リサーチ

2017.01.11

企業の7割が女性社員の育成に課題あり!

「女性管理職」に対する抵抗が成長を妨げる

女性の社会進出推進がうたわれているが、実際には女性をコア人材として教育するところで足踏みしている企業は多い。その課題はどこにあるのか、調査結果から掘り下げてみたい。

公益財団法人日本生産性本部の調査報告によると、女性活躍推進法への対応について、「課題がある」とする企業は72.1%に上った。さらに、課題の内容としては、「目標の設定の仕方」(76.1%)、「取組内容の作り方」(69.3%)が主だった。
 
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実際に企業が女性活躍推進に対しての取り組みの内訳を見てみよう。「女性活躍推進の取り組みとその効果」のグラフでは、「採用・拡大」「業務拡大・育成」「管理職登用」「職場環境・風土改革」の4つのカテゴリーに分かれている。「管理職登用」以外の3セクションは、取り組む企業の割合が比較的高いことがわかる。
 
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「採用・拡大」では、「非正社員から正社員への転換・登用」と「女性社員の中途採用(管理職以外)」は半数を超えており、企業が積極的に女性社員を採用していることが伺える。「職域拡大・育成」では、「女性社員への教育・研修参加機会の拡大」と「育成を念頭にいれた計画的な配置・転換」もほぼ半数に近く、その他の取り組みも20~30%前後を保っている。「職場環境・風土改革」では、「ハラスメント対策のための研修実施」は約半数、「管理職の意識改革のための研修実施」と「両立支援のための福利厚生制度の充実」は40%以上だ。
注目すべきは、企業の女性を管理職にする意識の低さだろう。「管理職登用」のセクションでは、他のセクションと比べて実施している企業の割合が軒並み低い。「採用・拡大」では「女性管理職の外部からの登用」も11.9%と相当低い。「職場環境・風土改革」で「管理職の意識改革のための研修実施」は高い割合だが、これは管理職側が「女性社員を管理する」ことに対する意識改革であって、女性が管理職になるための意識改革ではない。
 
注目すべきは、「職域拡大・育成」のカテゴリーでは、多くの企業で積極的に女性活躍推進の取り組みを行っているのがわかるが、一方、「管理職登用」のカテゴリーでは、他と比べて実施している企業の割合が軒並み低い。特に、取り組んでいない企業のうち「効果があると思うが予定していない」と感じている企業の割合が高いのは問題だ。本来であれば「職域拡大・育成」の先に「管理職登用」もあるはずだが、何のために研修や配置換えなどを行ってきたのかということになってしまう。
 
結局のところ、日本の企業の多くは「女性を管理職にする」ことにブロックがあるのだ。「職場環境・風土改革」のカテゴリーで、「管理職の意識改革のための研修実施」が実施している企業と「効果があると思い予定している」企業と合わせて6割以上となっていることは、それに対する問題意識の高まりが表れているのかもしれない。これは先にあげた「目標の設定の仕方が課題である」という内容につながってくる。女性に活躍の場を与えるのはいいが、その先に何があるのか、女性社員に対して明示化するのが企業の目下の課題といえよう。どんなに意欲的に頑張っても、昇進は見込めない、立場に反映されないとあらば、キャリアでの目標をどこに定めていいかわからなくなってしまう人は多い。女性管理職の登用に積極的にならない限り、女性社員教育は頭打ちの結果を迎えることになるだろう。
 
 
(出典)公益財団法人日本生産性本部/ワークライフバランス推進会議「第7回「コア人材としての女性社員育成に関する調査」結果概要」をもとに作成
作成/MANA-Biz編集部