リサーチ

2020.05.29

7割以上のPM経験者が自身の「スキル不足」を実感

PMの教育や会社・上司のサポートを求める声も

株式会社ネオマーケティングは2020年1月、アンケートサイト「i Research」において、全国の25~59歳のビジネスパーソン1200名(プロジェクトメンバー経験者:700名、プロジェクトマネジャー経験者:300名、会社役員:200名)を対象に、『プロジェクト推進に関する意識調査』を実施した。その結果から、プロジェクトマネジャーに求められるスキルや育成方法を考察する。

企業には、新サービスの開発や、商品のプロモーション、社員の新規採用など、さまざまなプロジェクトが存在する。そのプロジェクトの意思決定をし、品質やコスト、納期などすべてに責任を持ちながら、プロジェクト全体の進行を管理するのが、プロジェクトマネジャー(PM)だ。複数人のチームでプロジェクトを進める場合は、PMがリーダーシップを発揮して、チームメンバーを統括する役割も担う。PMは多くの場合、社内で「有能である」と判断された人が抜擢される重要なポジションであり、なかには優秀なPMを外から新規採用する企業もある。
しかし、『プロジェクト推進に関する意識調査』では、3人に1人以上のビジネスパーソンが、「PMが原因でプロジェクトが迷走したり炎上したりした経験がある」と回答している。その理由は、「プロジェクトに関わる人たちの合意形成ができていなかったから」が半数近くにのぼり1位。「はっきりとした指示をしなかったから」、「コミュニケーション力が足りなかったから」など、コミュニケーションに関わる回答や、「プロジェクトの進捗の見える化をしなかったから」、「プロジェクトの計画・目標設定能力が足りなかったから」など、マネジメントスキルが不足していたことを指摘する回答も目立った。
 
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プロジェクトメンバーが不満を抱える一方で、PM自身の悩みも深い。PM経験者で「うまくいかなかった経験がある」と回答した人は70.3%にのぼっている。うまく進行できなかったことを多くのPM経験者が自覚しており、その理由は「PMとしてスキル不足だったから」が最多だった。
その一方で、3位「上司に相談したが具体的なアクションまでサポートしてくれなかったから」、5位「PMにすべてを任せすぎているから」は、プロジェクトに対する会社側のサポート不足を示唆している。4位「通常の業務が忙しくプロジェクトにかかわる時間を作れなかったから」は、PMのキャパオーバーにも、会社側の配慮が必要だ。
会社に対してPMの教育や育成に力を入れてほしいと望むPM経験者も多かった。上司や会社はプロジェクト進行中もPMをサポートする必要があるし、自力で判断・遂行できるPMを望むのであれば、教育・育成に注力する必要がある。
 
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PMの教育についての認識は、役員クラスとその他で乖離があることがわかった。役員クラスで半数の57.0%以上が、PMの教育の重要性を「認識していて、教育している」と答えているが、PMでは32.7%、プロジェクトメンバーでは21.3%に留まっている。教育しているところはまだ限られているし、会社は教育しているつもりでも肝心の社員に実感がないケースもありそうだ。
 
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プロジェクト全体を統括し、プロジェクト成功の鍵を握るPMには、判断力や実行力、コミュニケーション能力、リーダーシップなど、多岐にわたるスキルが求められる。プロジェクト管理ツールや社内コミュニケーションツールも進化しているが、部署を横断する大規模なプロジェクトでは、ツールを駆使しても解決しない問題も多く、PMのスキルアップは必須課題だ。そして、有能なPMを育てるためには、経験の少ないPMにはサポートを手厚くする、社内にPM教育ノウハウを定着させるなど、会社側の取り組みが重要なのである。
 
日本企業では、ジョブローテーションの結果としてPMに着任するケースも多いが、学びと経験によって成長していくのは、PMになった後も同じだ。欧米ではPMP(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル)という資格が重要視されており、MBAや弁護士、会計士と同等の価値を有する。
また、大きなプロジェクトではPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)がPMを支援する体制も浸透してきている。優秀なPMOの采配を見て、PM自身が学ぶことも多いだろう。最初から個人の力量任せにするのではなく、PMを「育てる」という意識が大事であるということだ。
 
 
【出典】株式会社ネオマーケティング『プロジェクト推進に関する意識調査
 
作成/MANA-Biz編集部