リサーチ

2020.03.04

「社内業務の問い合わせ」が日々の仕事の重荷に?

風通しの良い環境づくりと共に、AI等の導入にも期待

転職が一般的となった近年では、職場における「困り感」が高まると、離職を決断するビジネスパーソンも少なくない。AI・RPAの開発や大規模Webサイト制作・システム構築を行う株式会社ティファナ・ドットコムが、2019年9月に行った『仕事での困りごとに関する意識調査(※)』では、多くのビジネスパーソンが「社内業務の問い合わせ」を負担に感じていることがわかった。

働き方改革において残業時間の削減や有給休暇取得の義務化が推進される中、企業にとっては変わらない業務量をいかに効率的に処理していくか(業務効率化)が重要課題となっている。そこで思わぬ落とし穴になるのが「社内業務」だ。本業を遂行するにあたって欠かすことのできない社内業務や、そのために必要な社内の問い合わせには、想像以上の時間と労力がかかる。 
 
株式会社ティファナ・ドットコムが実施した『仕事での困りごとに関する意識調査』では、離職を意識するきっかけとなる「仕事での困りごと」について、600人のビジネスパーソンから回答を集めている。困りごとの有無については、「とてもある」と「少しはある」が全体の85%以上を占めており、非常に多くの人何らかの困り感を抱えていることがわかった。
「具体的に何に困ったり戸惑ったりしますか」という質問に対する回答は、1位が「給与が安い」、次いで「社内業務の問い合わせが面倒」、「やりがいを感じられない」と続いている。「給与」や「やりがい」は、仕事への不満としてよく挙げられる内容であるが、2位の「社内業務」に関しては、意外なランクインでありながら、「言われてみれば納得」と感じるビジネスパーソンも少なくないのではないだろうか。
 
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会社という組織に属して仕事をすると、自身が担当する業務以外にも、さまざまなタスクが発生し、上司や他部署との関わりが生じる。たとえば、自身の勤怠管理や有休の申請では総務・人事といった管理部門と、売上や支払いの管理では経理部との連絡・連携が必要だ。業務日誌や報告書の作成、会議や社内プレゼン資料の作成なども、社内のルールに沿って行う必要がある。それらは、上司や他部署に確認しながら進めていかなければならない。ひと通り各種社内業務のフローを把握していても、イレギュラーが生じたときや新たなルールやシステムが導入されたときには、一から確認する必要がある。社内における問い合わせは、会社員にとって必要不可欠なのだ。
では、この「社内問い合わせ」のどこに負担を感じる人が多いのだろうか。具体的な悩みを質問したところ、最も多くの回答を集めたのは、「問い合わせがしづらい(聞きづらい)」で、6割に迫っていた。次に多かった「問い合わせ先が親切でない」も、1位とほぼ変わらないパーセンテージを示しており、社内の風通しがあまり良くないことが推察される。
 
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また、管理職を対象にした「仕事の困りごとは何ですか」という質問でも、「社内業務の問い合わせ」が過半数で1位となっている。一般の社員以上に社内業務に精通しているはずの管理職が、社内業務の問い合わせを最も負担に感じているという結果は、非常に興味深い。管理職は自身だけでなく部署全体の業務管理を行うこと、会議や打ち合わせに出席する機会も多いことから、社内業務の量自体が一般社員よりも多く、負担が大きいと考えられる。
 
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社内業務の負担が大きく、「職場の居心地が悪い」、「業務効率が悪く余計な仕事が増える」と感じると、一部のビジネスパーソンは離職を視野に入れ始める。転職のハードルが下がっているうえ、近年は積極的に働き方改革を進め、それらの問題解決に取り組んでいる企業もある。「もっと自分に合った会社があるのではないか」と考え始めるのは、無理もないことだ。
 
しかし、企業にとって人材流出は深刻な問題であるし、ビジネスパーソンにとっても理想どおりの転職を成し遂げるためのハードルは高いため、社内業務に関する問い合わせの負担を軽減するための方法を探ることが双方のためにもなる。
 
まず必要なのは、風通しの良い環境づくりだ。問い合わせを受ける側の意識改革や、問い合わせをする側にも気持ちの良い依頼の仕方が求められる。その必要性を会社全体で共有し、社内研修等に取り入れてみるのも良いだろう。問い合わせが必要になるシチュエーション自体を減らすという意味では、マニュアルの整備や、AIの導入等も一手となる。問い合わせを受ける側の負担も減って一石二鳥だ。
 
多くの人が負担に感じている社内業務の効率化は、職場におけるストレスを軽減し、まとまった時間ではないものの、業務量の削減にもつながる可能性がある。問い合わせのしやすい環境づくりや、マニュアル・システムの整備を行うことは、社内環境の向上にもつながる。見落とされがちな部分ではあるが、一人ひとりが意識することはもちろん、企業としても積極的に取り組む価値があるのではないだろうか。
 
 
【出典】株式会社ティファナ・ドットコム 『仕事での困りごとに関する意識調査
 
作成/MANA-Biz編集部