リサーチ

2019.12.20

社会人のメンタル不調は「40代」が要注意⁉

メンタル不調の悩み相談、約4分の1は40代男性から

現代のビジネスパーソンはストレス過多で、メンタルに問題を抱える人が非常に多いといわれている。2018年4月1日~2019年3月31日までの1年間における、全国の日本産業カウンセラー協会・相談室への対面相談と、無料電話相談「働く人の悩みホットライン」の利用状況等について、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が統計結果をまとめている。

ビジネスパーソンのメンタル不調が深刻化しており、仕事上のストレスがきっかけで鬱などの精神疾患を患う人も増えている。一般社団法人日本産業カウンセラー協会がまとめた統計結果によると、2018年度の内訳は、対面による相談件数は5,313件(男性2,458件、女性2,855件)、無料電話相談「働く人の悩みホットライン」の相談件数は5,058件(男性2,241件、女性2,817件)だった。
相談内容の内訳を見ると、対面・電話相談ともに「職場の問題」と「自分自身のこと」に関する内容が目立っている。また、「自分自身のこと」、「メンタル不調・病気」、「家庭の問題」は、電話相談よりも対面による相談の件数が多い。相談内容に「職場の問題」の割合が多いことを考えると、職場の問題によるストレスが、自分自身のことやメンタル不調にも影響を及ぼしている可能性はあるが、仕事関係以外の分野では対面相談が選ばれやすい傾向にあるようだ。
 
 
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相談件数を世代別・男女別に比較すると、男女とも30代~50代が7割以上を占めており、ミドル世代の悩みが深刻であることがわかる。これは2018年度に限ったことではなく、例年見られる傾向であるようだ。30代~50代という年齢は、職場において昇進や転職といった環境の変化がおこりやすいうえ、結婚・出産を含めた人生の転換期を迎える人も多い。公私ともに増す「変化」に際して、悩みを抱えるケースが多いことが推察される。
 
 
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注目したいのは、「メンタル不調・病気」に関する相談についての、年代比・男女比である。男性からの相談件数は女性の2倍にもおよび、男性のなかの分布を見ると40代が最多となっている。男性にとって40代という年齢は、中間管理職となって仕事の悩みが増す、家庭のことや自身の体調の変化に対する悩みや戸惑いも多くなる、非常にハードな時期だ。女性の社会進出が進んだ昨今では、これは男女共通の条件であるが、女性からの相談は40代よりも20代~30代が多いのに対して、男性の相談は40代が突出して多い。女性は結婚や出産・育児に直面する時期、男性は職場や家庭において“責任”が増す時期に、メンタル不調に陥りやすいことが読み取れる。
 
 
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男性(特に40代男性)の「メンタル不調・病気」に関する相談が目立つ一方で、過去8年間の「対面による相談」の男女比率を分析すると、2015年までは男性からの相談が多く、2016年度以降は女性からの相談が多いという、逆転現象が見られた。女性の社会進出が進み、2016年4月には「女性活躍推進法」が完全施行されたことで、女性も男性と同じように重要な役割を担い、管理職に就く女性も増えたことによって、女性からの相談件数が増加したのではないだろうか。
 
 
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企業にとっても社会にとっても、一人ひとりのメンタルヘルスを維持することは必要不可欠である。ビジネスパーソンがメンタル不調を抱える要因としては、多数の企業において人材不足が深刻化するなかで、個人の負担が増加したことや、パワハラ・モラハラによるストレスなどが考えられる。いずれにしても、メンタル不調を訴えるビジネスパーソンが増えたことで、社会全体で問題意識が高まりつつある。2015年12月には、労働者が50人以上いる事業所に対して、労働者に対するストレスチェックを毎年1回実施することが義務づけられた。相談機関の充実や、産業医・産業カウンセラーによるサポートの強化を目指す動きも活発化している。
メンタル不調に陥らないための具体的な施策としては、まず産業医や産業カウンセラーを有効活用していくことが挙げられる。悩みの相談に応じてくれることはもちろん、必要があれば適切な医療機関とつなぐ役割も担ってくれる。また、日本産業カウンセラー協会が運営する「働く人の悩みホットライン」のように、無料で電話相談が受けられるところや、メールやチャットで相談を受け付けている機関も増えている。自分一人では抱えきれない悩みを、メンタル不調に発展させないためには、こういった機関を個人が上手に利用することと、企業が社員のメンタルケアをより重要視していく姿勢が求められるだろう。
 
 
 
作成/MANA-Biz編集部