仕事のプロ

2024.10.23

人生100年時代、長く楽しく働き続けるために今あらためてキャリアを考えよう

キャリアを考える: キャリアってなに?

人生100年時代、働き方や暮らし方も多様化しつつある。「どう働くか」「どんな生き方をしたいか」の選択肢が拡がったからこそ、自身で自律的に考え、選び取っていく…、つまり、誰もがキャリアをデザインする時代になってきた。そこでキャリアを考えるためのヒントやポイントを13回に渡って紹介していく。第1回目は「キャリアとは何か」について、コクヨのキャリアコンサルタントの古川貴美子が解説する。

キャリアの語源は「轍」
経験を積み重ねながら未来を描く

キャリアの語源はラテン語で荷馬車などが通った後にできる「轍」と言われています。これまで通ってきた軌跡と、これから進んでいく方向性の両方が対象であり、過去から未来に向けたすべての経験(=キャリア)を荷馬車に乗せて歩んでいるイメージです。

キャリアというと、職務経験や資格、専門技術や知識、肩書などをイメージする方が多いですが、仕事以外の結婚や出産、介護、地域でのボランティア活動なども、キャリアを形づくる大切な経験です。生涯を通じてさまざまな経験を重ねていくなかで、蓄積していく全てのスキルや能力があなたのキャリアですので、『キャリアのない』人などいないのです。




キャリアにはコントロールできない
「偶然」がつきもの

主体的に生きられる時代に...といっても、すべてを主体的に決められるわけではありません。特に仕事においては、担当業務や配属先、上司や同僚など、自分の意思で選べないことの方が圧倒的に多いです。実際、キャリアの8割は偶然の出来事によって決定されるとも言われています。

だから大切なのは、その偶発的な要素をどう捉えるかということ。

例えば、「希望の部署に配属されなかった」、「上司が厳しい人でつらい」など、望まない状況になることもありますが、そこで、あきらめて投げやりになったり、なんとなく流されるのではなく、その中でも「自分が大切にしたい価値観は何か」、そのために「何をしなければならないのか」を意識的に考えれば、現状に対する見え方や振る舞い方も変わってくるはずです。

また、望まない状況であっても、少し意識を変えるだけで「思いがけない分野の視野が拡がった」、「苦手だった作業が苦もなくできるようになった」、「人脈が拡がった」など、実は今後のキャリアに役立つスキルやリソースを得られていることに気づけるはず。 「意見や考えの合わない上司の下で1年耐えられた」というのも立派な実績であり、キャリアですよね(笑)。

2_bus_157_01.jpg キャリア理論で有名な心理学者であるクランボルツは、キャリアに関する「計画的偶発性理論」を提唱しています。偶然の出来事をチャンスと捉えて個人のキャリアに生かすには「好奇心」「持続性」「柔軟性」「楽観性」「冒険心」の5つの行動特性が重要だといいます。 これらの5つの行動特性も意識しながら今の環境に向き合ってみるといいでしょう。




キャリアにおける成功とは

一昔前は、キャリア=仕事と捉えられていたので、昇進できないことや役職がつかないことをキャリアの失敗と考えてしまう人が多かったですが、今は前述したようにキャリアは人生そのもの。価値観も多様化し、仕事だけでなくプライベートを含め何を成功とするかは個人によって異なり、そうした価値観の違いが受け入れられつつあります。

自分のキャリアの軸を考える際、これまでの延長線上だけで考えるのではなく、新しい経験や人との関わりを通して目線を変えることも重要です。そういう意味で、偶然の出来事は新しい視点や判断材料を増やすチャンスだとポジティブに捉えられるといいですね。

世の中の価値観が大きく変化している今だからこそ、必要に応じてキャリア・コンサルタントといったキャリアのプロも活用して、自分が大事にしたいものやゆずれないもの、楽しくワクワクするものなどについて内省する機会を持つことをオススメしたいです。


古川 貴美子(Kimiko Furukawa)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
1級ファイリング・デザイナー / 電子ファイリング検定A級 営業企画部門・マーケティング部門を経てワークスタイルコンサルティング部門に所属。 主に、ファイリング(情報の5S)コンサルティング、オフィスの運用改善コンサルティングを 担当し、お客様の働き方改革をサポート。2018年発刊「コクヨ式整理術」一部監修。

作成/MANA-Biz編集部