リサーチ

2016.08.18

デキる企業のウェルビーイング対策

先進的グローバル企業における競争力維持の要!

「ウェルビーイング(Well-being) 」――直訳すると「幸福」という意味で、個人の権利や自己実現が保障され、身体的・精神的及び社会的に良好な状態にあることを指す言葉である。近年、企業におけるウェルビーイングの重要性が注目を集めているが、事実、職場でのウェルビーイングと従業員の会社への貢献、会社の業績向上の間には相関関係がある。ウェルビーイングに取り組む企業はどんなことをしているのか。

バークレーヴァウチャーズ株式会社による、世界における職場でのウェルビーイングに関する「2016 年度 Edenred-Ipsos Barometer調査」。この調査は、日本を含む世界15カ国、14400人の従業員を対象に、職場でのウェルビーイングに対する満足度などを調べたものだ。調査の結果、一番ウェルビーイングに満足している割合が高かったのはインドで、88%。一方日本は、最下位の44%で、世界の国々と大差をつけて低い結果となった。
 
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また、この調査では、職場でのウェルビーイングを測るために、「職場環境」、「上司からの配慮」、「仕事へのモチベーション」という3分野に分けてカテゴライズしているが、日本は「仕事へのモチベーション」における満足度が特に低いようだ。例えば、「会社や組織に対する将来について不安がない」と答えた回答者はわずか28%(世界平均65%)、「毎朝職場に通うのが楽しみである」と答えた回答者が 30%(世界平均67%)という具合だ。
 
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職場のウェルビーイングの評価項目と日本の従業員の満足度

 
優秀な人材の獲得・保持という目的においても非常に注目を集める職場のウェルビーイングだが、日本では、まだ認知度も低く、十分に対策も行われていない。しかし現在、いくつかの企業がその重要性に目を向け、取り組みを始めている。そのようにウェルビーイングに取り組む優良企業例として、伊藤忠商事株式会社、SCSK株式会社、大和証券株式会社の3社の取り組みをそれぞれ見てみよう。
 
伊藤忠商事株式会社は、「早朝から効率的に働く方が健康的」との考えから、原則残業禁止、10時以降は完全禁止とする「朝型勤務」を導入した。さらに午前7時59分までに出社すると、パンやバナナ、ゆで卵やヨーグルトなど、無料の朝食を提供する。午前5~9時に勤務すれば、50%割り増しの時間外手当も支給。午前7時までに出社する「朝型」社員は、以前の200人以下から約300人に増加した。この取り組みなど、毎朝職場に通うことを楽しくするのに効果がありそうだ。
 
SCSK株式会社、大和証券株式会社は、おもに社員の健康に対するユニークな取り組みを行っている。
 
SCSKは、「健康わくわくマイレージ」という独自の健康管理制度を導入している。健康の維持・向上に必要な生活習慣の実践状況と、毎年受診する定期健康診断結果をポイント化し、1年間の蓄積に応じて最大3万円をインセンティブとして支給するという仕組みだ。健康診断によって発見された改善点をの改善状況もポイントに反映される。
 
大和証券では、2015年から、社員の健康づくりの自助努力にポイントを付与するポイントインセンティブを開始。希望者が一斉に3ヶ月の間一日一万歩を目標にウォーキングするウォーキングチャレンジや、「ハラハチ」と呼ばれる、腹八分目希望者が一斉に1ヶ月間腹八分目に挑戦する腹八分目プログラムなど、ユニークなイベントがポイント付与対象となる。ヘルスリテラシーの向上のための生活習慣病、運動、栄養、メンタルヘルスに関する学習を目標とした健康リテラシー講座も開催されており、こちらも参加するとポイント付与の対象となる。ポイントが一定水準に達すると55歳以降の給与に反映され、中核人材の給与が現状の10~30%上昇するという。
 
体も精神も健康でいられて初めて高度なパフォーマンスが可能となる。これからの時代は、業績向上のために社員のウェルビーイングを重視することが、グローバル化する社会で生き残る秘訣となるだろう。
 
 
(出典)株式会社バークレーヴァウチャーズ プレスリリース「バークレーヴァウチャーズ、世界における職場でのウェルビーイングに関する『2016 年度 Edenred-Ipsos Barometer 調査』の結果を発表」(2016年5月27日)をもとに作成
 
作成/MANA-Biz編集部