仕事のプロ
2018.10.15
働きやすさを支える「オフィスカイゼン」〈前編〉
小さな課題も1つずつ解決して「さらによいオフィス環境」へ
オフィス移転やリニューアルから年月が経つと、キレイだったときには気づかなかった汚れや備品の不具合など、さまざまな不満が噴出してくるもの。時代の動きを捉えながら、ビジネスのさまざまな課題を解決するオフィス空間を提案しているコクヨ株式会社では、このようなオフィス環境における問題解決に向けて総務をサポートする「オフィスカイゼン委員会」の活動を行っている。自ら“カイゼンマン”として活動するファニチャー事業本部の一色俊秀氏は、「オフィスの環境を一つずつ改善していけば働きやすさがアップし、ひいては生産性向上につながります」と強調する。委員会のとりまとめを行う一色氏と、オフィスカイゼン委員会のwebサイトを運営する城間健市郎氏に、委員会設立の背景と活動についてお聞きした。
オフィスカイゼン活動を自然消滅させないために
「続けるためのルール」をつくる
2013年から始まったオフィスカイゼン委員会の取り組みも今年で6年目を迎えた。委員会は現在も2か月に1回のサイクルで行われているが、一色氏がつねに意識しているのは、「活動を継続していくこと」だという。
「このような委員会は、いつの間にか参加メンバーが少なくなって自然消滅してしまうことも多いのですが、オフィスカイゼン委員会はいくつかのルールをつくることで続いています。なかでも『改善の実行に期限を決める』、『部門長が委員会メンバーを選定する』、『メンバーは交代制にする』ことが大切です。さらに、高額でなくとも毎月の予算をつけてもらうことも活動を続けていく秘訣です」と一色氏は説明する。
「委員会では、毎回の活動でメンバーから挙がった課題を投票によって30個程度に絞り、そのうえで"カイゼンマン"が、『効果・実現性・緊急性が高い』という観点から、取り組む課題をさらに10個に絞り込んで、順に着手しています。そして翌月の朝礼で改善した項目と内容を発表しているのですが、『必ず発表する』という縛りを設けていることがポイントなんです」と一色氏は話す。
「期限を決めずに改善できたら発表する、という流れにしてしまうと、ずるずると実行が延びがちです。無理矢理にでも課題を10個決めてアクションに移すことが、カイゼン活動の継続につながっています」
また、委員会メンバーの選定も活動を継続させる上で重要だと一色氏。
「委員会のメンバーは、各部門の部門長に部内から1人指名してもらっています。なぜならば、カイゼン活動は直接利益を生む業務ではないため、軽視されてしまう怖れがあるからです。そこで、部門長自らがメンバーを指名して部の代表として送り出してもらう形をとることで、メンバーが委員会に参加しやすい雰囲気をつくるとともに、メンバー本人には代表としての責任を感じてもらうためです」と語る。
さらに、部署の意見を吸い上げたり、課題を集めたりしやすいよう、メンバーにはある程度仕事の経験を積んでいる中堅社員になってもらうようにしている。
「また、毎年交代制にすることで、オフィスの課題に気づけるメンバーが自然と増えるしくみもつくっています。『委員になるまではまったく掃除をしたことがなかったけれど、今は率先して清掃活動をしています』という声を聞くと、オフィス環境に対する意識を変えてくれたんだな、とうれしくなります」
メンバーへの負担軽減も
オフィスカイゼン活動の継続には欠かせない
また、このような自主活動では、メンバーが負担を感じていては続かない。そこで、「カイゼン活動自体はカイゼンマンが行う」、カイゼン委員会の集まりでは「課題を持参しなくてもよいから、その場で課題を探す」などハードルを下げる取り決めを行っている。そして一色氏は、「面白がってやりましょう」といつも呼びかけているという。
一色氏は、「コクヨ名誉会長の故黒田暲之助は、『オフィスは畑の土』と語り、働く環境は常に最適な状態を維持しておかないとよいアウトプットは得られない、と説明していました。今後もオフィスカイゼンを通じて、生産性向上に貢献するオフィスの運営・維持を続けていきます」と話す。
オフィスは、必ず老朽化し、使い勝手が悪いと感じる部分が出てくる。しかし、「汚れたらリニューアル」ではなく「課題解決によって働きやすさを維持する」という視点を取り入れることは、コストカットにつながるうえ、ワーカーがオフィスに愛着をもつきっかけにもなるだろう。
後編では、実際のオフィスカイゼンのコツについて紹介する。
オフィスカイゼン委員会
2013年春にコクヨ霞が関オフィスで発足。ワーカー自身が知恵を出し合ってオフィスのさまざまな課題を運用面から解決するための委員会。2015年には株式会社リクルートキャリア主催の「グッド・アクション賞」を受賞。2016年に開設されたwebサイトでは、6年間で蓄積された数百件のカイゼンアイデアを順次公開している。https://www.kokuyo-furniture.co.jp/kaizen/