リサーチ

2020.03.23

進むグローバル化。外国人雇用の実態は?

日本人との賃金格差や離職率の問題にどう向き合うか?

社会のグローバル化が進み、企業の外国人雇用は年々増加している。しかしその一方で、外国人雇用に難しさがあることも事実である。株式会社パーソル総合研究所が2019年6月に実施した「外国人雇用に関する企業の意識・実態調査」の結果をもとに、外国人雇用の実態と未来像について考察する。

近年、右肩上がりに増えている外国人雇用。今後も社会のグローバル化がさらに進めば、日本での就労を希望する外国人は増加していくと予測される。国も外国人雇用を増やすことが人口減少による人手不足の対策として有効であるとし、2019年度から「特定技能(※)」を新たな在留資格として認めるなど、外国人雇用に積極的に取り組んでいる。
※特定技能/介護業、ビルクリーニング、外食業、建設業など、国内で十分な人材の確保ができない14業種を「特定産業分野」として、一定のルールのもとで外国人の新たな就労を認める在留資格のこと。
 
株式会社パーソル総合研究所が実施した『外国人雇用に関する企業の意識・実態調査』では、外国人雇用企業・非雇用企業合わせて1000社からの回答を分析している。
まず浮かび上がったのは、賃金格差の問題だ。正社員の場合、日本人と同じ職種であっても、外国人の平均月収は4.6万円安い。また、技能実習生の場合も、外国人従業員は日本人従業員よりも低水準の給与であると回答した雇用主は46.7%に上る。人件費の抑制のために外国人を雇用する企業の思惑が見え隠れしている。
 
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賃金と離職率の関係を見てみると、日本人より外国人の離職率の方が高い企業群では、外国人平均月収は日本人の平均月収よりも10.6万円安かった。一方、離職率の低い企業群では、その差は1.9万円にとどまっており、比較的賃金格差が小さいことがわかる。言い換えると、賃金格差の小さい企業では、外国人の離職率が低い。企業が外国人を貴重な人材として確保するためには、日本人との賃金格差を埋めていくことが重要である。
 
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調査では、「人材確保対策」として外国人雇用を含む18の選択肢を設定し、企業の優先度の割合が高かった順にランキング化している。すると、「すでに外国人を雇用している企業」では、41.2%もの企業が「外国人採用・活用強化」を高い優先度とし、ランキング1位となった。
この企業群では、「外国人材の強みを生かせる部署の配属」や、「コミュニケーション機会の創出」、「外国人用のマニュアル・業務資料の準備」などを実施している割合も高い。外国人雇用のメリットに加え、外国人雇用の難しさや、能力を発揮してもらうための環境整備の重要性を十分に理解しているからこそであろう。
一方、「現在は外国人を雇用しておらず、今後外国人雇用を検討している段階の企業」では、「外国人採用・活用強化」は9.2%にとどまった。この企業群で上位に入った選択肢から見ると、外国人よりも、シニア世代や女性の活躍推進、採用方法や働き方の多様化といった対策を重要視しているようだ。
 
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調査の結果からは、外国人雇用の優先度を高く考えている企業と、そうではない企業の二極化が進んでいる実態がみられる。後者は、外国人雇用を急がなければならない状況にはないのかもしれない。
しかし、人口減少と高齢化が進む日本社会において、労働力不足は今後ますます深刻化していく。また、これまで人材の送り出し国であったアジアの国でも高齢化が進んでおり、外国人雇用であっても人材確保は年々難しくなっている。グローバルな人材獲得競争が激化する中、将来的な人材確保のためにも、長期的な視点で外国人雇用のノウハウを蓄積するのが望ましい。
せっかく採用した外国人人材に企業で継続的に活躍してもらうためは、賃金格差を解消する必要があるし、外国人の働きやすさを創出することも重要だ。グローバル化に適応するためには、既存の職場環境に外国人をはめ込むことや、外国人雇用を単なる現場の人手補強として考えることから脱し、外国人と共に働く新しい時代の職場環境を、企業や社会ぐるみで構築していくことが求められている。
 
 
【出展】株式会社パーソル総合研究所 『外国人雇用に関する企業の意識・実態調査
 
作成/MANA-Biz編集部