リサーチ

2020.06.17

イマドキ若手社員の特徴からみる育成のヒント

「失敗から学べ」はタブー?若者の意欲を削がない育成を

近年の若者は、バブル世代や氷河期世代とは異なる労働価値観を持つといわれる。株式会社日本能率協会マネジメントセンターが2019年6月に実施した『イマドキ若手社員の仕事に対する意識調査2019』の結果から、新入社員や若手社員をどのように育成・サポートすべきかを考える。

若手社員に対して、中堅・ベテランが「物足りない」、「感覚が合わない」と感じるのは世の常で、“若手社員の育成に苦心する上司”と“上司・会社に不満を抱く部下”という構図は、いつの時代も存在した。転職が一般的になり、社会全体で労働力不足が深刻化している近年、企業にとって“若手社員の育成”がますます重要になっているが、若手との価値観の違いに困惑し、うまくコミュニケーションを取れないケースも少なくない。
 
『イマドキ若手社員の仕事に対する意識調査2019』では、「新入社員」と「上司・先輩」の両者に、「仕事に求めている条件」を聞いている。価値観の差が目立ったのは、「仕事環境の心地よさ」と、「自分の能力が発揮できる」の2項目だ。新入社員は環境重視で、能力の発揮にはあまり興味がない。それに対して、先輩・上司は真逆の結果になっている。これを見て、「今の若手は仕事に対する意欲が足りない」という感想を抱く人も多いだろう。
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業務外コミュニケーションに対する価値観も変化しているようだ。調査では新入社員の70%以上が「プライベートな時間は会社からあまり関与されたくない」と回答し、公私の区別を重視する様子がうかがえる。飲み会や食事、ゴルフなど、業務外の交流で親睦を深めたい世代にとっては寂しい結果だ。
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「一人前の社会人として活躍していくために、今の自分に対して、どのような認識を持っていますか」という質問に対して、新入社員の81.9%が「まだまだ課題が多く努力が必要」と回答した。「能力を発揮したい」という意識が低いことなど、プライベート重視などの傾向から、「仕事に対する意欲が低い」と思われがちな若者だが、自分に対する課題意識は決して低くない。
 
しかし、新入社員の82.7%が「(仕事で)失敗したくない」と回答し、上司・先輩の65.7%を大きく上回った。新入社員は、社会人として活躍するために努力を重ねていく意欲はありつつも、「失敗は避けたい」と思う傾向が他の世代より強い。現代では「失敗から学ぶ」、「失敗しながら成長していく」という価値観を乱暴に押し付けるのは、新入社員を育成するときにタブーとなる可能性がある。
4_res_132_03.jpgイマドキの新人は、失敗や叱責に対する恐怖心が強く、「ほめられる、期待されるとがんばれる」という気質を持っている。この特徴は、以前ご紹介した『若手社員のやる気を引き出す言葉とは』記事で、「やる気に火がつくセリフ」と「やる気が奪われてしまうセリフ」の対比にも、如実にあらわれている。
 
これはおそらく、昨今の教育がそのようにシフトしてきたことにも起因する。1990年代の教育改革では、「ゆとり教育」がクローズアップされがちだが、その背景には「叱らず育てる」価値観の推奨があった。「失敗すること」や「叱責されること」への免疫が低いのは、彼らが受けてきた教育や時代背景も関係している。それは彼ら自身が望んで選んだことではないので、「今の若手はダメだ」と一蹴するのは得策ではない。
 
調査では、新しい価値観のなかで育った若者たちも、成長意欲が低いわけではないことがわかった。その意欲を結実させるためには、うまく激励しながら育成することがポイントになる。
従来のような一律の社員教育は、成長意欲や能力向上にバラつきが生じる。若手の自主的な努力に期待するだけではなく、これまでの失敗事例を話して事前に防げるようにする、ゴールまでの道筋を一緒に考えるといったサポートをすることで、心が折れることなく、ひたむきに努力して進むことができる若者は多いはずだ。
また、若手に「失敗を恐れることはない」と伝えることや、失敗が許される文化を作っていくことも重要である。人は失敗から学んで成長するし、初めから完璧なビジネスパーソンはいない。叱責ではなく、問題点を一緒に考えてサポートしたり、スモールステップでも成果を認め、ポジティブな言葉で激励したりすることが、若手の意欲を削がないための秘訣となるのではないだろうか。
 
 
【出典】株式会社日本能率協会マネジメントセンター『イマドキ若手社員の仕事に対する意識調査2019
 
作成/MANA-Biz編集部