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リーダーのためのアンコンシャス・バイアス
2019.03.15
組織単位の思いこみは個人の意識変革で払拭できる
リーダーのためのアンコンシャス・バイアス4:組織を成長させる
組織の成長は
「社会満足と社員満足」が原点
リーダーは、メンバーの育成に関わるのと同時に、組織の成長に貢献することが求められています。「組織を成長させる」とは、規模を拡大させることではなく、成果を上げていくということです。
では成果とは何を指すのでしょうか。私は、「社会満足と社員満足を高めていくことが最高の成果」と考えています。お客さまに喜んでいただくことはもちろん、それによって社会に貢献できて、社員が喜ぶことで仕事の質が高まり、結果的に利益が生み出されて組織を成長させることができるのではないでしょうか。
組織単位の思いこみが横行すると
成長は必ず鈍化する
しかし組織においては、社会や社員の満足より組織の都合が優先されることが少なくありません。「もっと社員の満足を重視した方がよいのではないか」「これは社会に不安を与えるのでは」と考えるメンバーがいても、「うちはそういうルールだから」「これまでずっとそうだったから大丈夫」という無言の圧力に押されて声を上げられないのです。これはまさに、「組織単位のアンコンシャス・バイアス」というべき状態です。
アンコンシャス・バイアスに強く支配された組織は、「社員が喜ぶ」「社会が豊かになる」という仕事の原点からどんどん離れてしまいます。すると、社員のパフォーマンスが上がらなくなったり、社会から必要とされなくなるため利益が上がらなくなり、悪くすると社会的問題、つまり不祥事が起きることもあります。
組織の問題を他人事と思い込む文化が
成長のボトルネックに
組織が成長するうえで、もう一つ大きな障害になるアンコンシャス・バイアスがあります。それは、「組織の問題は自分とは関係ない」という一人ひとりの思いこみです。
このようなアンコンシャス・バイアスの一例として、あるリーダーとメンバーの会話をご紹介します。
リーダー:「今年の新人は、みんな指示待ちのメンバーが多いらしいね。うちの会社の研修とか、人材育成プログラムとかって機能しているのかな」
メンバー:「そうですね。新人研修を担当している同期も『何とかしてほしい』って嘆いていますよ」
いかがでしょうか?
メンバーはもちろんですがリーダーも、組織の課題を他人事としてとらえていることがおわかりいただけると思います。今ある問題を「自分とは関係ない」と思っていては、組織は決して変わりません。
ここが、もし「自分ごと」としてとらえているチームなら、例えば次のようなやりとりが生まれるでしょう。
リーダー:「今年の新人は、指示待ちのメンバーが多いと聞いたけど、来月の会議で現場でできるアイデアを提案してみようと思っているんだよね」
メンバー:「そうですね。新人指導を担当している同期にヒアリングして、具体的な課題を聞いてみますね」
このように、一人ひとりが自分のできることを、できる範囲でやっていくことで、現状の課題に対する突破口が開けるのです。
周りへの影響力が強いリーダーだからこそ
積極的に変わることが大切
組織を成長させるためには、社員の希望や社会の要望に応え続けられるよう、まずは一人ひとりが意識と行動を変えていくしかありません。特に、メンバーに影響を与えやすい存在であるリーダーは、普段から自分や組織のアンコンシャス・バイアスに対して敏感になり、自ら変わっていくことが求められます。
そして、意識と行動を変えようとしているメンバーのあり方に気づいたら、前向きな変化を評価しましょう。メンバーが組織のアンコンシャス・バイアスを指摘して浮いてしまうことがあったら、そのメンバーを守る覚悟も大切です。まずはあなたのチームから、組織都合で行動しないカルチャーを発信していくことで、組織は少しずつでも着実に成長していけます。
守屋 智敬(Moriya Tomotaka)
株式会社モリヤコンサルティング代表取締役。一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所代表理事。都市計画事務所、人材系コンサルティング会社を経て、起業。経営層や管理職を中心としたリーダーシップ研修などを通じて、2万人以上のリーダー育成に携わる。著書には、アンコンシャスバイアスをテーマとした『あなたのチームがうまくいかないのは「無意識」の思いこみのせいです』(大和書房)や、『シンプルだけれど重要なリーダーの仕事』(かんき出版)などがある。