リサーチ
2020.04.22
人生100年時代。ビジネスパーソンの定年退職は何歳が理想?
27.8%が65歳で定年退職しても「70歳まで働く」ことを想定
年金支給開始年齢の引き上げや、2013年の「高齢者雇用安定法」の改正を機に、定年退職の年齢を従来の60歳から65歳に延長する企業が増加している。株式会社ワークポートは2019年1月~2月、『定年退職についてのアンケート調査』を実施し、205人から有効回答を得ている。その結果をもとに、定年退職に対するビジネスパーソンたちの本音を紹介する。
近年、日本人の平均寿命は延び続けている。2019年7月の厚生労働省による発表では、2018年の平均寿命は女性が87.32歳、男性が81.25歳で、ともに過去最高を更新していた。平均寿命が延びて少子高齢化が進む中、平成25年度から令和7年にかけて、年金の支給開始年齢が現行の60歳から65歳へと段階的に引き上げられる。
これまで定年退職は60歳が一般的であったが、定年退職から年金支給までの5年間という空白期間に不安を抱く人が多かったこともあり、世の中は「65歳定年」へと移行し始めた。元気に長生きをする人が増えたことで、「60歳を過ぎても仕事を続けたい」というニーズの高まりもあった。また、労働力不足が深刻になる中、経験豊富な60歳以上は貴重な人材でもあるため、2013年には「高齢者雇用安定法」が改正された。その内容は、定年退職年齢を65歳に引き上げることを義務づけるものではないが、少なくとも年金開始年齢までは、意欲と能力に応じて働き続けられる環境の整備を目的としたものである。
株式会社ワークポートが行った『定年退職についてのアンケート調査』では、定年退職の適性年齢を「65歳」と回答した人が最も多かった。前述のような世の中の流れ、特に年金支給開始年齢が65歳であることを理由に挙げる人が目立った。
「自分は何歳まで働くと思うか」という質問に対して、最も多かったのは「70歳」という回答だった。定年退職の適性年齢を65歳と考える人が半数近くにのぼる中で、27.8%の人が「70歳まで働く」と答えており、定年退職の理想と、実際に働き続けると想定する年齢にギャップが生じている。定年後も何らかの仕事をしたい、あるいは仕事をする必要があると考えていることがわかる。70歳と答えた理由には、「働かないと生活できなさそうだから(20歳男性)」、「年金も貯金も十分ではないだろうから働くしかない(40歳女性)」など、経済状況の不安が目立った。
また、「自分の老後(65歳以上の生活)に不安を感じるかという質問では、8割以上の人が「はい」と回答している。不安の具体的な内容については、「自由な時間ができてもお金に余裕がなさそう(20代女性)」や、「本当に年金がもらえるのかどうかもわからない(30代男性)」といった、生活費の確保や年金の受給を心配する声が多かった。調査では「定年の適性年齢は65歳」、「定年後も70歳までは働く」と答える人が多かったが、経済的な不安さえなければ、「60歳で定年退職をして、何らかの仕事はするとしても、のんびり第二の人生を楽しみたい」と考える人が、一定数いるのかもしれない。
2019年5月に首相官邸で開かれた「未来投資会議」では、希望する人が70歳まで働ける機会を確保することを企業の努力義務とする方針が示された。しかし、定年退職を70歳まで引き上げることには不安も大きいのではないだろうか。調査では実際に、定年退職の適性年齢を「70歳」と答えた人は17.6%に留まっており、「今の職場で70歳まで働きたい」と考える人は少数派であるようだ。体力面の不安、パフォーマンスや働く意欲の低下等が懸念材料になっていることが推察される。
一方で、現代の日本は少子高齢化による労働力不足や、社会保障の引き上げなどの課題があり、65歳以上の人に働き続けてもらえると企業は助かるし、「65歳を過ぎても働きたい(働かなければならない)」という個人のニーズも確実にある。長年勤めていた会社で70歳まで無理なく働くことができれば、双方にとってメリットが大きいのではないだろうか。企業や社会が目指すべき方向性は、65歳定年後も70歳まで体力や能力に応じて、自分に合ったペースで働き続けられる体制の構築であろう。これは働き方改革で推進されている「柔軟な働き方」にも通じるため、今後の展開に期待したい。
【出典】株式会社ワークポート 『定年退職についてのアンケート調査』