チェックワード

2018.09.07

君子は豹変するとどう変化する?

本日のチェックワード 67「君子は豹変す」

「普段は人当たりがいいんだけど、お酒が入るとしつこいの。君子豹変って感じで……」

 研修期間を終えて配属された新人に、入社2年目の社員がいろいろアドバイスを送り、リーダーの人柄について上記のように説明しました。この言葉を聞いて違和感を感じる人は少ないかもしれませんが、「豹変」という言葉がもつ本来の意味から考えると誤った表現なのです。
「君子は豹変す」という慣用句は、本来は「(豹の毛が抜け替わってまだらの模様が鮮やかになることから)君子(人格者)は過ちを速やかに改め、鮮やかに名誉を一新する」といった意味で、考え方や態度が一変するときに使われます。注意したいのは、「豹変=よい方向に変化する」が正しい意味だということ。しかし近年は、豹が小動物を襲うイメージからか、悪い方へと変わるときに「豹変」と表現する人が増えているため、この慣用句も「人格者の言動が急に悪化すること」というニュアンスで使われることが圧倒的に多くなっています。
 そこにいない人物の個性を説明するときにこの慣用句や「豹変」という言葉が使われたら、会話のネタとして本来の意味を披露するのもいいでしょう。

監修/篠崎 晃一(Shinozaki Koichi)

東京女子大学教授。専門は方言学、社会言語学。『例解新国語辞典』(三省堂)編修代表や、テレビ番組「ワーズハウスへようこそ」(日本テレビ系)の監修など幅広い分野で活躍。『えっ?これっておかしいの!? マンガで気づく間違った日本語』(主婦の友社)など、日本語の誤用に関する著書も多い。