プレゼンテーション

2017.05.10

プレゼンが上手い人の話し方~自信のなさは、言葉の語尾に現れる

プレゼンテーション6:はっきり伝えたいときの語尾の選び方

プレゼンテーションで大切なのは、自分の主張やメッセージを聴き手にしっかり伝えることです。ただ、プレゼンの内容に関わらず、話の語尾によっては相手にネガティブな印象を与えてしまうこともあります。人の心を動かすプレゼンに向けて、話の内容に応じた語尾の言い方・使い方をマスターしましょう。

プレゼンの自信のなさは、
言葉の語尾に表われる

プレゼンで大切なのは、「シナリオ」「話し方」「資料」の3つです。プレゼンの準備をするとき、多くの人はシナリオと資料の準備に力を入れて、自信のある内容に仕上げようと頑張ります。

しかし、プレゼンは本番が勝負。シナリオと資料をどんなに準備しても、本番で緊張してしまう人もたくさんいます。このような緊張は、話し方に表れます。特に語尾には、自信のなさがストレートに出がちです。



プレゼンが上達する練習方法

「シナリオ」や「資料」は、何回も練り直したり整えたりして、じっくり時間をかける人が多いでしょう。しかし「話す」ことに関しては、「シナリオ」「資料」に比べて、十分な準備をしない人が目立ちます。

極端な場合は、ぶっつけ本番で臨むこともあるかもしれません。しかし、話し方も練習しなければ上達しません。シナリオや資料の準備と同様に、時間をとって練習しましょう。


動画に撮って自分のプレゼンをチェックしよう

プレゼンの練習にあたって、短期間で上達が期待できる方法があります。それは、話している自分の動画を撮影し、確認することです。聴き手になったつもりで自分の話をチェックすることによって、自分のプレゼンを客観的に評価し、練習に活かすことができます。



ポイントは「語尾がはっきり聞こえるかどうか」

自分のプレゼン動画を確認する際には、声の大きさや間の取り方、表情、声のトーンなどさまざまなポイントをチェックする必要がありますが、特にチェックしたいのが、「語尾がはっきり聞こえるかどうか」です。

自信のなさは語尾に現れやすく、尻すぼみに声がちいさくなると相手が聞きとれず、内容が伝わりません。また場合によっては、相手が話の内容を誤解する危険もあります。語尾がはっきりと聞き取れるか、しっかりチェックしてください。



「べきです」なのか、
「思います」なのかで印象は大きく変わる

日本語では、肯定文か否定文かが文の最後で決まります。「~します」なのか、「~しません」なのか、語尾によって内容がまったく変わります。ですから、プレゼンでは語尾まではっきり言うことが大前提です。

また、語尾の使い分けも重要です。例えば、次の3つのフレーズの内容自体はほぼ同じですが、語尾のニュアンスがだいぶ異なります。

・~すべきです(「このシステムを導入すべきです」)
・~です(「お勧めはこのシステムの導入です」)
・~と思います(「このシステムを導入するのがよいと思います」)

語尾の使い分けをどう見極めればよいでしょうか? ポイントは、以下の3つです。

①相手と自分の距離感
②プレゼンの内容が、反論が出やすい提案であるかどうか
③自分の専門領域かどうか



語尾の使い分けのポイント


①相手と自分との距離感

例えば若手社員が、年上の上司に向けて「来期のマネージャー研修の内容」について提案するとき、次のような言い方をしたら上司はどう感じるでしょうか?
「マネージャーは、部下の成長にも責任を持つべきです!」

上司は「偉そうなヤツだなあ」「言われなくてもわかっているよ」と感じ、部下にあまりよい印象を持たない可能性があります。「マネージャーは、部下の成長にも責任を持つ必要があると思います」と言い換えた方が無難です。


②プレゼン内容が、反論が出やすい提案であるかどうか

例えば、古い体質の企業に勤務する男性社員に、「ワークライフバランスの実現には、男性がもっと家事参加するべきです」と伝えると、反論が出る可能性があります。

しかし、「ワークライフバランスの実現には、男性がもっと家事参加するべきだと私は思います」と言い換えるとだいぶ印象が変わります。

語尾を「私は思います」にすることで「これは強い主張です」という印象が増します。一方で、「人によってはそうは思わないですよね」という配慮もプラスできます。


③自分の専門領域かどうか

例えば診察を終えた医師が「この薬を飲んだ方がいいのではないかと思います」と言ったら、患者は不安になってしまいますよね。「この薬を飲んでください」と言い切ってほしいでしょう。

同じように、あなたが営業担当者だとして、自社の商品をお勧めするときに「このソリューションがよいのではないかと思います」と言ったのでは、顧客を不安にさせてしまいます。自社の専門領域を提案するわけですから、「このソリューションが最適です」と強く言い切って自信を伝えましょう。


プレゼンを行うとき、語尾を意識するだけで伝わりやすさが変わってきます。明確に言い切るのを基本に、話の内容に合わせて的確な語尾を選び、聴き手の心に訴えかけましょう。


下地 寛也(Shimoji Kanya)


コクヨ㈱入社後、行動と環境(創造性、コミュニケーション、場のあり方等)に関する研究・分析を担当。2003年より、クライアントの企業変革のコンサルティングや研修コンテンツ企画を担当する。著書『コクヨの3ステップ会議術』(中経出版)、『コクヨの1分間プレゼンテーション』(中経出版)、『コクヨの5ステップ ロジカルシンキング』(中経出版)、『コクヨの「3秒で選び、2秒で決める」思考術』(中経出版)、『コクヨのコミュニケーション仕事術』(総合法令出版)



イラスト/海老佐和子