リサーチ

2019.09.09

フルタイムの時代は終わった? 変化する働き方

柔軟な働き方の導入は、就労者にも企業にもメリットがある

フルタイム以外の働き方に対する関心が高まっている。2019年4月に施行された働き方改革法案にも、「柔軟な働き方がしやすい環境整備」という項目が設けられた。
世界No.1求人検索エンジン*「Indeed(インディード)」の日本法人Indeed Japan株式会社が行った「“柔軟な働き方”に関する求職者の意識調査」をもとに、これからの就業の在り方について考える。

*comScore 2018年3月訪問数

世の中では、正社員として就業し、週5日・フルタイムの労働に従事することが“主流”だ。その中で、終身雇用にこだわらず転職しながらキャリアアップをめざす人や、起業を志す若者の増加といった変化は見られたが、給与面、福利厚生面等で有利な「正社員」であることの重要性は、いまだ多くの人が感じている。一方で、介護、妊娠・出産、育児等と仕事の両立に限界を感じ、正社員での就労を諦める層も少なくない。それは、「正社員=週5回・フルタイム」という概念が根強いからだ。
しかし、「仕事は続けたいが週5日・フルタイムは厳しい」層の増加に伴い、「柔軟な働き方」を求める風潮が高まった。企業側でもそのニーズに応えるように、フレックスタイム制や時短勤務の導入、在宅勤務、副業の許容等が進んできている。まだ広く浸透しているとは言い難いが、裾野は着実に広がっている。
Indeed Japan株式会社が行った「“柔軟な働き方”に関する求職者の意識調査」によると、Indeed上で検索された「柔軟な働き方」に関連する検索ワードは、2013年1月から2019年1月までの6年間で182.2%という数値上昇率を見せている。
 
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検索キーワードを詳しく紐解くと、「時短」が960.6%増加、「テレワーク」が727.2%増加という驚異的な数値を示している。件数でいえば、1位は「在宅」、2位は「副業」であるが、「時短」や「テレワーク」は、「柔軟な働き方」の新しい選択肢として急激に増えて印象だ。
2018年9月にIndeed Japan株式会社が行った「オウンドメディアリクルーティングに関する企業の取り組み調査」 では、働き方改革に取り組む企業の68.8%が「長時間労働の是正」、56.0%が「育児や介護と仕事を両立できる制度」に取り組んでいると回答している。「時短」は「残業削減」と併せて企業が具体的に取り組むことができる施策の一つであり、働き方改革の一環として導入している企業が多い。また、「時短」は積極的に育児に参加したい男性や、介護問題等に直面している男性にとっても有益な制度であることから、男性からの需要も高まっているという。求職者にとっても「就職する企業が時短制度を設けているかどうか」は、重要な条件の一つになった。
「テレワーク」の高まりには明確なきっかけがある。2020年東京オリンピック開会式が行われる7月24日が「テレワーク・デイズ」に設定され、2017年~2020年までの毎年、企業等による全国一斉のテレワークが政府主導で実施されている。2018年7月には、1,682団体、延べ30万人が参加したとされる。下表からは、テレワーク・デイズが実施された翌月に、検索数が急激にアップするという、わかりやすい動向が見て取れる。
 
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少子高齢化、核家族化等、昨今の情勢を考えると、「柔軟な働き方」へのニーズが高まるのは必然だ。それに応えて企業が各制度を充実させることは必要不可欠なことである。
しかし、企業側が一方的に対応を強いられているわけではない。働き方改革関連法案の施行により、時間外労働の上限規制や有給休暇の消化義務が始まったことによって、これまでと同様の業務を現状と同じマンパワーでこなす難しさが浮上。企業は今、人材不足に喘いでいる。
「柔軟な働き方」を導入することで、就労が可能になる人材が増え、離職者も減る。「週5回・フルタイム」の壁に阻まれて第一線を退いた優秀な人材を再発掘するチャンスも訪れ、業務の効率化が望める。わかりやすい例としては、有資格者でありながら就労時間に適応できず就労していない「潜在保育士」が挙げられる。潜在保育士を「柔軟な働き方」によって現場に引き出すことができれば、慢性的な保育士不足解消に向けての追い風となる。一般企業にもこれと同じことが言えるのではないだろうか。
「柔軟な働き方」の導入は、軌道に乗れば就労者にも企業にもメリットがある。双方がメリットを享受するために、就労者には柔軟な中でも仕事をきっちりこなす能力や責任感が求められるであろう。
 
 
作成/MANA-Biz編集部