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2022.6.10[ オフィス運用 ]
固定席のないオフィスって、結局どうなの?コクヨ25年のフリーアドレスの経験から、そのメリット、課題、導入前に知っておくべき運用のコツを紹介します。
※本記事では、コクヨのWEBセミナーとして好評をいただいた「失敗しないフリーアドレスのポイントとは」の内容の一部をご紹介します。
杉山由希子 : コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部
University of Dallas MBA卒業後、2006年にコクヨ株式会社に入社。入社後は販売促進、海外事業、事業戦略などに携わる。
フリーアドレスとは、オープンオフィスで座席を共有する日本生まれのワークスタイルです。1987年、清水建設の技術研究所で開発されました。
「フリーアドレス」は実は和製英語で、英語ではHot Desking Systemと言います。アメリカでは「ノンテリトリアルオフィス」という言葉もよく聞きますが、これは従来型の個室をやめ、オープンなオフィスにするスタイルのことで、日本のフリーアドレスとは由来が少し異なります。
執務空間のレイアウトやデスクの形状にかかわらず、「固定席がない」ワークスタイルがフリーアドレスです。
コクヨでは1997年からフリーアドレスを導入しています。その経験から得たフリーアドレスのメリットは、次の3点です。
メリット
フリーアドレスでは、一般的に全社員数の7割のデスクがあれば十分だと言われています(もちろん、業種や会社によって適正数は異なります)。
また人員が増えた場合、固定席だとその分のデスクとイスを新たに用意しなければなりません。一方フリーアドレスだと、たとえば人員100人のところに新たに4人加わっても、ほとんど影響がないか、少し席を詰めれば十分対応できます。
たとえば企画職の人が、同期の営業の意見を聞きたいとします。固定席だと役職者が近くにいて、「こんな質問をしているところを見られたらどう思われるか」と気にしてしまったり、違う職種の人に囲まれて話すのに心理的ハードルが上がったりして、質問しに行くのを躊躇することがあるでしょう。
これがフリーアドレスだと、オフィス内のいろいろな場所に、いろいろな職種の人が点在しているので、「文化の違うテリトリーで的外れなことをした!」といった心理的プレッシャーを感じる必要はなくなります。その結果、部門をまたいだ意思疎通が非常に図りやすくなり、組織全体で活発にコミュニケーションを取る文化が育まれます。
自分がどんな仕事や作業をするかによって席を選べるため、自律的な働き方が促されます。
たとえば私は、
・企画仕事をするときは、資料を広げられる大きなテーブルで作業
・先輩に相談したいときは、いる場所をアプリで探してそこに移動
・集中したいときは、集中専用のデスクを選択
というように、仕事の内容に合わせて場所を選んでいます。
フリーアドレスには課題になりやすいポイントもあります。
目的があいまいなままフリーアドレスを導入すると、社員が毎日同じところに座り、結局固定席になってしまうというケースがあります。
フリーアドレスにすると、コミュニケーションが促進される反面、集中に適した環境ではなくなるケースもあります。コクヨではその経験を踏まえ、いまでは必ずオフィス内に集中スペースを設けるようにしています。
フリーアドレスを導入しようとすると、必ず部長クラスから「部下があちこちにいては状況が把握できない」という声が上がります。フリーアドレスの実施にあたっては、そのマネジメントスタイル自体を変えていく必要があります。
以上を踏まえ、フリーアドレス導入にあたりおさえるべきポイントをまとめます。
おさえるべきポイント
経営トップと人事総務だけでフリーアドレス導入を決めると、「なぜうちの会社がフリーアドレスにするのか」が社員まで浸透せず、結局「前の方がよかったね」という声が上がりがちです。
これを防ぐには、トップが社員に対し、「こういうふうに働いてほしいからうちはオフィスリニューアルをするんだ」というメッセージをしっかりと届け、社員に腹落ちさせることが重要です。
有線LAN、デスクトップパソコン、固定電話中心の環境ではフリーアドレスは実現しません。Wi-Fi、ノートパソコン、スマートフォンなどのモバイルツールは必須です。
個人がさまざまなツールを持ち歩くフリーアドレスでは、道具一式を持ち運べるバッグを利用すると移動が楽になります。
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資料などを保管する個人ロッカーも重要です。扉のスリットから郵便物を入れられ、写真を貼るなど個性を表す場としても利用できます。
たとえばデスクにコーヒーをこぼしたとき、自分のデスクなら必ず拭くけれど、共有デスクだとそのままにしてしまう。するとそこには誰も座らなくなり、別の席が固定席化する......。
これを避けるため、コクヨではみんなでオフィスをきれいにする取り組みを行っています。決まった時間に音楽を流し、そのあいだに全員で清掃を行う取り組みです。最近では、感染防止対策の一環として、デスクを使ったあとは除菌してから移動する、というルールもあります。
こうした清掃ルール以外にもさまざまな決まりが考えられますが、大事なことは、自分たち自身で改善点を洗い出し、その都度ルールを作って運用していくことです。そうすることでワーカーのオフィスへの愛着が高まり、フリーアドレスでの働き方も定着しやすくなります。
フリーアドレスは、上手に運用するとワーカーにとってはとても働きやすいワークスタイルです。
ぜひ私たちコクヨの成功例・失敗例を参考に、フリーアドレス導入を検討いただければと思います。
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