仕事のプロ

2024.12.04

仕事を通して得られるものはお金だけではない

キャリアを考える:キャリアにおける「仕事」のメリット

「キャリア=人生」といっても、ビジネスパーソンにとってその中の仕事が占める割合は大きい。もし与えられた仕事がやりたいことと違っていたり、やりたいことがまだわからない場合、キャリアをどう考えればいいのだろうか。キャリアを考える連載第3回目は、「キャリアの中で仕事をどう位置づけ、やりがいや目標をどうやって見つければいいのか」について、コクヨのキャリアコンサルタントの成田麻里子が解説する。

仕事は「自分の選択ではないもの」に触れられるチャンス

キャリアは仕事に限ったことではなく、「人生そのもの」とこれまでの連載でお伝えしてきましたが、仕事をしている場合、人生の中の多くの時間とエネルギーを費やしているため、キャリアにおいて仕事をどう位置づけるかは重要な問いになってきます。

ほとんどの人にとって、仕事をする目的に「お金を得るため」「生活のため」があると思いますが、それだけでは、やらされ感を抱きやすく、仕事がつまらないものになってしまいます。ただ捉え方を変えれば、仕事を通して得られるものはお金以外にもたくさんあることに気づけるはずです。

例えば、スキルを高めたり、専門領域を拡げたり、社会貢献などのやりがいを見つけたり、自己効力感や達成感を得るなどさまざまですが、中でも一番大きいのは、「自分の選択肢にないものに出合うこと」です。

友だち付き合いでは、価値観の似ている人が集まりやすいですし、趣味などは好きなことや得意なことに取り組むもの。どちらも「自分で主体的に選んだもの」ですよね。でも仕事の場合は、好きなことだけをやれるわけではなく、時には、やりたくないこと、苦手なことにも取り組まないといけません。
ただ裏を返せば、自分の興味の外にある新しいモノやコトに出合うチャンスであり、新たなやりがいに出合えるチャンスとも言えます。与えられた環境のなかでどうやって成果を出したか、困難な状況をどう乗り越えたかといった経験から得られるものはとても大きいはず。新しい価値観を知ることができたり、自分の思考パターンに気づけたりすることもあるでしょう。

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WILLが見えていないなら、まずCANやMUSTにしっかり向き合う

人生における目標や目的を長期視点で考え、その道筋を描くこと「キャリアビジョンを描く」と言います。仕事でキャリアビジョンを考える際によく使われるのが「WILL-CAN-MUST」というフレームワーク。「やりたいこと」はこのうちのWILLに当たるのですが、このWILLが見つかっていない人、あいまいな人は意外と多いもの。

WILLの方向性が定まらない場合は、まずCAN(できること)やMUST(やるべきこと)に向き合って、しっかりやりきることが大切です。CANやMUSTを拡げていくことで、WILLを見つけやすくなります。

また。割り振られた仕事や役割に不満があったとしても、「やりたいことじゃないから一生懸命やってもムダ」だと考えるのではなく、自分なりに意味づけすることが大切です。 例えば、現在の業務のうちでやりたいことは2割だったとして、残りの8割を作業として淡々とやるのか、それともその仕事の目的を意識しながら少しでも工夫をしようとするのかで、仕事の面白さも変わってくるはずですし、見える世界も変わるはずです。
そうやって視野を拡げることが新しいWILLを見つけるキッカケにもなるので、WILLに出合うまでのプロセスも重要なキャリアだと考えてみてはいかがでしょうか。




経験を中長期的な視点でキャリアにつなげる

今やっていることが、キャリアとしてどう活きてくるのかをこの瞬間に判断するのは難しいですが、主体的に取り組み続けていくことが、結果的に満足感の高い人生をつくることにつながります。なので、あせらずに中長期的な視点でキャリアをとらえてください。たとえ遠回りになったとしても「ムダではなかった」と思えるはずです。

やりたいことがあってもなくても、今ある仕事を主体的に一つひとつ取り組んでいく...。その経験が、いつかあなたのWILLを実現する大切なキャリアの一つになるはずです。



成田 麻里子(Narita Mariko)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
コクヨ入社後、10年間にわたりオフィスデザインやワークスタイル研究、新規事業企画に携わる。現在は企業向けサービス[コクヨの研修]スキルパークにおいて、人材育成、働き方改革に関わる研修企画および講師を担当。

連載監修/河内律子(コクヨ キャリアコンサルタント)
ライター/中原絵里子