクヨ株式会社 ワークスタイルコンサルタント)




身近になりつつあるロボット

――そもそもロボットというとAIとセットで語られることが多く混同されやすいと思いますが、ロボットとAIの定義をどう捉えればよいでしょうか。

2_bus_132_01.jpgロボットと聞くと人型ロボットを想起しやすいですが、ロボットカーやアーム型などいろいろな形がありますので、もう少し広く捉えてもいいと思います。ロボットは触れることができるハードウェアそのもの。

一方でロボットは機械だけではなくて、メカトロニクス(メカ+エレクトロニクス)とコンピューターが結びついて成り立っている総合システムのようなところがあるので、AIと切っても切り離せない関係だと思います。


――ロボットは少子高齢化による労働力不足を解決する存在として期待されていますが、現在どんなところまで技術は進んでいるのでしょうか。

産業用ロボットは堅調で、特にアジア圏を中心に出荷台数が伸びています。その中でコラボレーティブロボットや協働ロボットと言われる、もう少し人間の近くで仕事をしても比較的安全なロボットアームなども順調に増えてきています。人間が持ち上げた物をロボットに渡して...というように、柵がない状態で一緒に働くという状況は実現しつつあります。

また、箱がズレたらそのズレに合わせてアームを調整するといった人間なら考えなくてもできることを、ロボットは5割の確率で失敗していましが、最近は9割9分できるようになったんです。改良によってやっと製品化できるラインを超えられるようになってもきました。ロボットも上達してきているんです。

コンシューマー向けはロボット掃除機など多様な形のものが出回っていて、レストランなどでも配膳するロボットを見かけるようになりました。ロボット研究者としては世の中にもっとロボットがあふれていてもいいと思いますが、ようやくロボットが身近になったとも感じています。




ロボットが人間の仕事を奪うのではなく、
人間がロボットの働き口を奪っている

――技術開発の方向性としては、人間がやっていたことを置き換えるのか、それとも人間の能力を超えていくのか、どちらに進んでいるのでしょうか?

やはり人間を超えていかないと、人間でいいということになります。例えばロボットは疲れを知らないので、ゆっくりでも24時間稼働できます。寝る必要もなければランチ休憩も必要ないのは人間にない特長ですよね。

ロボットが人間の仕事を奪うかどうかという問いをよく耳にしますが、むしろロボットができることを任せずにまだ人間がやっているのが現状です。例えば重い物を持ち上げるような腰に負担のかかる仕事や、冷凍の倉庫で荷物を出し入れするなどの作業はロボットに任せればいいんです。

働き方を考える時には、何が「仕事」なのかを議論する必要があります。人間は食べて寝て会話してといった一連の活動そのものが主な仕事であって、ロボットに代替できることは本当に「仕事」なのか、働くとは何かという根源的な問いは、議論しなければならないポイントなんじゃないかと思います。


――ロボットと人間を比べないというお話もありましたが、ロボットに優位性があるような分野は?

人型ロボットをイメージしてしまうと発想が狭まるので、あまりロボットを擬人化せず、道具だと思った方がわかりやすいです。ロボットアームを人間の腕のメタファーとして例える必要はなくて、好きな場所から場所へ動かす装置といった風にピュアに見た方が使い方も見えてくるように思います。


――ロボット=道具と考える、あくまで使うのは人間であって仕事を奪われるものではないということですね。洗濯機に洗濯という仕事を奪われたとは考えないように(笑)

ロボットは全然万能ではなく、1つの機能に特化していたり、放っておくと壊れる弱いもので、人間のサポートが必要な半人前なんです。おそらく人間を征服するぐらいの機能を持つのには100年ぐらいかかると思います。

ロボットは道具でしかないのだから使われてなんぼだし、使う人次第です。それに今はまだ同じ作業をさせるにしても、対コストで考えると人間を雇う方が安い。ブレイクスルーするのはまだまだ先だと思います。だから、奪う奪われるではなく、ロボットとうまく付き合っていって楽になった、助けてもらえた、というような思考に切り替えていくことが非常に重要だと思っています。

※本記事は、MANA-Biz編集部著『LEAP THE FUTURE』(プレジデント社)から、内容を一部抜粋しております。



書籍紹介

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新山 龍馬(Niiyama Ryuma)

明治大学専任講師。専門は生物規範型ロボットおよびソフトロボティクス。柔軟材料を使ったやわらかいロボットを題材に、シミュレーションや機械学習を活用したロボット学を研究している。著書は『やわらかいロボット』(金子書房)。

吉田大地(Yoshida Daichi)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
ITコンサルタントとして、ITをベースに複数のクライアント企業の課題解決を手掛ける。現在はワークスタイルコンサルタントとして、空間、働き方の両面から、働く人1人ひとりの感性を刺激し、創造性を発揮するオフィス環境の構築を支援中。働く人の能力を発揮させ、互いの知識・情報を共有し、交流を活性化させるオフィス環境の実現をサポート。

作成/MANA-Biz編集部